タイトルに著作権はない
ええと、またしても『サルまん』がらみのネタで恐縮であります。俺たち作者二人にとって、『サルまん』は自慢であり誇りでもあるのですが、どこが自慢で誇りかと申しますと、それはもう、ひとえに『サルでも描ける』というタイトルをつけたことであります。
まじで三日三晩かかりましたから。この間も、相原くんが保存していた当時のタイトルメモが出てきたんですが、2人で頭をひねって出したタイトルが、およそ300くらいありましたよ。
その中で、最後に残ったのが『仁義なきマンガ教室』と『サルでも描けるまんが教室』の二つだったのです。なにしろ業界に対する嫌がらせみたいな作品でしたので、本当は『仁義なき』のほうが内容には会っていたんですが、略した時の語感が『ジンマン』より『サルマン』のほうがいいという、それが決定打となりまして、目出度く『サルまん』に落ち着いたのでありました。
それで時間が経てば経つほど、これが「いい言葉」に思えてきました。そもそも、頭から尻尾まで「パクリの嵐」である『サルまん』にあって、唯一オリジナルと呼べるものがこのタイトルであるのです(まあ、サルのセンズリにひっかけてはあるんですが)。今となっては、『仁義なきマンガ教室』にならなくて本当に良かった。あっちは所詮、映画のもじりに過ぎませんし。
このタイトルが素晴らしい証拠といってはなんですが、それこそ『サルまん』を発表した直後から、『サルでも…』というフレーズがあちこちでパクられまくったわけですよ。
『ネコでも…』とか『イヌでも…』なんてバリエーションを含めると、これまでどれほどパクラレたものか、見当もつきません。試みに、今ざっとアマゾンでタイトル検索してみましたところ……。
と、ネコの途中まで検索して力尽きました。たぶんウマとかイヌでもあるんじゃないかと思いますが、サルでも、検索にかからないだけでまだまだあると思います。
『サルまん』がマンガ界に与えた影響は、正直よくわからないんですけど、出版タイトルに与えた影響はとんでもないものがあるようです。問題は、タイトルに著作権は発生しないということなんですがね。どんなにパクられようとも、オリジナル著者としては指をくわえているしかありません。
しかし、清水ちなみからはできればパクリ料金をいただきたい気分です。
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コメント
福田和也の『バカでもわかる思想入門』を見つけたので追加しました。
投稿: たけくま | 2006/07/27 00:16
「サルまん」は、お笑い芸人や放送作家にも少なからず影響を与えていたと思います。内容がパクリでもおもしろければ(お笑い、ギャグでの意味)それでいいと思います。
投稿: ぷーすけ | 2006/07/27 00:18
サルマン自体はわりとロシアにはよくある名前かもしれません。当時プロレスラーのサルマン・ハシミコフも活躍されていましたね。
新日本プロレスにソ連軍団が参戦していたころで、サルまん連載当時は、もう凋落気味でした。
投稿: madi | 2006/07/27 00:31
『指輪物語』の白の魔法使いもサルマンでしたね。
投稿: MT | 2006/07/27 00:36
サルでも出来る編集者~が多いってことかなあ。
サルマネとは、よくぞ言ったもんだ。
投稿: 長谷邦夫 | 2006/07/27 00:39
無題 Name 名無し 06/07/26(水)23:14 No.2272698
>なんか妙にNHKがゲドをプッシュしてるけど、なんか裏があるの?
密着取材にプロフェッショナルで鈴木P紹介
日テレより今回力入ってる
投稿: | 2006/07/27 00:46
「超〜法」は「超」整理法(野口悠紀雄)が最初だと思うのですが、これも沢山ありますね。
投稿: やすし | 2006/07/27 01:00
I・Jさんは即「関係ないよ」と言いそう(ていうか言う)ですが、「平均よりはるかに下」という用法での「サル」はここから始まったのだと認識しています。
古本好きのオッサンが闘志を燃やして超マイナーな本を探し出しそうですね。楽しみ♪
投稿: kaoru | 2006/07/27 01:01
アメリカだとIdiot's Guideという
身も蓋もないタイトルのシリーズがありますな。
投稿: | 2006/07/27 01:09
あと多いのが「裸のサル」とか「パンツをはいたサル」みたいなタイトルですね。
投稿: たけくま | 2006/07/27 01:13
タイトルには著作権は無いけど「商標登録」ってのがありませんか?パソコン書の「できる~」とか「超図解」もそうですが。
投稿: けろぴ | 2006/07/27 01:24
「サルのセンズリ」のことだったのですか…
私はてっきり、連載当時話題になっていた『悪魔の詩』の著者、サルマン・ラシュディに引っ掛けたものとばかり思っていました。
投稿: さかまた | 2006/07/27 01:50
「悪魔の詩」はまったく関係ないです。
投稿: たけくま | 2006/07/27 01:52
>けろぴさん
ああ、商標登録。雑誌のタイトルなんかだと
やりますよね。
今からでもやっておこうかな(笑)
投稿: たけくま | 2006/07/27 02:12
アメリカには"〜 for dummyhead"って入門書シリーズがありますね。商業出版物としてのタイトルの実も蓋も無さではなかなかだと思います。
投稿: | 2006/07/27 02:25
7年くらい前に「サルでもできるインターネット(だったかな?)」という本を読んだら、
この「サルでもできる」シリーズは
私たちの商標ですみたいなことが書かれていて
ぶっ飛んだ記憶があります。
投稿: task | 2006/07/27 02:26
確認したら、間違えてました、for dummiesだった。
きちんと商標登録されてますね。
投稿: | 2006/07/27 02:27
あ、私「サルでもわかる相対性理論」買ってましたw
投稿: ○ | 2006/07/27 02:59
サルでもできる料理教室はウチで活躍中なゆえ
たけくまさんもぜひご購入を。
投稿: kere | 2006/07/27 03:45
セカチューも、相当大胆なパクリですね。
こんなに大ヒットして、訴えられたらどうするつもりなんだろうと、当時は思っていましたが、著作権は無いんですか?
納得しました。
オリジナルがあることを知らずに、エヴァ最終回からいただいたって話も聞きますが、本当のところどうなんでしょうね?
サルマンから数年後だったと思いますが、関西では『モーレツ科学教室』という深夜番組をやってました。
タイトルは『モーレツしごき教室』という番組からですから、サルマンは関係ないのですが、番組内容は影響されてたんじゃないかと思います。
↓こんな感じ。
http://www.hirax.net/diary_image/2004091404.jpg
京大前ですね。
面白い番組でした。
投稿: 腸 | 2006/07/27 03:46
amazonで「はじめの一歩」を検索するとちがうのがたくさん掛かりますよ
投稿: | 2006/07/27 04:02
エヴァ自体も色んなとこからのパクリです。
「世界の中心で愛を叫んだけもの」はハーラン・エリスンという人の著作だそうです(Wikipediaより)
ゲームのルールに知的財産権が与えられないのと同様、タイトルをつけるアイデアも知的財産で保護できないのではないでしょうか。これを許すと曖昧で一般化してしまうので逆に窮屈になると思います。
投稿: choi | 2006/07/27 04:23
>I・Jさんは即「関係ないよ」と言いそう(ていうか言う)ですが
あれは、『ウッキー君』(だったっけ?)のイラストを、
出版社に勝手に流用されたという話だったような…
『反省だけならサルでもできる』のコピーの方が、
早かった様な気がしたんですが、
アレは検索したら『1993年』でしたね。
>昭和52年に周防猿まわしの会が猿まわしを復活させた。
↑『猿まわし - Wikipedia』より
『猿回しの太郎&次郎』による『反省猿』の芸がおなじみになって、
出てきた言葉かもしれませんね、
『サルでもできる』という言葉は。
投稿: naga | 2006/07/27 05:10
サルマンは衝撃でしたね。
特にでかい編集長は最高でした。
三巻がどこの古本屋でも見つからず今でも探しています。
投稿: 漫画かぶれ | 2006/07/27 06:47
「さるマン」の由来は、島田紳助の「サルでもわかるニュース」からもじったのだと思いこんでいました。
「サルでも」という表現は、語感もイメージもわかりやすくていいですね。
でも、いしかわじゅん先生の「だサル」は、さすがに別物なのでは……
(how toでも解説でもないので……)
投稿: 西麻布 夢彦 | 2006/07/27 08:26
ばかでもちょんでも、の変形だと思ってました。
勘違いされる方が多いので書いておきますが、「ちょん」は取るに足らないとか、頭の悪いなどといった意味です。
投稿: GTR | 2006/07/27 09:25
「反省だけなら猿でもできる」という有名なCMのコピーの影響も無視できないのではないでしょうか。
投稿: すずき。 | 2006/07/27 13:04
と、思ったら、そのことをコメントされている方が、既にいらっしゃいますね。
投稿: すずき。 | 2006/07/27 13:06
昔、I/Oに「サルでもできるクロックアップ」って記事を投稿しました(笑。なつかすい。
投稿: けにー | 2006/07/27 15:13
パンツをはいたサル、は栗本真一郎の著作ですよね、しかも80年代初頭の...。
投稿: | 2006/07/27 20:30
「サルでも」も昔からある「だれでも」の派生と考えると、最初に「だれでも」を付けた人に「・・・でも」の権利があるのではないでしょうか。
投稿: ユウ | 2006/07/27 22:23
まんがではないのですが、ラッパのマークの正露丸のそっくりさん訴訟の結末にございます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060727-00000181-kyodo-soci
投稿: Aa | 2006/07/27 22:45
夏目さんのブログ「July 25, 2006 マンガ編集者講義・倉持さんのお話メモ」で、萩尾望都『ウは宇宙船のウ』のエピソードが紹介されていました。翻訳作品のタイトルをそのまま使ったら、翻訳者から抗議がきたとのこと。
むかしの海外小説や洋画のタイトルって、もともとの題名とえらく違っているケースが多いですもんね。この手のトラブルは、確か「赤毛のアン」の松本侑子訳が出たとき、確か村岡花子側(新潮?)からクレームがあったというのを新聞記事で見たことがあります。
で、一番気になるのが、谷川俊太郎『夜のミッキーマウス』。これは、例の団体から許諾は得ていたのでしょうか……
投稿: も | 2006/07/28 00:01
タイトルも確かに素晴らしいのですが、
連載当時はオチの決め台詞の「また一歩野望に近付いた」
が好きで、私も含め周囲で流行りました。
あれはオリジナルですか?
投稿: ぐりぞう | 2006/07/28 00:24
「指輪物語」の映画版タイトルが「指輪物語」でなく「ロードオブザリング」になったのはタイトルにまつわる版権がらみだと聞いたことがあります。翻訳タイトルには特殊な権利が認められているのでしょうか?(村上春樹訳の「キャッチャーインザライ」も同様の経緯でこのタイトルになったと聞きました)
投稿: むむむ | 2006/07/28 00:56
1983年ごろだと思いますがアニメックにゼネラルプロダクツ(岡田斗司夫と武田康廣)の連載ページがあって、「バカでも判る2001年宇宙の旅」という企画があったので「サルまん」でそれを思い出しました。
しかも『2001年』ですから、サルが出てくるわけです。
それもあって余計に連想させてしまいました。
でも、『サルまん』は単行本発売当時熱狂的に読みましたしオリジナリティはあると思ったなあ〜
作者のお二人に、漫画への強いこだわりみたいなものを感じたので、それが個性的だったのだと思います。
投稿: ひむら | 2006/07/28 01:04
安野モヨコさんがブログで「美人画報」というタイトルを雑誌名に流用され事後承諾せざるを得なかったと嘆いていたのを思いだしました。
タイトルくらいは自分で頭を絞って付けたほうがいいと思いますね。それこそ自分が流れを作ってやるくらいの意気込みで。
投稿: bki | 2006/07/28 03:10
タイトルに関しては基本的に著作権は認められないようです。ただし、自分が付けたタイトルを他人が勝手に改変はできない(著作者人格権)ことは認められています。
http://www.cric.or.jp/qa/sodan/sodan6_qa.html
たまにタイトル使用をめぐって原作者や翻訳家が訴えたとかいうことを聞きますが、これは勝手にクレームをつけて、使用者側が勝手に謝ったものと推察できます。あるいは、不正競争防止法で訴える事例が考えられますが、俺の知る限り、作品や単行本のタイトルで裁判になったことはあまりないはずです。
投稿: たけくま | 2006/07/28 03:23
「裸のサル」に関しては原題も"The Nakid Ape"ですし、さすがにデズモンド・モリスが「サル漫」を知っていたとは思えないのですが...
投稿: | 2006/07/28 04:25
↑いやそういう意味で書いたのではなくて。
『サルまん』以前によくあった「サル」絡みのタイトルは、モリス式の「○○のサル」というタイトルだった、という意味です。
投稿: たけくま | 2006/07/28 05:10
いしかわじゅんの「だサル」が入っているのはちょっとかわいそうだと思いました(笑)
投稿: mgkiller | 2006/07/28 10:12
商標に関してですが、継続的に発行される雑誌等以外では書籍のタイトルの商標登録は認められていなかったはずです。理由はタイトルを独占させれば実質的に著作権の延長と同じことになるから、とのこと。
投稿: | 2006/07/28 12:47
こんにちは。猿でも〜
を初めて使ったのは福沢諭吉先生ではないでしょうか?
「わたしは猿でもわかるように書いている」
投稿: magics | 2006/07/28 14:32
ヒトの世界だけでなく、サルの世界でも、世代を重ねるごとに社会の成員の劣化が顕著にすすんでいるようですからね。おそらく、黄昏ているのはヒトの文明だけでなく、霊長類全般なのでしょう。霊長類が万物に君臨する時代は終わりつつあるということなのでしょう。つぎに君臨する生物は何なのでしょうね。
福沢翁の時代までのニホンザルはほとんど読み書きができて、識字率が非常に高かったようですからね。ヒトの子といっしょに寺子屋に通っていた例さえ各地にあったそうです。いまでは信じられませんよね。ヒトの大人でさえ動物園に収容しておくべき例でみちあふれていますからね。
投稿: | 2006/07/28 16:24
いつの間にか一般的な言葉として定着してしまうほどの造語を創れた作者の気持ちってのはどういうもんなんでしょう
誇らしさが上回る?それとも俺がオリジナルなのに!
ってかんじでしょうか、「仕掛人」を作り出した池波正太郎
なんかはどんな感想を持ってたんでしょうね。
投稿: がんま | 2006/07/28 23:45
旧版三巻とも持っています。
三巻目ともなると失礼ながらネタも切れてきて
全体的にグダグダになっておりましたが、
もっとも面白かったページが
「サルまんは俺たちの青春だった!」と
「サルまんは俺たちの青春を奪った!」の
コンビ企画でした。
後者はとくに、目次にも乗せないなど、
かなりゲリラ的企画なところがすばらしかったのですが、
全部計算済みの企画なんですよね?まさか本当に
著者のあずかりしらぬところで企画されたものだということはないですよね?
この「サルまんは~」二編は今度の新装版には
収録されるのでしょうか。すごく気になります。
投稿: サウロン | 2006/07/29 00:53
↑もちろん載ります。
投稿: たけくま | 2006/07/29 01:38
今度のも買います。絶対。
投稿: サウロン | 2006/07/29 22:19