デビルマンのあの人が
さっき目が醒めて、TVニュースで知りましたが、『デビルマン』の那須監督がお亡くなりになったそうで。なにしろ遺作があれなもんですから、こんな複雑な死もありません。いや死そのものは万人に平等なのですけども。でもある意味、最後の最後で「その年一番の話題作」を発表して亡くなったわけですからね。『ピンチランナー』が最後にならなくてよかったのかもしれないです。
●那須博之・フィルモグラフィ(2ちゃんにアップされてたものより引用)
1985.12.14 ビーパップ・ハイスクール セントラルアーツ
1986.08.09 ビーパップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌 東映東京
1986.12.13 紳士同盟 東映=サンダンスー・カンパニー
1987.03.21 ビーパップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲 東映東京
1987.07.04 新宿純愛物語 東映=セントラル・アーツ=東映クラッシク...
1987.12.12 ビーパップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲 東映東京
1988.08.06 ビーパップ・ハイスクール 高校与太郎音頭 東映=セントラル・アーツ
1988.12.17 ビーパップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇 東映=セントラル・アーツ
1989.08.12 右曲りのダンディー 東映=セントラル・アーツ
1991.08.31 代打教師 秋葉、真剣です! 東映=日本テレビ=セントラルアーツ
1996.02.24 ろくでなしBLUES ポニーキャニオン=テレビ東京=パル企画
1996.03.01 リップステック 堕ちていく女 (V) ビデオチャンプ
1996.04.13 地獄堂霊界通信 東映=東映ビデオ
1998.08.28 あばれブン屋 (V) 日活
1999.01.08 新・湘南爆走族 荒くれKNIGHT3 (V) 東映ビデオ
1999.02.12 新・湘南爆走族 荒くれKNIGHT4 (V) 東映ビデオ
1999.09.10 実録外伝 武闘派黒社会 GOKUTO STREET 大映
2000.05.20 ピンチランナー アップフロントエージェンジー=東映=テレ...
2004.10.09 デビルマン 「デビルマン」製作委員会
俺この人の映画、最後のやつを除けば映画館で見たのは『新宿純愛物語』しかないです。ストーリーもよく覚えてないんですが、仲村トオルが新宿の町をヤクザやら警察から逃げて逃げて逃げ回る話だったような。なんで逃げてたのかがどうしても思い出せない。
で、この作品も確か記録的な不入りで、一週間くらいで上映打ち切りだったはず。これの穴埋めに『ハチ公物語』が繰り上げ公開となり、夏休みのいい時期に公開できて大ヒットしたはずです。ハチ公のプロデューサーだった奥山和由氏に俺、インタビューしたことがあるんですが「あのときは助かった」と言って那須監督に間接的に感謝していましたよ。変な感謝のされかたもあったものです。
そうすると、那須監督の代表作はやはり『ビーバップ・ハイスクール』になるんでしょうか。あれはヒットしたはずだけど、映画的に評価されたなんて話は聞いたことがないですね。してみると、那須監督というのは典型的なサラリーマン型監督で、会社の言うことをキッチリ聞いて生き残って来た方なのかとお見受けします。『デビルマン』などは、たぶん上の方のエライ人(しかも複数)の意見に対して全部律儀に耳を傾けた結果、ああなったのかなと思わないでもない。
マンガとか文章の世界でも、いるんですよ。「編集の言うことをきく」あるいは「締め切りを守る」というただ一点で生き残る人というのが。でも、こういう人は業界的には絶対必要なんです。みんながみんな「芸術家」になってしまったら雑誌とか出ませんからね。本人も周囲もやってて面白いかは別にして、注文仕事を律儀にこなす人は会社的には一番求められるわけです。その意味では那須監督は「プロ中のプロ」と言えるのではないでしょうか。
どうも故人に対して書く文章ではありませんね。バカにしたように読めたなら申し訳ないです。いやでも『デビルマン』の直後の死ですからね。いろんな意味で思うところがあるのは俺だけではないはず。こんな複雑な感情が巻き起こる他人の死も久々です。とにかく、その、ご冥福をお祈りします。
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コメント
自分も同感です映画会社の監督。結構少ないですよね、最近…
85年(84年かな?)のゴジラの監督も1月にお亡くなりになりましたし…プログラムピクチャーと言う言葉も最近聞きませんしね。
ご冥福をお祈りしたいと思います。
投稿: hoop | 2005/02/28 07:28
たけくまさま、はじめまして。那須監督、デビルマンは、ま、アレですが……、「セーラー服 百合族」と「美少女プロレス 失神10秒前」は、ほんっとーに最高だったんです! なので悲しいです。
http://nikatu.site.ne.jp/HTML/newpage102.htm
投稿: ぴっころ | 2005/02/28 08:05
コメント欄お邪魔します。はじめまして。
上でピッコロさんも書かれてますが、私にとっての那須監督は『デビルマン』ではなく『セーラー服百合族』の監督なんです。センチメンタルな佳作で好きな部類だったんですけどね…。
そういう意味では、恐らく改変前から存在しただろうと見受けられる、あの映画『DEVILMAN』のバイク疾走シーンとか学校シーンとかはそっち方面で撮ろうとした結果なのではないかと思う次第です。
そっちへ行ききれず、たけくまさんが書かれたように八方たてまくった結果に唖然、だったワケですけども。
投稿: ふりーく北波 | 2005/02/28 08:23
死去する直前は、タイガーマスクの実写版を監督していたのですね。
http://www.madness.jp/message-i/2004-08-12/2004-08-12.htm
あのデビルマンの直後に、漫画原作の映画に、再び那須さんを監督に命じてしまうというのは、
投稿: 針目 | 2005/02/28 16:10
はじめまして。
『ビーバップハイスクール』について小林信彦氏が
「コラムは笑う」(ちくま文庫)にて少し書いておられました。
日活硬派喜劇に「仁義なき戦い」をふりかけたもの・・・
(ラストでは)とつぜん、「七人の侍」のラストのごときどしゃぶりにになり、
監督の才気をうかがわせた。
全体として感じのいい佳作・・・
とあります。私も小学生のとき観てましたが面白かったな~あれは。
他の作品は観たことないですけど。
投稿: たっぺ | 2005/02/28 18:12
ビーバップハイスクールの作者のきうちかずひろが映画の撮影に特殊警棒を貸したところ、壊して返されて無礼な扱いを受けた、二度とあんなのに関わらない、って怒ってたことを思い出しました。
投稿: nomad | 2005/02/28 22:34
はじめまして。
自分の考える最強のオタクのひとりの森博嗣せんせいは、
いつでも〆切等はきっちりしておられるようです。
それであのクオリティ。人間とは思えません。
それで森先生が、〆切を「守らせない」という出版界のシステムは甘いという話をしていたのを思い出しました。
つまり、締切を守った仕事については、被害分を見越して用意していた分を報償金として支払う、というような仕組みにすればいいのではないか。というような事だった気がしますが、竹熊先生はどう思われますか?
投稿: xtc | 2005/03/01 02:20
↑xtcさんへのコメントは、独立したエントリにすることにしました。以下を参照してください。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_1.html
投稿: たけくま | 2005/03/02 02:24
自分は制作会社勤務なのですが、うちは外注に出す前に上に何度訪ねてもいくらで頼むのか担当の自分にも教えてくれないんですね。そんな状態で発注するとこっちもどれくらい拘束していいのか不安なのに、なーんでちゃんとしないんだろと思うんですが、別の気持ちとしては、値段をばらすとやすい仕事をされると思っちゃうんですね…。印象として提案した値段の3分の1くらいかと…。
投稿: えび | 2005/03/02 02:33
うわ、コメントを送信したら別のエントリになってる!
ですがバラけるのもなんなので自分のコメントの続きに書かせていただきます。
やはり使う側としても値段以上のものが欲しいので、不足を感じたらハイ次、という感覚になってしまって、双方で何かを育てようという関係は築きづらいですね。人の関係の前にお金の勘定があると。
投稿: えび | 2005/03/02 02:48