フリーにとって原稿料とは何か(2)
ただ、もちろん我々フリーライターは原稿料で飯を食べている以上、その金額が安すぎては生きてはいけないわけで、おのずと限度というか、相場がなければ困るのは確か。ただ、これが部外者には、はなはだ分かりにくい部分なんですよね。いや部外者ならずとも、よくわからない問題なのでして、
はっきり申しまして、俺は文章で飯を食べるようになってそろそろ四半世紀になりますが、いまだに「原稿料の相場」というものがよくわかりません。
たとえば原稿依頼の際、向こうから正確な金額を言ってくる編集者など、まず、いないわけです(いても20人に一人くらい)。こちらから尋ねてはじめて教えてくれるとか、「だいたいこのくらいだと思います」と、アバウトな額を言ってくるとか、または「上に聞かないとわかりません」なんて人が大多数です。このあたりの話は「たけくまメモ」のエントリ「出版界はヘンな業界」でも書きました。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_1.html
↑たけくまメモ「出版界はヘンな業界」
ですから、烏賀陽さんがAFPBBと「連載契約」を書面で交わしていたという事実が、俺には驚きだったわけですし、それであればなおさらのこと、一応抗議したにせよそれを呑んで連載開始した以上、契約で決められたことに対して後になって苦情を言うのはちょっとおかしいのではないかとも思うわけですが。
まあ、それはそれとしても、確かに原稿料が安すぎると困るのは事実。
商業ブログではどうなるのかはよくわからないんですが、雑誌の場合は「編集経費」という大枠がありまして、原稿料は基本的にそこから支出されるわけです。ですから、たとえば大手の青年マンガ誌の編集経費枠がだいたい1号あたり2千万前後ですから、全部で400ページある雑誌の場合、ページあたりの単価が5万円になります(現実には広告が入るので、ここまで単純ではないですが)。ここから考えますに、マンガ家に払える原稿料の上限は5万円(理論値)であるということになるわけです。
ところで烏賀陽さんは元朝日新聞の社員さんで『アエラ』の編集部にいらっしゃったようで。そういえば俺も『アエラ』で何回か仕事しましたが、こちらが聞くまで原稿料の話は一回も言ってこなかったな。まあいいけど(笑)。
最近インタビューした長崎尚志さんは、数年前に小学館を退社してフリーになられた方なんですが、インタビューの最中、「フリーの立場がこんなに不安なものだとは…」と絶句されてましたね。俺は思わず「今、気がついても遅いですよ!」と言ってしまいましたが。そのときは、金額の話ではないですが「版元によって、こんなに払いが遅いなんて!」と驚きの表情で語ってらしたのを覚えております。
要するに、小学館で20年働いて、編集長まで務めた人でさえ、フリーにならないとわからないことはあるわけです。たとえば会社員で、給料が遅配になったら大事件ではないですか。でもフリーの場合、編集者が「悪い悪い。原稿料の伝票、切り忘れちゃった。一ヶ月遅れるけど、ごめんね」なんて平気で言ってきたとしても、ニコニコ笑って許さなければならないこともあるんですよ!
烏賀陽さんのフリー歴は何年なのかはよく知らないんですが、『朝日ともあろうものが』という、朝日の内情を暴露した本を書かれたのは知っております。メディアとかマスコミに対してある種の理想を抱いているがゆえに、フリーの道を選ばれたのだと解釈しておりますが、はじめからフリーだった俺の場合、最初から「あまり組織に期待しない癖」がついてますので、正直いって、烏賀陽さんの怒りにはピンとこない部分があるのもたしかなんですよ。あらかじめ原稿料額を知っていてのことだとしたら、ってことですけど。
梅棹忠夫の『情報産業論』(『情報の文明学』所収)に、「原稿料=お布施理論」という面白い話が出てきます。ようするに、作家に支払う原稿料は、檀家が坊さんに支払う「お布施」に似ている、という話なんですけど(前にもどこかで書いたけど、書く)。
お布施の金額は、あらかじめ決まっているわけではない。一種の阿吽の呼吸で、法事が終わったら檀家が坊主に包みを渡すのだけれど、包みの中(現金)の額はどうやって決まるのかというと、それは「坊主の格と、檀家の格で決まる」と梅棹先生はおっしゃるわけです。
それなりの格のある坊主なら、あまり安くは包めないし、それなりの社会的地位のある家であれば、やはり坊主に安くは包めない。そこはお互いの「格」によって、おのずと決まってくるというものですね。これは出版社とライターの関係にすごくよく似ている。
要するに本来値段のつけようがないもの(読経や原稿)に値段をつけるわけで。お経って価値がわからん人にはさっぱりわからないけど、それでも坊主を呼ぶからには、なにか支払う必要があるわけでしょう。法事をやる以上、呼ばないわけにはいかないし。
同じようにライターの原稿だって、400字いくらと機械的に値段がつけられるわけではない。たとえば400字書くのに15分かかる人もいれば、数日かかる人もいる。でも時間をかけたからといってそれが面白くなるとは限りませんしね。面白いかどうかなんて、読者によっても印象が違うわけだし、値段なんてつけようがない。
しかしそれが社会にとって必要なものである以上、また、坊主やライターも社会の一員である以上、生活するためにはお金が必要になるわけです。本来、原稿の値段って無理やり決まるんですよ。
さきほどのマンガ原稿料の問題にしても、たとえばページあたりの上限がかりに5万だとしても、マンガ家全員に同じ額を支払うわけにはいきません。どうしたって、新人やヒットがない作家のそれは安くなります。また、大ヒット作家がかりにページ5万円とったとしても、次の作品はヒットしなかったから、今回は3万で勘弁してください、とはならないのが面白いところです。やはり一度5万払った人は、その出版社では5万なんです。そして「この作家はそろそろ限界だな」と思われたら、原稿料が5万円のまま、その会社からは仕事が来なくなるという仕組みです。
ええと、一応申し添えるとページ5万というのはあくまで仮の話でして、実際に5万とる人は滅多にいません。大御所や売れっ子でも、2万から3万くらいが多いようです。あの手塚治虫が、死ぬまでページ2万数千円だったといえば、あとは推して知るべしでしょう。
ページ単価が5万だとしても、実際はその中から原稿料以外のもろもろの予算、たとえば作家と打ち合わせの際にメシをおごる金だとか、編集が夜中に作家の家までタクシーを走らせるお金なんかも出るわけで、現実にそこまで貰うマンガ家はまず存在しないわけです。詳しい話は俺の本『マンガ原稿料はなぜ安いのか』を読んでください。
ちょっと話があっちの方向に行ってしまいましたが、ことほどさように、原稿料というのは必ずしも高ければいいという問題ではなく、また、安くてダメだという話でもないわけです。もちろん限度はありますが、それの判断はまさにケース・バイ・ケースだと言うほかはない。
烏賀陽さんの場合、いっそ個人ブログでやられたらどうでしょうかと。原稿料は出ませんが、アフィリエイトを上手に使えば「小遣い銭」くらいにはなります。少なくとも烏賀陽さんクラスなら、AFPBBの原稿料よりはよっぽど「稼げる」と思いますがね。組織とつきあう際の頭の痛くなる問題もありませんし、読者の反応もダイレクトだし、いずれ本にできる可能性だってあります。
と、ここまで書いて検索かけたら、烏賀陽さんの個人ページがあったんですね(笑)。ただしブログではなくて普通のホームページみたい。
プロフィールとか見ていると、以前にお会いしたことがあるような気がしてきた……。烏賀陽というのも印象的な名前だし……。あわわわ。
| 固定リンク
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 田中圭一制作総指揮のマンガ作成ソフト、なし崩しで情報公開へ!(2010.10.05)
- コミPo!と私(1)(2010.10.17)
- 早速、コミPoで傑作が!(2010.10.27)
- コミPoを使った作品が早くもニコニコ動画に!(2010.11.21)
- コミPo!体験版で1こままんがコンテストが開かれています(2010.12.04)
「おすすめサイト」カテゴリの記事
- 「大島てる」の謎(2009.09.19)
- WEBマンガの新展開「HACK TO THE BRAIN」(2009.02.14)
- アジア式しゃがみ方の研究(小ネタ)(2009.03.03)
- 筒井先生がWEB日記を始めた(2008.07.01)
- あなたはどの女性がお好みですか?(2008.07.06)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- たぬきちさん頑張れ(2010.04.22)
- iPadにマンガを入れてみた(2010.06.17)
- 電子出版ははたして儲かるのか?(番外)(2010.07.19)
- それでも出版社が「生き残る」としたら(2010.01.30)
- 「紙の本」の将来(2010.02.03)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 50歳まであと6日(2010.08.23)
- 死ぬことは生きること…今敏氏の逝去を悼む(2010.09.02)
- ツイッターの更新しやすさは異常(2011.01.15)
- 0年代、自分の身に起こったことなど(0)(2011.02.01)
- 震災1週間目のツイートより(2011.03.19)
この記事へのコメントは終了しました。





コメント
http://mimizun.com:81/2chlog/zassi/mentai.2ch.net/zassi/kako/950/950559284.html
ギャラの安い出版社!
94 名前:名無しさん :2000/06/08(木) 09:29
ちばてつやと白土三平がページ10万、と聞いたことがある。
それも20年前の話。現在はいくらか知らないが、たぶんあまり
変わってないと思う。
投稿: 忍天堂 | 2006/06/12 21:43
上記コメントは参考までに。
有料ブログで、どれくらい稼げるかは知りませんが。
そこまで自分の文に自信があるのならジャーナリストの山岡俊介氏の様に
有料ブログをやれば良いだけの話じゃないのかな。
今の時代、出版社を通さなくても読者からお金を取る方法は幾らでもあると思いますけどね。
山岡俊介 アクセス・ジャーナル
http://accessjournal.jp/modules/weblog/
投稿: 忍天堂 | 2006/06/12 22:23
ちば先生の原稿料が高いのは
多忙な連載を抱え、新作を断っているうちに
次第につり上がっていってしまったということを
聞いた事があるが如何なものか?
投稿: | 2006/06/12 22:25
イラストの世界ですと、例えば月刊小説の挿画(白黒)で一万数千円くらいですね。媒体によって違いますが、相場ってのはあってないような印象で出版社によってかなり開きがありますね。
広告業界はそれ×10。出版関連の10倍くらい。その代わりわけ判らんクライアントにイライラするリスクが付きますね。
因みに最近は出版不景気の所為で私は下流になりました。
投稿: あんとに庵 | 2006/06/12 23:01
こんにちは。サル漫の頃からいつも楽しく見てます。
まずAFP云々が業界のスタンダードになるかといえば、これはもう無理だろうと思います。この運営会社はSBの孫会社くらいになる(ソフトバンクBB全額出資?)ので業界への影響力はこれまでもこれからも無いです。ここに行くとお子様っぽい幹部がわらわらと出てくると思うのですが、彼らは幹部候補生ではあっても金○は親玉に握られています。まあお金に渋いのもその辺に理由があるのですが。
もうひとつ、Mさんが陸>湯黒とまあ美しい経歴を持っているので期待をされたようですが、正直この人は汐留では何の役にも立ちませんでした。彼が汐留にきてからの1年、周りの人間に与えた影響は、文字数にすれば200字くらいでしょう。いやホント、この人は全く親玉の与える知恵を実践に生かせない人でしたよ。人当たりは良さそうでしたが。
もちろん企業としての集合体であるSBはそれなりの力があります。ただそれに乗っかってるだけの人も結構居まして、そこを見抜いて付き合わないと鳥賀さんのような目に合ってしまいます。有名人を呼んで記者会見して、あっさり辞めたサービスや企画はそれこそ年間幾つも存在します。逆に考えればこのウ○コサイトは一時的に株価材料にはなっても今後世のためになることなどありえません。よって鳥賀さんの取った態度はまさしく正解だったと言えましょう。
投稿: あのにます | 2006/06/13 00:15
記事としては面白くは無いけど、たけくまさんは普通に正しいことをおっしゃってますね。
脇も甘くない。
平たく言うと、
うがのさんは飼い犬の期間が長かったので、
「野良の編集家」のたけくまさんからすると贅沢なのでしょう。
>ぼくは新聞社出身なので、たとえブログであってもミ>ス・訂正の類いはイヤなのです。
報道と創作のボーダーの無い
「アサヒ」の元社員が新聞を語るなよと・・・
その辺の気取りが彼なのでしょうね。
記事からアエラ臭さが抜けないんだな。
投稿: ぼぼ | 2006/06/13 00:22
厳しくなったと言われる「下請法」ですが、
大手出版社含めて有名無実化されてるのでしょうか。
そもそも、そんなものは適用されてない?
原稿料の話が事前に提示されていないのは、
おそらく下請法に反することだとは思うのですが、
まぁそんなこといちいち突っ込んでたら
ライターさんの仕事は成り立たないわけで。
投稿: 日本惨敗 | 2006/06/13 00:25
私昔、葬儀の時に流れる故人追悼のナレーションテープや
披露宴の新郎新婦生い立ちスライド(動画ではない)を作っていました。
当時、原稿を書いてもらっているライターさんのギャラがあまりに安くて
申し訳なく思っていたのですが、出版業界ですらそんなに高くはなかったんですね。
ちなみに、故人追悼の原稿のギャラは枚数でも字数でもなく、日当でした(笑)。
投稿: ウホハホ | 2006/06/13 00:59
>厳しくなったと言われる「下請法」ですが、
大手出版社含めて有名無実化されてるのでしょうか。
条文を読めばわかることですが、原稿執筆の仕事の場合、「下請法」の適用はかなり限定されています。
投稿: とおりすがり | 2006/06/13 01:37
小学館って金銭面ではかなり例外的な会社なんじゃないでしょうか。
長崎尚志氏は別の雑誌で、フリーになったら会社時代と同じだけ稼ぐのは
非常に難しいことがわかった、と語っています。
辞める前に気付きそうなものですけど。
でも、あれだけヒット作に関わっているフリー編集者なのに、小学館時代の
給料を稼ぐのが至難の技とは悲しいですな……
あと西原理恵子さんの漫画なので鵜呑みにはできないのですが(笑)、
小学館のYという編集者が西原さんの話を聞いて
「えっ、原稿料の支払いが遅くなったり払われないことがあるの!?」
と驚き、西原さんが「それが普通なんだよ。そうしないと潰れるような
会社や雑誌ばかりなんだよ」と毒づくシーンがありました。
投稿: | 2006/06/13 02:19
名前を間違っている方がおられますが、
氏は「烏賀陽(うがや)弘道」という名前ですよ。
投稿: | 2006/06/13 02:23
あー、申し訳ない。
投稿: ぼぼ | 2006/06/13 02:34
大御所でも2,3万なんですか!?
安っ!!
昔少しだけマンガ描いてましたが新人でページ5千円でした。
その頃は売れたらページいくらんだろうか?10万くらいなのかな~と夢みてました。
そうなんだ。2,3万なんだ…。
投稿: | 2006/06/13 02:43
僕は最初ページ8000円だったな…。
今にして思えばあれは高い方でした。
投稿: ポン一 | 2006/06/13 03:41
もちろん売れっ子マンガ家の場合でも、原稿料は基本的に安いんですが、単行本の印税でその分カバーできるわけです。
手塚の原稿が最後まで2万数千円だったというのも、手塚本人が頑として「上げなかった」そうですよ。そのくらい「干される恐怖」が身体に染みついていたんでしょう。
投稿: たけくま | 2006/06/13 06:27
ずいぶん前ですが
遊人さんがHマンガ不買運動のあおりで単行本が売れなくなってしまい
それで連載を打ち切らざるをえなかったことがあります。
雑誌掲載料オンリーではとてもやっていけなかったからだそうです。
投稿: Aa | 2006/06/13 06:58
「料理の鉄人」の謎本に書かれていたんですけど、
あの番組で一生懸命料理を作っている鉄人よりも、
喋っているだけの鹿賀さんのギャラがべら棒に高く、
さすがに鉄人たちが不満を述べたとか。
製作側は鉄人たちのギャラを上げることをせず、
CMに出して副収入をもたらすことで解決したらしいです。
読んだとき、根本的な解決ではないように思ったのですが、当人がそれでいいのなら、いいのでしょうね。
投稿: てんてけ | 2006/06/13 08:38
この一連の降板劇ですが、何だかはじめから「安いから降りる」ことを想定して、仕事を引き受けたんじゃないかと。予定調和ちゃうんか、と。
専業主婦の仕事を時給換算して、悦に入ってるフェミニストの先生方を思い出しました。
投稿: らっぱ大臣 | 2006/06/13 09:54
名前を間違えているのは、たけくまさんご自身もですね。
「鳥」(とり)じゃなくて「烏」(からす)です。
投稿: | 2006/06/13 12:10
あ、本当だ。直しておきます。失礼しました烏賀陽さん。
投稿: たけくま | 2006/06/13 12:29
よく脱サラしたエリートサラリーマンが没落する典型として「自分の力を過信しすぎる」ってことがあります。
正直会社組織においてどんなに自分が優秀な人間であっても「会社が7に自力が3」じゃないかと。どんなにバリバリ契約を取ってくる営業マンでも、最終的には会社の名前で信用を買うようなもので、大きい会社なら上記の比率はさらに会社に比重します。
フリーライターになったからには「自分の3の力で生活を維持しなければならない」と考えるべきでしょう。特に文筆業というのは相当特殊な才能がない限り同じ文字フォントですから「誰が書いても同じ」です(W。その辺、絵で差別化できるマンガより厳しい世界ですね。
投稿: kio | 2006/06/13 12:30
エロゲー(アダルトPCパソコンゲーム)のシナリオでは(雑誌の原稿料同様ピンキリですが)
テキストデータで1KB(512文字)=1000円
と言われています。ちなみに1タイトルのシナリオ容量(これまたピンキリですが)は700K~2M(358400~1048576文字 原稿用紙896~2621枚)ぐらいです。
投稿: シロたん | 2006/06/13 16:03
私も一応、ライター暦ウン十年ですが
確かに事前にギャラの話がきちんと
されることはほとんどないですね。
あと音楽誌は、やはり安いと思います。
今、私が書いてる某誌も
ぺラ換算500円とか…そんなもん?
少なくとも1000円に達してない。
&明細ナシ。
投稿: 狐蓋。 | 2006/06/13 16:48
うーん、、、
たけくまさんは
>本来、原稿の値段って無理やり決まるんですよ。
と書かれていますが、それは何も原稿に限らずほとんどのものがそうなのではないでしょうか?
例えば工業製品だって別に原価で値段が決まっているわけではなく、色々な付加価値やブランド価値、人気などが合わさって市場価格が形成されているわけです。
ラーメンの値段だって色々ありますが、その全てが原価の違いではありません。おいしいラーメンは不味いラーメンより高いことが多いですが、うまい不味いは原価の差だけが反映したものではないですし、このうまい不味いも本来値段のつけようの無いものです。
現在の資本主義市場経済では価格は基本的には原価よりも主に需要と供給のバランスで決定されているわけですが、出版業界でもこの基本は同じだと思います。
ただ、出版業界が普通と違うのは同業者に(意図しないにしても)ダンピングする人がたくさんいるということだと思います。
つまり「俺はこの仕事が好きだから少々貧乏しても仕事ができるだけで幸せなんだ」という感覚が強い業界は出版業界でなくてもそうなってしまいやすいのだと思います。アニメ業界もまさに同じ構造です。
"客にうまいラーメンを食わせる幸せ"のために赤字のラーメン屋を他の仕事でお金を稼ぎながら続ける奇特な人はあまりいませんので、赤字価格でないと客が来ないラーメン屋は店を閉めてしまいます。ですので最終的にはラーメンの価格は赤字価格ではないところに相場が落ち着きます。
出版業界やアニメ業界にはこれが働かないのだと思います。
これを解決するには同業者のほとんどが加盟する労働組合(ギルド)による最低ギャラの設定が最も効果的ですが、残念ながらそういう仕組みは出版業界にもアニメ業界にもありません。
アニメ大手には昔会社ごとの労働組合がありましたが、会社自体がダンピング競走を始めて規模が小さくなってしまったことと、アニメーターのほとんどが結果的にフリーになってしまったためこの会社ごとの労働組合は機能しませんでした。
例外的に声優さんは時々ギャラ交渉のためにストやったりしますがあれは声優さんのほとんどが日本俳優連合に所属していて、ここが団体交渉をするからこそできること。つまり、声優さんたちはギルドを持っているんです。
ただ、ギルドのような組織は業界の草創期で無いと立ち上げがうまくいかないでしょうから、この問題の解決はかなり難しいと思います。
ちなみに、サラリーマンの方がフリーよりも安定して高収入だというのは、多くの会社が会社ごとの労働組合を持っていたこととも関係するでしょう。
ということで、出版業界の特殊性は「原稿には本来値段がつけられない」ことにあるのではなく、業界関係者のダンピングをも辞さないまるでアマチュアのような仕事への情熱にあり、業界の草創期にギルドを作りそこなったことが現在の状況を作り出してしまっているのだと思います。
投稿: 骨男 | 2006/06/13 18:13
↑うーん。ダンピングする人も、手塚先生のようにいることはいるんでしょうが、出版界に関しては、ぼくの知る範囲ではほとんどいないですね。(キックバックの噂は聞きますが)
出版業界の大問題は、「お互い金の話をしないこと」「価格は、発注側(版元)に決定権があること」この2点に尽きると俺は思います。原稿料は99%依頼側、つまり「原稿を購入する人」が値段を決め、販売側、つまりライターが値段を決めることはまずありません。これ自体、おかしな話でしょう。
そのうえ、「金の話をお互いしない」ので、いただく側は、いくら支払われるのか、たいてい支払いの段になるまでわからないのです。
ですから、価格が決定したときには多くは「後の祭り」で、われわれ執筆者はかりに「安いな」と思っても、武士は食わねど高楊枝を決め込んでガマンしなければならない。(安いと思う額を、涙を呑んでガマンしなければならないこと自体が、ダンピングと言われればそうなんですけど、本来のダンピングとは意味が少し違うでしょう)。
こういうのは、骨男さんの書かれる「資本主義市場経済」以前の問題、そもそも資本主義の体を成していないように思えるのですが、いかがですか。
あとフリーの組合がないというのは、その通りですね。いろいろな理由があるみたいですが、文芸作家協会のようなものを除いては、なぜか定着しませんでしたね。
投稿: たけくま | 2006/06/13 19:15
>たけくまさん
返信ありがとうございます。
ダンピングは確かに法律違反になるような意味でのダンピングではないですが、結果的に安いギャラになることを経験上知っているのにその会社との取引を止めない、あるいは究極的にはその職業を止めないでいることはつまりダンピングしているのと同じ状況だと思います。
世間一般でダンピングと言うときにはもちろんシェア獲得目的で意図的に行うダンピングをさす場合もありますが、仕事を取るために当事者の意に反して価格を下げていく状況全体を指して「ダンピングしちゃってる」と言うことも多いと思います。
少なくともそうやって切り下げられた価格は他社から見ればダンピング価格と言えるわけで、ダンピング競争と言うようなときには大抵こういう状況だと思います。
出版業界が資本主義の体を成していないのはそのとおりだと思いますが、さっきの例で言いますと別にラーメン屋さんは高い職業意識で資本主義の原則に従っているわけではなく、単に「損するならやら無い」事で結果的に資本主義の原則に従っているのだと思います。
この意味では出版業界が資本主義の体を成していないそもそもの原因は関係者の「損得抜きでやってしまう」体質にあるいうことになると思います。
僕が昔いた業界も事前に見積もりが無いケースは良くありましたし、あってもうやむやのうちに変更してしまうこともありました。
しかし、そうしたことが許容を超えて続く取引先とは最終的に仕事をしなくなりましたので本来は契約書が無くても最低限の市場原理は働く筈だと思います。
フリーの組合ができなかった根本的理由のひとつに日本が長い間自動右肩上がりの経済成長期にあった事が挙げられると思っています。組合が無くても基本的にはギャラは上がったのだと思うからです。
但し、その上昇カーブは結果的には世間の平均よりもかなり低かったわけですが、当時はそれに気付きにくかった&気付いても何もしなかったということなのではないでしょうか?
この辺はサラリーマンの給料も上がっているとは言え日本の経済規模全体の拡大と比較すると似たようなことが言えると思います。
お金の話をするのをはしたない事とする国民性とも関係するのかもしれません。
投稿: 骨男 | 2006/06/13 20:27
>てんてけ様
> 喋っているだけの鹿賀さんのギャラがべら棒に高く
料理人には喋っている「だけ」に見えるのでしょうね。
でも、TVでは小道具作る人より「しゃべって」いる人が重視されるのですよね。
それに、無名の料理人では大きなスポンサーはつかないけど「鹿賀さんが出ます」と言えばスポンサーも安心して広告を出してくれるんですよね。
その辺の経済事情を無視して労働量だけでギャラを語れないのですよね。
投稿: 西麻布夢彦 | 2006/06/13 20:51
>骨男様
たけくま先生がいうように、出版の世界の低価格は、いわゆるダンピングとは言えないと思います。
むしろ、出版者側が優越的地位の濫用(独禁法第19条及び第14号)に当たりそうですね。
手塚先生の場合には、あえて原稿料を下げることで、他の漫画家の参入を阻み、紙面を独占することを目的にしているなら、ダンピングと言えなくもないですが……
手塚先生も、干される恐怖から廉売しているなら、やはり、出版社により優越的地位の濫用がなされているのでしょう。
(もっとも、そもそも相場がないので、廉売ではないとも言えます)
投稿: 西麻布夢彦 | 2006/06/13 20:59
西麻布夢彦さま、教えてくださいまして、ありがとうございます。
いや、私も知りませんですし、おそらくは謎本の執筆者も見たまま聞いたままで
人に喋ってしまいまして。(^^;)
投稿: てんてけ | 2006/06/13 21:35
フリーライター歴十数年です。店頭売りの雑誌、企業広報誌、各種HP、
メルマガなど、いろいろなメディアで仕事をしていますが。
お馴染みさんでも御新規さんでも、必ず、初回打ち合わせで
<原稿料>を確認します(あわせて支払いタームも)。
それを怠って(結果的に)法外な低価格で引き受けてしまうと、
それがその会社のスタンダードになってしまい、
他の同業者の不利益ともなりかねないからです。
そりゃ、わたくしも最初は、「お金の話をするなんてはしたない」と躊躇しましたよ。
でも一度言ってみたら、案外すっと言える。
SEXと同じで、未経験の時はドキドキしちゃうけど、
1回やっちゃうと“特にどうということもない”。
企業(依頼主)の大小に関わらず、嫌がられたことはありません。
その場で決まらない時は、「ギャラが決まったら連絡して。そしたら
作業をスタートします」と言いますね。
同業者のみなさん、もっとお金の話をしてもいいんだよ~。
恥ずかしいことじゃないんだよ~。
投稿: ポンスケ | 2006/06/13 21:35
多分、出版業界が「夢の国」なところも関係しているんでしょうね。夢を現実に戻す「お金」の話はできない。
究極的には、「現実(お金)」をとるか「夢(夢の国、なぁなぁな楽な状況)」をとるか、って言う話で、大多数は夢の国をとってしまう、そこに発注者側がつけこむ、ってことなのだと思います。
こういう状況って、多分、これからも、ずっと変わらないっぽいですね。法律が(大手が大反対して変わらないだろうけれど)変わらない限り。あるいは職を辞して訴訟でもしない限り。
つまり変わらない。
投稿: | 2006/06/13 22:22
出版業界はまったく知らないのですが、個人的な意見をはさませていただきます。
出版業界に限らず、プロの世界を「夢の国」と思う社会人がいたら、それはもう「一生ニートしてなさい。」と考えます。そのような「夢(なぁなぁ、ぬくぬく)」を見ていたらどのような業界にいたとしても長続きしないでしょう。
執筆業をされておられる方は、立派な事業主なはずです。(例外もありますでしょうが「プロダクション所属ですとか」)
自分の才能努力を賭けておられる方のはずです。
「ポンスケさん」のおっしゃる通り、自分から業界の慣例を破ることが大事かと思われます。それは仕事単価にせよなんにせよ。
だって守るべき支えるべき「自分と家族」がいるのでしょうから。
追伸:「下請法」ってどうなってるんでしょう?某清涼飲料水メーカは破格の単価で軽油をいい値で契約します。(契約を結んでいる以上責は無いのですけど)あ、これではおんなじですねwウチも慣例を変えていきませんと!
投稿: とおりすがり | 2006/06/13 22:55
雑誌の仕事を20年以上やってきた中で、
過去に一度だけ、事前に原稿料の話を持ち出されたことがあります。
10年ほど前、新規のA社の、新雑誌から依頼があって、
打ち合わせをしている中で
「原稿料は、いくらぐらいお支払いしたらいいんでしょうねえ?」と
編集者に言われました。
今まで言われたことがなかったので、
適切な答えを用意していなくて、
とりあえず、レギュラーでやってるB社で、
ふだん貰っている額を口にしました。
そうしたら「そんなには出せません」と断られてしまい、
けっきょく、ふだんの6割減ぐらいの額を、向こうが言ってきて決着しました。
この場合、私は同業者全員と業界全体のために、
その会社の仕事を断るべきだったのでしょうか。
私が断ったことで、何かが変わっていたのでしょうか。
ちなみにA社というのは辰巳出版でB社はコアマガジンです。
投稿: 石川誠壱 | 2006/06/13 23:30
「相場が分からない」ことも
出版社(=発注者)を有利にしてますね。
ラーメンのたとえをお借りすると
近所でのラーメン一杯の価格は簡単に知ることができますし、
プロ同士ならある程度、原価率もはじけます。
ところがライター業となると
「他がいくらもらっていて、
自分のギャラが相応なのか」という判断が難しい。
こっそり同業者にさぐりをいれたりするんでしょうか?
たけくま先生にはぜひご自身の
「オレの標準原稿価格表」でも掲載して
仕事が増えるのか?減るのか?
チャレンジしていただきたいです~
投稿: くにの | 2006/06/14 00:05
>西麻布夢彦さん
わかりました。
ダンピングと言う言い方は訂正させていただきます。
安くなってしまうことを経験的に十分知っていながらそれに対抗しようとはしない傾向、と言い換えても僕の文意には影響はないと思います。
>出版者側が優越的地位の濫用(独禁法第19条及び第14号)に当たりそうですね。
これに該当するほどのシェアを持つ出版社が主導して今の状況があるのならそうだと思いますが、どちらかと言うと業界全体でそういうムードが作り上げられてきたのではないでしょうか?
手塚氏のそもそも相場がないので、廉売ではないとも言えまると言うのも、ちょっと詭弁だと思います。
相場と言うのは政府が公定価格を決めているような例外を除いて他のほとんどの業界にとっても業界でも決してどこかに書いて決められているものでは無いと思います。発注者と受注者のお互いの利益を守るための駆け引きにより市場全体でなんとなくできてくる暗黙の合意のようなものです。
だから環境の異なる地方では同じ仕事でも相場は異なっていたりするものです。
出版業界では発注者の利益確保の努力だけがなされているので各社ごとの勝手な相場になっているのだと思います。
あと、始めの打ち合わせで高い金額を言って断られるのは出版に限らずどの業界でも日常起こっていることです。
そしてここが大事なのですが、発注側が安く言いすぎても断られるのです。
また、打ち合わせで価格交渉が無かった場合でも、最終的な金額によって次回の仕事に対して同じことが起こります。
そうして普通は相場が形成されているのだと思います。
相場が見えないことも、ラーメン屋は確かにわかりやすいですが、見えにくい業界は他にもたくさんあります。それに、相場が見えない事自体は発注者にとっても同じです。普通はそうした双方の探りあいと経験から相場は形成されていきます。
さらに、どの業界でも一時的に相場が安すぎたり、高すぎたりすることはあります。でも、それはいずれ調整されます。出版業界のようにずっと安いままというのは市場原理による調整機構が働いていないからだと考えます。
もちろん、個人でこの現状をどうにかするのは非常に難しいことはわかります。
でも結局はそういう個人の行動の集積が現状を形作っていることは意識するべきだと思います。
ポンスケさんのような方が多数派になると状況は変わりうると思います。
投稿: 骨男 | 2006/06/14 01:34
高杉弾さんはこんなことしてますね。
http://www.nk.rim.or.jp/~imi/ryokin.html
投稿: | 2006/06/14 01:36
烏賀陽弘道さんといえば朝日新聞社退社の内幕を自身のホームページで書いてた人ですね。
このことは彼の著書『「朝日」ともあろうものが』でさらに突っ込んで書かれており、一読して
「噂は聞いていたがここまでヒドイのか」と驚いたことがあります。
一見華やかに見える新聞界の現状を一般に知らしめた彼の功績は称えられていいでしょう。
ただし、今回の件に関しては彼の言動に首を傾げざるをえません。
あらかじめ原稿料の額を知っていたのなら、後になって「怒る」のはおかしな話、
とおっしゃるたけくまさんの方に一理あると思います。
投稿: ワン | 2006/06/14 06:34
最近の漫画業界では、編集サイドから原稿料の確認がなされることが多くなったような気がします。
(角川、メディアファクトリー、メディアワークス等)
広く話しを聞いてるわけじゃないので、どこでもって事ではないかもしれませんが…
投稿: ヒロポン | 2006/06/14 08:56
http://www.insurance-top.com/company/ car site insurance. [URL=http://www.insurance-top.com]home insurance[/URL]: auto site insurance, car site insurance, The autos insurance company. [url=http://www.insurance-top.com]cars insurance[/url] from website .
投稿: insurance auto | 2006/06/20 12:28
文芸協会かなんかよく知りませんが、ペンクラブだのなんだの入り始めると文筆家はつまらんくなりますね。
村上ドラゴンさんは入ってますか?
中島らもさんもそういうのとは無縁だったと思われますし。
大ヒットが出せた方が他の方たちを思いやって、アドバンテージがあるうちに吊り上げていくしかなさそうに思います。
とはいうものの、インフレのいきつくさきは戦争という名前のリセットか、よくてデノミ。ただのお遊びですな。俺はデフレスパイラル大好きです。困るの資本家だけだから。
投稿: メルヘンひじきごはん | 2006/06/22 04:27