田中圭一・復刊三連発!!
いや~復刊ブームですなあ。先日の楳図先生デビュー作といい結構なことであります。関係ないけど俺の『色単』もデビュー作なのでしたそういえば。「編集家」としての仕事第一号ですね。アマゾンではいつまでたっても予約扱いですが、今週中にはいいかげん買えると思いますのでよろしくお願いします。
それで田中圭一さんなんですがね。彼の初期代表作というか、初連載作品の『ドクター秩父山』が堂々復刊ですよ。それも「正編」にあたる『ドクター秩父山』がアスペクトから、続編の『ドクター秩父山だ!』がぶんか社から同時刊行という、極めて珍しいパターン。そんでもってメジャー連載『昆虫物語・ピースケの冒険』も併せて三冊ドーンと出ましたです。
田中さんといえば、あの小池一夫御大の劇画村塾出身。デビューも「Comic劇画村塾」だったと記憶しておりますが、一貫してシモネタを描き続けていたためか、劇画村塾の同窓会にも呼ばれないのだそうですよ。知らないうちに卒業生リストから抹消されていたんだとか。
それほど小池先生から嫌われてもなお、シモネタを止めない…いや、それどころか近年、会得に2年かかったという70年代手塚スタイルでエゲツナイ下ネタを描き続けてますからね。最近ではそれに本宮ひろ志先生も加わって、なにがなんだかわからなくなっていますが、ことシモネタという一点において一貫しております。
それから田中圭一さんのもうひとつの特徴が、サラリーマンも辞めないということですね。ほぼ20年間マンガ家とサラリーマンの二足のわらじを履き続けている。それでどちらも中断することなく、コンスタントに出世もして単行本も出しているような人、俺は田中さんしか知りません。いや会社のほうは転職を繰り返して現在4社目だそうですが、普通これだけマンガが描けてサラリーマンやろうなんて思いませんよ。そこを自然体でこなしてしまう田中圭一の頭の中はいったいどうなっておるのかと。
最初にお会いしたときの印象というのが、もう13年くらい前だと思いますが、ビシっとスーツを着てネクタイ締めて、ピッと名刺を渡して綺麗に斜め30度くらいお辞儀をして「田中でございます!」って言うんですよ。その印象は今でも全然変わってないんですが、それでいて描くマンガがこんな感じ(左図参照)でしょう。
シモネタとサラリーマンの融合。
真の変態とは、こういう人を言うんではないかと思いました。いやいい意味で。
『ドクター秩父山』を初めて読んだときの衝撃は、今もよく覚えてます。まず劇画調4コマというのが新しかった。劇画調といっても、貸本発虫プロ経由の若干アニメ絵が入った劇画調で、80年代アニメでも流行ったスタイル。そのうえで人間の煩悩の限界を超えた下品さを追求されるのですからたまりません。
『昆虫物語・ピースケの冒険』は、なんとあの「少年サンデー」で連載された作品なんですが、少年誌でもまったく手加減なしのガチンコ勝負なので驚きました。見てください。これのどこが昆虫物語なんですか。
とにかくそんな感じで、今回刊行の三冊には、田中圭一のエッセンスのすべてが詰まっております。近年の手塚パロや本宮パロの田中圭一しか知らない人、いや田中初心者の方もぜひ、お手にとって読んでいただきたい。あ、ちなみに、『ピースケ』の巻末には田中氏と俺・相原コージの鼎談も掲載されています。
それにしても、こういうマンガを土日に描いている人が、月曜には紺色の背広に身を固めて通勤電車に揺られ、タイムカードをガシャンと差し込んでいる姿を想像してみてください。そのイメージが浮かんだ瞬間、貴方の人生観は根底から音を立てて崩れ去るでしょう。
http://k-tai.ascii24.com/k-tai/news/2004/04/06/649097-000.html
↑田中先生のもうひとつの顔(下のほうに写真が!)
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コメント
ビージャン連載の本宮ホモパロも、いーかげんにせい、という感じですね。誉め言葉ですけど。ドクター秩父山のアニメは未見のままなのが残念です。
投稿: | 2005/11/02 00:31
末期になればなるほど読むところがなくなっていった劇村ですが、秩父山だけはかかさず読んでいました。
投稿: な | 2005/11/02 00:50
http://bj.shueisha.co.jp/contents/sakka/sp/024/kiji/002.html
こんな生活をしている漫画家の方は
確かに他にいそうもありません。
投稿: | 2005/11/02 01:21
え?え?、取締役 兼 企画営業グループ部長って、めちゃくちゃ出世してるじゃないですか。うらやましい。
投稿: MM | 2005/11/02 01:56
かつてのしりあがり寿さんとも
また違いますね。
営業部長というのが凄いです。
投稿: 坊や哲 | 2005/11/02 01:59
おええ
投稿: 弾 | 2005/11/02 02:35
↑の方も言われてますが田中先生取締役っスか。ううむびっくり。
しかしこの方の作品執筆態度、「なにがなんでももっともらしい方向には振らねぇぜ、ホロリとさせたりしねぇぜ」って姿勢には鬼気迫るものすらあります。いったい何が彼をそうさせるのでしょうか。
投稿: kamikitazawa | 2005/11/02 05:11
え、OPTPiXって日本のゲーム業界じゃデファクトスタンダートなグラフィック変換ソフトじゃないですか・・・。その陰にこんな人がいるなんてびっくり。
投稿: | 2005/11/02 07:16
劇画村塾はもっと田中先生のことを誇りに思ったほうがいいと思うんだけど・・・。
いや、やはり、無視されるほうが田中先生から見れば勲章かw
投稿: | 2005/11/02 07:22
手塚絵・本宮絵・永井絵ときて次は何になるんでしょう?水島絵か・・・?
投稿: | 2005/11/02 07:27
ピースケの冒険・・・・久しぶりに読みたくなった。
主人公がオケラっていうところがポイント高い。
それにしても
サラリーマンと二束のわらじだったとは知らなかった。
「すげえぜ」
投稿: CAB | 2005/11/02 08:58
ああそうか。それでマニュアルに田中さんのイラストが使われていたんですね。>OPTPiX
あまりマンガを読まない同僚は「え、なんで手塚ソックリな絵が?」と驚いてましたが。
投稿: ごま | 2005/11/02 12:22
http://www.artdink.co.jp/japanese/title/aq2/etc11.html
初めて知ったのがこの頃です。
あの漫画描く人がこののんびりしたゲームの~???
あまりの意外性にかなり衝撃的でした。
投稿: jk | 2005/11/02 12:36
っ!!!
OPTPIXっていえば(勿論自分も使ってる)ゲーム製作のスタンダードツールじゃないすか。
ほぼゲーム製作では100%に近い独占ツールですよ。
そんなところで、さらに取締役とは!!
超びっくり!!!
前職のゲーム会社在籍のつながりでしょうか。
投稿: うもとゆーじ(ウサギ王) | 2005/11/02 12:39
本宮絵は、本宮ひろ志原画の伝説の珍ゲー「建設動機喧嘩バトル ぶちギレ金剛」の開発中に身に付けたものだとか。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%C4%C3%E6%B7%BD%B0%EC?kid=28461
要は筆の遅い本宮氏の代筆をしたってことかな?
しかし偉人ですな。
投稿: . | 2005/11/02 14:19
http://k-tai.ascii24.com/k-tai/news/2004/04/06/649097-000.html
の写真のすぐ上の文章が
> 自身を見せた。
……自身を見せてはマズいのでは。
投稿: オダ | 2005/11/02 15:19
しりあがり寿氏の
キリンビールのラベルを書いていたという
経歴も驚きだったのですが
それ以上にびっくり・・・・
投稿: jeyson | 2005/11/02 16:24
高校の時に読んで衝撃を受けた漫画!!
「ピースケの冒険」
題名も覚えていなくて、作者も知らず、長年探し求めていました。
こんなところで再会できるとは…。
購入します!
投稿: Bermuda | 2005/11/02 18:29
田中圭一って作風からしててっきり六平直政みたいな脂ぎったオッサンになってると思い込んでました。
あんなやんどころない血筋を思わせる温和な風貌の紳士(古!)がシモネタ満載のオゲレツマンガを描いていたとは意外過ぎる・・・。
あと「ピースケ」大好きでしたね。
特にマンガなのに(被り物という設定なので)蝶にいちいちワイヤーを描く律儀さが(笑)。
投稿: レポレッロ | 2005/11/02 18:44
ピースケって当時の単行本も5年位前に出た復刻版も
連載当時の2話(たぶん1話も)が別の話に差し替えで
入ってないんですよね。
ショウリョウバッタの女達がカマキリにさらわれて
残った男のバッタ達はダッチワイフでがまんしている…
ってな話だった記憶が…。
今回の復刊版には入ってたらいいなぁ。
読みてぇ。
投稿: にしひろ | 2005/11/02 20:03
>ショウリョウバッタの女達がカマキリにさらわれて
>残った男のバッタ達はダッチワイフでがまんしている…
>ってな話だった記憶が…。
サンデーでリアルタイムで読んでましたけど、
あのサンデーでよくやりましたよね。
ヒネた中学生だった自分はドクター秩父山知ってたので、
連載第一回をみたとき目を疑いましたよ、
え?マジ?って
投稿: | 2005/11/02 22:39
>劇画村塾
つまらん連中ですね。
投稿: wahaha! | 2005/11/03 05:40
劇村で一緒に連載を持っていた西村しのぶの掲示板に田中圭一さんの
書き込みを見つけた時には有る意味ミスマッチ振りに腰抜かしました。
投稿: toshi | 2005/11/03 07:12
ドクター秩父山は97年にも一度「復活ドクター秩父山」として1冊にまとまって復刊されてましたけど、ドナルドマクドナルド風のキャラの漫画が全部無くなってたのが気になりました。
やっぱクレームがあったんでしょうかね。今回は載ってるんでしょうか・・・
投稿: こんにゃく | 2005/11/03 12:04
田中圭一さんと言えば、以前勤務していたゲーム会社で、
「アクアノートの休日2」という超癒し系ゲームのディレクターでした。
というか上司でした。
詳細↓
http://www.artdink.co.jp/japanese/title/aq2/etc11.html
二重人格にも程があるッ!(誉め言葉)。
投稿: DDS | 2005/11/03 13:02
タカラにいなかったけ?
投稿: | 2005/11/03 17:20
タカラにいたころの話は 「ヤング田中K一 」ニチブンコミックスに収録
投稿: moai | 2005/11/04 20:55
タカラの元社員というだけでもすごいのに、なんだこの偉大さは……
すごい人というのは、どんな方面でもその才能を生かすことができるんですね。
なんか、色々とがんばろうという気持ちにさせてくれる人だ。
投稿: もも | 2005/11/07 04:02
http://k-tai.ascii24.com/k-tai/news/2004/04/06/649097-000.html
の写真のコメント。
> 従来品の取り扱い説明書では田中氏による手塚治虫ふうのイラストが使われていた。
神罰のノリなのだろうかw?
なんか見たい欲望が沸々と。
投稿: hiro4 | 2005/11/11 02:27
竹熊氏のブログサイトがあったことにも驚きですが、それ以上に田中圭一先生のキャリアに思わずひっくり返ってしまいました。
あのどこを切っても下ネタしか描いてない、「下ネタの申し子」「下ネタの伝道師」としか呼べなさそうな人が、実はダントツなサラリーマンだったなんてッッ!
しかも見た目普通すぎ! ってかむしろ爽やか!
ちなみに私のお気に入りは、なんといっても「アリジゴク」と「ショウリョウバッタ」です。
いや、あのアリジゴクはどう考えても「ただの変質者」にしか見えませんでしたが。
ともあれ、
「優れたビジネスパーソンは、優れたクリエイターでもある」
という至言を改めて実感した次第です。
投稿: 船沢荘一 | 2006/05/26 23:18