コミックマヴォVol.5

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2005/11/28

楳図かずお『姿なき招待』が初復刻!

Amazon.co.jp:完全復刻版「姿なき招待」「続姿なき招待」: 本完全復刻版「姿なき招待」「続姿なき招待」

そんなわけで、楳図先生幻のデビュー作「森の兄妹」、「底のない町」(岬一郎シリーズ第一弾)のカップリング復刻に続きまして、岬一郎シリーズ第二弾『姿なき招待 正・続』が二巻組で出ちゃいます! この作品はこれが約50年ぶりの初復刻! 絶賛発売中ですよ!

現代日本におけるもっともマニアックな版元と呼ばれる小学館クリエイティブの仕事だけあって、またもや完璧に当時のままの造本を再現! 初期のB6サイズ貸本漫画の息吹を今に伝える匠のワザにオジサン連中も感激です! なお今回は不肖竹熊も解説文を書く栄に浴しまして誠にありがとうございました。

それで『姿なき招待』なんですが、個人的には『底のない町』をさらにしのぐ傑作なのではないかと思いますよ。絵柄こそ後のタッチとは違いますが、内容的な面において「楳図世界」が確立したのはこの作品からなのではないかとひそかに考えておるわけです。

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←少年にはあまり見えませんがこれが岬一郎だ!(姿なき招待・P1)

50年代の貸本界といえば、ハードボイルド調の探偵漫画が大流行だったのですが、楳図先生はそれにホラーの要素を取り入れたわけです。しかも当時の水準からすれば相当に怖い。それも単に怖い絵を描いただけではなくて、マンガ的なドラマ演出において、ホラーやサスペンスを盛り上げるためのコマ構成などの工夫を相当に凝らしていることがわかります。

sugatanaki-1-004←「姿なき招待」P4-5

たとえば左は『姿なき招待』の冒頭見開きなんですが、俯瞰で夜の道を見下ろす構図で、酔客が繁華街から裏露地に入ってくるシーン。カラーページの利点をフルに使い、賑やかなネオン街と寂しい裏道の対比を「色」で描きわけていることも見事ですが、なにより注目したいのは構図です。酔客の顔を大胆にカットし、足下の影を強調することで、これから「何か」が起こりそうだという緊張感と不安感を見事に表現している。

手塚の『新宝島』の冒頭なども「スピード感」の表現として有名ですが、『姿なき招待』のこの冒頭シーンは、さしずめ「サスペンス表現」のマンガ的成功例として、『新宝島』のそれと同じくらいの名演出なのではないでしょうか(まあ、当時の他の作品を全部読んでいるわけではないので断言はできませんが)

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←「続・姿なき招待」P16より。20歳時の楳図かずお自画像

と、このへんは解説にも書いたので、このくらいにしておきますが、ともあれ若き楳図先生(左図)の才気がビシバシとほとばしっている作品であることを強調しておきます。

それで冒頭のシーンを受けて、いよいよ「怪物」が出てくるんですが、これがまあ、当時の子供は夜便所に行けなくなっただろうと思うくらい、怖い怖いアレなんですよ。

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←左「姿なき招待」P7に初登場する「怪物」。
←右は「怪物」に「寄生」されている? コブ男・夢男。同P76

まーなんというんですかね。そのものズバリを引用したいのですが、ある意味見せ場でもありますので、「怪物」の顔がハッキリ描いてあるシーンの引用は止めておきます(まあ表紙にチラリと出ておりますけど)。文字で表現すると、そうですね、顔から別の顔が現れて、しかもふたつの腕までニョッキリ生えてくるという…。岡本太郎だって考えつかないようなシュールすぎるデザイン。

sugatanaki-2-119 ←「続・姿なき招待」P119

しかもそいつがピストル撃ったりするんです。「本体」の手と、「怪物」の手をあわせて4本ですから、4本の手でもうバンバンと。

さすがにマンガ慣れしているつもりの俺でもちょっと驚きのビジュアルでした。

物語は、この怪物がまき起こす連続「発狂」事件(この怪物の顔を見た者は全員「おかしく」なってしまう)と、その謎の正体を追って岬一郎とギャング団、ギャング団にいる兄を追って旅をする少年・精二、そして呪われた兄妹が入り乱れたとても複雑なプロットでして、なるほど一巻ではとても終わらなかったのがよくわかります。

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←「続・姿なき招待」P126より。妹萌えの要素もバッチリです!

この作品、俺が楳図マンガの原点であると断じる理由は、怪物の恐怖をただ描いただけではなく、その哀しさまで描いている点にありまして、その意味ではまさしく『赤んぼ少女』タマミの原型でもありましょう。また少年探偵・岬一郎が、主人公というよりは狂言回し的役割で登場するところも、のちの『猫目小僧』『おろち』などに通じるものがあります。さらに加えて妹萌えの要素もバッチリとあり、若い世代の読者にも楽しめること請け合いです。

来年には、松本晟(零士)先生の貸本作品や、『岬一郎短編集』の出版も予定されているとのこと、今後の小学館クリェイティブの動向には目が離せませんでしょう!

◎このエントリへのコメント→★

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コメント

あきらセンセイは"晟"ではなかったでしょうか。
(このコメントは消してください)

投稿: | 2005/11/28 18:01

あ、そうかも。直しておきます。
(特に消す必要はないでしょう?)

投稿: たけくま | 2005/11/28 20:51

今ココログ、メンテ中。しばらく更新できないようです。

投稿: たけくま | 2005/11/28 21:11

『姿なき招待』の冒頭シーン、俯瞰のアングルもいいんですけど、カメラが終始
不安定に揺れている感じがグッと来ますね。

投稿: ポン一 | 2005/11/29 16:59

↑そうそう。デビュー1年目にして、かなり高度なテクを駆使しているんで感動しますね。

投稿: たけくま | 2005/11/29 17:05

この調子で、白土三平先生の『2年ね太郎』とかも復刊してくださればうれしいです。通りすがりの独り言でしたノシ♪

投稿: よーざき | 2005/11/30 02:50

初めての書き込みで、失礼いたします。楳図ファンで(ファンサイトも作っています)、たけくま先生の解説やインタビューも、今回に限らず、読ませていただいております。特に、1997年「クイックジャパン」誌17号の楳図作品とからめた世紀末論は感銘しました。(サルまんも勿論!)
 で、「姿なき招待」での、表現技術などの明解な御指摘、強く納得しながら読みました。
 瑣末な事ですが、岬一郎総理大臣は子孫とかいうことではなくて、手塚治虫が得意とした(ランプやハムエッグなどの)スターシステムを楳図先生も取り入れたと理解したほうがいいと思います。御指摘のイデ隊員やチュー子、ガモラの猿飛博士、「かげ」の若殿ちゃんとか、いくつか例があるのです。ギャングの親分・軍馬も「底のない町」ほか、同時期の短編「北風物語」では曲芸団の団長だったりするのですよ。
 ともかく、本書が売れて、復刻シリーズが長く続いてくれることを、強く祈ってます。

投稿: 高橋明彦 | 2005/12/15 15:46

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