コミックマヴォVol.5

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2005/07/22

俺の愛する平田劇画(1)

hangyaku-1叛逆の家紋―平田弘史傑作選(←クリック)

いよいよ『叛逆の家紋』発売であります。早ければ本日中にアマゾンで買えるかもしれませんので、チェックよろしく。俺の平田先生インタビューもバッチリ載っております。内容は「たけくまメモ」のルポとは重なってませんので、よろしくお願いします。

で、『叛逆の家紋』刊行記念としまして、以前予告だけしていた「俺の愛する平田劇画」をいくつか書いてみたいと思うしだいであります。もちろん平田劇画は全作品がベストなのでありますが、個人的に愛着のある作品ということで、ひとつ。

hirata-uso-01 ●その1『嘘』(原作・古屋重生)

今回『叛逆の家紋』に目出度く収録された、俺の平田フェイバリット作品の一本。原作つきではありますが、このような超悶絶ストーリーを、平田先生以外の誰が描けるというのでしょうか。つーか、原作も原作です。今回特別に、そのサワリだけでもご紹介いたしましょう。

若く純情で童貞の少年侍・高崎信次郎が主人公であります。ところがある日、悪友でやはり童貞の猛之進と口論になる。その言い争いと言うのがですね、


hirata-uso-02-1 ←という、まあ思春期の少年にはよくある、アレへの疑問なんですけど。



hirata-uso-02-2純情な信次郎は「赤ん坊は女の腹が割れて生まれる」という父親の言葉を真に受けてまして、「赤ん坊は女のアソコから産まれるんだ」と主張する猛之進を信じようとはしない。なにしろ武士の中の武士たる自分の父親の言うことですから、嘘なんかつくはずがないわけですよ。

hirata-uso-03まあしかし、しょせんは童貞同士の会話、埒があくはずもありません。そこで信次郎、思いあまって父親に再度問いだたします。

「やはり腹が割れて産まれてくることに間違いありませんか、父上!」なんて正座されて言われましても、父上としては、

hirata-uso-04-1 ←と答えるしかないわけです。信次郎、「やはり!」なんて晴れがましい顔をしている場合ではありませんよ!


hirata-uso-05 ←ちょうどその頃、ライバルの猛之進は、義理のお姉さんとすでにこんなことをしているのですから!


hirata-uso-06その翌日、すでに童貞卒業した猛之進は、以前にも増して偉そうな態度「赤ん坊はどうやってできると思う?」と憎々しげに信次郎を問いつめる。

hirata-uso-07←ああ、テメエは女とやったからといってこの態度! これはただごとでは済まされない展開だ! 猛之進、さんざ信次郎をバカにしくさったあげく、赤ん坊は男のアレを女のアソコにああやってこうやるとできるのだ!と熱く説きふせるのでしたが、まだ女のアソコも見たことがない信次郎には、もう天地がひっくり返るくらいの大ショック!

hirata-uso-09 ←しかし、そこまで驚かなくても…。



hirata-uso-10hirata-uso-11 そして事態はいよいよ抜き差しならぬ展開になるのであった……。 みなさん、後に引けなくなった信次郎はこれからどうなるでしょう? 父親に切腹を強要? それよりもなによりも、信次郎は女と一発ヤルことができるのでしょうか?? うーん……もちろんそこは平田劇画ですから、物凄い展開になることは言うまでもありませんが。どこがどう物凄いかは、ぜひとも『叛逆の家紋』(青林工藝舎)をご購入のうえ、その目でお確かめになってください。

この作品、ストイックな平田劇画としては珍しく、童貞と性の問題をストレートに描いた傑作であります。特に喪男のみなさんは必読ですよ! 巻末の竹熊による平田インタビューによりますと、天理教に「色情に惑わされるな」という教えがあるとのことで、色恋沙汰は極力描かないようにしていたそうです。しかし現実には平田先生、若い頃はそれはもう大変だったみたいで、

「八十、九十の婆さん見たってハメたいと思ったし、天井の節穴、木の股の割れ目、地面の穴、とにかく穴があったらハメたいという感じだった」

と漢らしい告白をされております。その悶絶パワーがあったればこそ、何十年にもわたって超傑作の数々を描き続けることができたのだと申せましょう。

ちなみに『叛逆の家紋』、他にも『吉田松陰』『介錯』『豪傑』『叛逆の家紋』など、まるで時候の挨拶のように腹を切らずにはいられないもののふ共の漢らしすぎるエピソードが爆発しておりますのでよろしく!

※その2につづく

このエントリへのコメント→★

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コメント

なんか朝からアマゾンで「在庫切れ」状態になってますね>「叛逆の家紋」。

いくらなんでも発売と同時に売り切れというのは考えにくいので、しばらくすれば正常に戻ると思いますが。本じたいは取次に搬入されているはずです。

投稿: たけくま | 2005/07/22 13:27

>たけくまさん
たけくまさんの文章を見て、今すぐにでも欲しくなったのですが、もう書店では発売されているのでしょうか?それとも来週?
大阪梅田のジュンク堂あたりを攻めようかと…
僕も愛する平田劇画 最高。

投稿: コイチの卍寺 | 2005/07/22 16:28

アマゾン、注文はできる状態になったみたいですね。しかしもう売り切れか?

投稿: たけくま | 2005/07/22 22:41

本日、「嘘」の原作者・古屋重生さんに電話して少しお話を伺ったところ、「嘘」と同時期に池田弘先生や小島剛夕先生の原作もやったことがあるとのことでした。「嘘」は平田流アレンジが冴えまくっていますが、やはり原作の突拍子もなさに平田先生がノリノリになったということも、この作品特有のマジカルパワーの鍵かもしれませんね。

投稿: 浅川 | 2005/07/22 23:49

 つまり、『嘘』は『巨人の星』を照らす明けの明星であった、と?
 で、暁に逝ってよし、と?
 歴史とは残酷なもんですなぁ

投稿: あおきひとし | 2005/07/23 07:34

確か20年以上前に平田劇画大全集という大判ハードカバー5~10冊?組がでていて、好事家の間で大評判(バイトの上司が買っていた!)でした、私はお金が無く買えず、今でも後悔してますが、、、あれは絶版になったんでしょうね、、今買うといくらぐらいでしょうか?

投稿: じじい | 2005/07/23 10:10

ちょっと話題がずれてごめんなさい。

>たけくまさん。
今朝、夏目さんのブログに、伊藤剛さんが
「アニメ絵」というコトバは竹熊さんが初めて
言い出したということをコメントされていました。これは何年ころでしょうか?

昔むかし、東映動画が、連載マンガの
キャラを<東映絵>に書き換えてしまう
のがイヤだった。
「これでは、おれのギャグは面白く
ならない。浪花節路線の連載にしよう」
と、赤塚が言い『もーれつア太郎』の
設定を考えた…。

現在のマンガ家は、おれの絵が
アニメ絵になるのは困るなんて
考えないんだと思いますが。
「アニメ絵論」がそろそろあっても
いいような気がします。
萌え感覚もからむでしょうしね。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/07/23 12:14

す、すごい話です。いったいこれからどうなってしまうのでしょうか?
さっそく購入してきます!ドキドキ…(;・∀・)

投稿: 本田 | 2005/07/23 12:30

>長谷さん

少々捕捉しておきますと、
竹熊さんが「アニメ絵」といったのは『サルまん』です。
その意味するところは、「マンガの描画スタイル」のひとつということです。

もちろん、その背景にはマンガ作品がアニメになるときに変わるということがあるんですが、それは「アニメに移植したときのスタイルの変化」であって、それはここでいう「アニメ絵」という概念を用意したかもしれないけれど、意味は異なります。
ここを混同してしまうと、話が見えなくなるんですね。

そうではなく、目が大きく鼻と口が小さく、髪がボサボサ……といったコードで描かれたものを「アニメ絵」と呼称したのはどういうことか? ということを言おうとしたのですね。

投稿: 伊藤 剛 | 2005/07/23 13:02

>伊藤さん
そうそう、混同してしまうと見えなくなる。
ありがとう御座います。

「アニメ絵」コードね。
日本アニメの作画史が見えてくるかも。
この辺が整理され、解明されるといい。

そこから、竹熊さんのアメリカのアニメ絵論
などへと拡大されていっても面白いし。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/07/23 13:52

>長谷先生

アニメ絵という言葉は、たぶん「サルまん」が最初だとは思います。思います、とやや自信がないのは、前例があるかもしれないからです。もしかするといしかわじゅん氏あたりが先にそういう言葉を使ったかも。

サルまんのアニメ絵の回では、ああいう絵柄をアニメ絵と呼ぶかオタク絵と呼ぶかで、相原くんと議論をした記憶があるからです。

いわゆる「アニメ絵」にも、ディズニーから手塚を経由した正当派アニメ絵と、虫プロのアニメーターが劇画に影響されて作った劇画風アニメ絵(北野英明、村野守美、安彦良和などの系統)、そこに少女マンガの要素が加わった80年代美樹本晴彦系統、そして90年代以降の「萌え」系に発展したと思うのですが、実はきちんと検証したことがありません。

そのうち「たけくまメモ」でも、皆さんのお力を借りて系譜を検証してみたいなと考えています。

投稿: たけくま | 2005/07/23 16:14

なるほど。
やはり系統図ができるくらいに
たどることが、アニメ作画史にも
関係してきますね。

先生の夏休みの宿題~に、しませう。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/07/23 17:14

関東の方で強い地震があったそうですが、大丈夫ですか?

我々は部屋が部屋だけに、二次被害が怖いような…

ともかく、まずお身体が無事であるように・・・
(次に、お宝が無事であるように・・・)

投稿: 星の男 | 2005/07/23 19:54

たけくまさん、「無事です」とか、カキコミが無いと、
今頃、あの荷物の下に埋もれて
もがいているのではないかと。。。。
ご無事でしたら、ひとつお願いします。

投稿: トロ~ロ | 2005/07/23 23:47

あ、無事です。
つか、ちょうど地震のときは外で自転車に乗っていたので、ぜんぜん気が付きませんでした。

家に帰っても、なにしろ常時地崩れ状態の部屋ですので、変化が分かりませんでしたよ。

投稿: たけくま | 2005/07/24 00:11

たけくまさんのは「美術様式史」的なアプローチが多いのかなと、必要だし説得力はあるんですが。

しかし、劇画の定義って何なんですかねえ。
下は、広辞苑からなんですが、
げき‐が【劇画】‥グワ
1紙芝居(かみしばい)のこと。
2 物語の登場人物や場面を絵で表し、人物の会話などを文字で書き入れた読物。漫画を物語風に長編化したことに始まる。特に、写実性のある絵によるものにいう。

まず誰が言い出したんでしょう?もともと紙芝居のことだったようですが。劇画作家というとすぐ名前は出るのですが。

アニメにも典型的なアニメ絵?があるように、
劇画にも劇画調の絵というのがあります。
陰影をつけたり、リアルな感じが特徴です。
でも劇画タッチの漫画はすべて劇画なんでしょうか。
例えば「サルマン」は劇画なんでしょうか?
平田さんの時代物は劇画ですが、「お父さん物語」は劇画なんでしょうか?
「東大一直線」とか「こまわりくん」とかが陰影が入ってますが劇画なんでしょうか?池上調の「クロマティ高校」は?
「北斗の拳」はリアルですが、劇画といわれると抵抗があります。

アニメ的な表現のアニメ絵で漫画を描いても、
それは漫画でアニメではありませんよね。

劇画調アニメ絵とかいわれると何がなにやらwww

その辺、もやもやしてるので、ちと偉い人に確実に分かる範囲だけでも初心者にご教示いただければありがたいのですが。

投稿: ぼぼぶらじる | 2005/07/24 01:32

当方は『弓道士魂』がもっとも好きなマンガの一つです。

投稿: HAMADA13 | 2005/07/24 04:00

>ぼぼぶらじるさん

レスが長くなったので、別途エントリ化しました。そちらをお読みになってください。

投稿: たけくま | 2005/07/24 06:44

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