コミックマヴォVol.5

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2005/03/18

本田透君が心配だ(1)

Amazon.co.jp: 本: 電波男電波男

本田透君が心配だ。

いや本来なら、他人を心配している場合ではないのである。なぜなら、俺の本もぼちぼち書店に並ぶからで、遅くとも週明けには店頭に並んでいるだろう。部数が少ないので並ばない本屋もあるかも知れないが、アマゾンではそこそこ仕入れていただいたので売れてもらわないと困る。

しかるに本田透君の『電車男』、じゃなかった『電波男』、これが売れているようだ。これを書いている現在、アマゾンで18位。ご同慶の至りであるが、反面、気が気ではない。それというのも俺の本は予約がいまひとつ伸びず、これを書いている現在、まだ8700番台にすぎないからだ(一瞬、570番に行ったのが最高で、昨日は2800番くらいだった)。

まあ予約なのでこんなものかもしれないが、『ファイナルファンタジーXI・ジラートの幻影・プロマテアの呪縛』みたいな訳の分からない本が、こないだからずーーーーっと上位3位以内をウロウロしておるのを見ると腹立たしい。こんなことなら、俺の本もゴルゴ13がどうしたこうしたではなく、『雷車男』とかにすればよかったと激しく後悔している。

まあそれはともかく、本田透君の『電波男』だが、さきほど読了した。一見してふざけたタイトルで、内容も「萌え~」みたいな感じで軟派な冗談本と思われかねないのだが、なかなかどうして、近来希に見る硬派な本であることを、まずは強調しておきたい。読んだ以上、誰かに何かを言わねばならない。これは、そういう力のある本だと思う。

一言で言うならば、これは本田透君の半生における「愛と実存」を賭けた魂の叫びだ。若くして両親から与えられたトラウマ体験、そして死別、阪神大震災で全財産を失って路頭に迷いヒキコモリという名の緩慢なる自殺……の寸前にまで追い込まれた本田透君が、いかにして犯罪者にならずして立派なオタクとなったのか? そして現在もなお、彼の、いや現代人にとっての最大の敵である「恋愛資本主義」に対し、本田君はいかに戦い、「脳内ツンデレ系ツインテール妹萌え」のパワーで勝利したかの、これは赤裸々な記録である。

オタクのオタクによる史上初のロックンロール文学が、ここに誕生したことを、まずは素直に慶びたい。内容は、とてつもなくヘヴィであるにもかかわらず、本田君特有の「照れ隠し自爆文体」が全ページに炸裂することで、読者は笑いながら読み進めることができる。大変に思いやりのある親切な文章であり、作家としての彼が、並々ならぬ力量の持ち主であることを証明している。

だが同時に、本田透君の有り余るオタクマグマは、そのエネルギーの強さゆえに、ある危うさも秘めているように思う。

俺の理解が間違ってなければ、同書の主張はこうだ。現代社会は「恋愛資本主義」という名の幻想=マトリックス世界に捕らわれている。そこではイケメンのDQNばかりが女にモテ、キモメンのオタクはヒエラルキーの最下層に置かれて、負け犬女から搾取されている。しかして負け犬女はイケメンのホスト等に貢ぐことで、不毛な恋愛資本主義のサークルが完成しているのだと。この世界にあっては、キモメンのオタクは永遠にモテない。

この永劫回帰的呪縛を断ち切るには、誰もが「二次元萌えパワー」を増幅させて「三次元=リアル異性」を脳内から駆逐し、「脳内妹」に真のリアルを感じるようになれば、世界は救われるというのが本田君の主張である。

また現実世界でモテないオタクの一部が、そのルサンチマンの持って行き場を誤ると、『八つ墓村』のモデルになった「津山三十人殺し」の犯人・都井睦雄のような大量殺人鬼にもなりうる。しかし、脳内妹に萌えて創作世界に埋没した宮沢賢治は、生涯童貞だったかもしれないが、他人に迷惑をかけることはなかった。そればかりか、不朽の名作童話を後世に残す偉業まで成し遂げたのだ。

よく似た資質(オタク)があっても、そのエネルギーの方向さえ正しければ、ルサンチマンによる犯罪はなくなり、世界は平和になるのだという。

この理論は、同じくモテないオタクの先達として、大いに首肯しうるものである。俺自身もその青春を振り返ってみれば、本田君と似たような軌跡をたどっている。家族の問題にしても、本田君ほどトラウマ度は高くはないが、やはり少年期から母親との確執があり、このまま行くと金属バットで母親を殴り殺すことが確実な気分になってきたので、いわば緊急避難的に、俺は家出を敢行したのだった。

そして二十代をほぼプータローとして過ごし、ド貧乏生活の中で、漫画・アニメ・映画のようなヴァーチャル世界に安寧を求めたことは本田君とほぼ同じである。もっとも同じプータロー仲間でも、女に食わせてもらうようなDQNもいたわけだが、俺の場合は母親へのトラウマからか一種の女性恐怖症に陥っていたので、ほぼ彼女イナイ歴=年齢のまま、青春を過ごしてしまったといえる。

※(2)につづく→

◎このエントリへのコメント→★

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コメント

>『ゴルゴ13はいつ終わるのか?』

書店で買わせて貰う予定ですが
うーん題名が少し弱いんですかね
今だと「マンガ原稿料はなぜ安いのか?」の様に
お金(経済)に絡む題名をつけた方が良かったのではないでしょうか
「敵対的買収を防ぐのにゴルゴ13を雇うには」とか
いや、まあ後の祭りですが。

投稿: 忍天堂 | 2005/03/18 01:42

『ゴルゴ13はいつ終わるのか?』はアマゾンで買うと送料がかかるので発売後他の本とあわせて買う予定です。
こんな人はほかにも多いはず。

投稿: | 2005/03/18 01:57

まぁ、「もてないオタク」という奴自体が幻想なので(でなきゃ、オタクでデブの私が結婚している理由が説明できんので)、電波男を読んでも何も感じないし、むしろ迷惑。

ただでさえ、オタクが多いと思われてるプログラマなんかやってるんで、同類と思われたくないというのが本音ですが。真面目に仕事に影響するんで。

もてないのなら、それでも構わないと思うし、そこにこだわってるのも、恋愛にこだわるのと大差ないように見えます。興味ないのなら無関心でいいんじゃないか?と本気で思いますなぁ。

#恋愛至上主義というのも、初めて言いだしたのって、オタクだったと記憶にあるんですよネ。たしか、あだち充とか、80年代に流行った恋愛モノの作品に関する批判だったような?

投稿: NAT33 | 2005/03/18 07:25

↑あなたね、立派に自立した一個の社会人なら(<既婚のプログラマー>ってのはそういう意味でしょう)、本田さんの著作についてのこんな嫌味を2chならまだしも人様のブログに書き込んでないでそれこそ無視すりゃいいでしょ。

それにあなた読んでないでしょ?>電波男
‘読まずに悪口’ってのはこりゃもうまーったく考えられない最低最悪の行為なんだけどねごくごくフツーの感覚として。

あとね、<こんな本が出るとオレまでおたく扱いされて仕事にまで差し障る。実際迷惑だ!>って情けない泣き言を言っておられますが‘自己責任・自己努力’でまず痩せてみたらいかがなんでしょうかね? 他人の自分への扱いってのはそのくらいのことでけっこう変わりますから。

投稿: 上北沢 | 2005/03/18 11:39

「自分がこうだから世の中はすべてこう」などと平気で言えるのは世界が狭い証拠。
見識の狭さを晒して恥をかくだけだから放置推奨。

投稿: 通りすがり | 2005/03/18 12:38

あ、これはどうも。

貴重な助言に感謝。
読んだとたんに頭に血が上って拙速に書き込みしてしまったことには多謝。

投稿: 上北沢 | 2005/03/18 13:52

「恋愛至上主義」←読んでない証拠。

投稿: | 2005/03/18 21:55

たけくま先生!肯首→首肯(しゅこう)です。

投稿: R30 | 2005/03/19 00:32

↑うわーーー。直しました。

投稿: たけくま | 2005/03/19 00:41

無粋な突っ込み失礼します。
プロマ「テ」アの呪縛>>プロマ「シ」アの呪縛、です。

投稿: Sing | 2005/03/21 02:53

もう呉智英と一緒に電波男を紹介するしかないね!

投稿: 今出ているサンデー毎日で、中野翠が | 2005/04/16 02:13

米原万里の小咄(カロちゃんはアグネスのパンツを)は2chに匿名で載っていたら3倍面白かったと思う

投稿: 周知ですが呉智英がダヴィンチで | 2005/04/16 09:24

t/o

投稿: 中野翠が、今出てるサンデー毎日で秋葉原で乗って来たオタク男とオタク女の事を書いています | 2005/04/17 21:14

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