「現代漫画博物館」が出ました
かねてから出るぞ出るぞと噂されていた『現代漫画博物館』が、ついに出ました。発売元は小学館であります。
扱う対象は1945年から2005年までの漫画、そこから約700作品を厳選して紹介しています。いわば時代時代を象徴する作品で綴った戦後漫画史と呼べる内容。全作品の図版も豊富に収録されてます。巻末に「作品索引」「作家索引」、別冊付録で「漫画史年表」「作家解説」がついているのも実用性が高いです(資料集である以上当然だが、意外にこういう部分がしっかりしてない本が多い)。
こういう仕事は漫画への広くて深い知識・見識が必要になるうえ、ひたすら手間暇がかかる地道な作業です。しかも「この作品が入って、なぜあれが入らない」という読者のクレームも覚悟しなければなりません。
しかし、日本文化として漫画を位置づけることがすでに常識になっているにも関わらず、公的なライブラリー整備が不十分な現在、こうした全貌を見渡すことのできる書籍はまだ貴重な存在といえます。
となると問題は監修者の質ですが、本書は竹内オサム・米澤嘉博・ヤマダトモコの各氏が監修しています。そう、実はこの本、先日亡くなった米澤氏の、単行本としての遺作でもあるのです。
思えば、米澤氏が平凡社で編集したムック「子どもの昭和史」シリーズは、俺なんか大学の講義のアンチョコとして今でも重宝しております。戦後漫画を概観するうえでの超一級の資料であり、なによりも取り上げた全作品のカラー図版を載せているのが他に類を見ません。こうした本は誰にもできるというものではありません。単に資料に強いというだけでなく、ひろく文化全般に関する見識がなければできないのです。
この『現代漫画博物館』は、各半ページを使って取り上げた作品の図版(1ページぶん)を載せ、簡潔な解説文で紹介するスタイルをとっています。眺めるだけでも楽しい本なんですが、こういうのって俺もやったことあるけど、膨大なページ数の中からどのページ(図版)を選ぶかでとんでもなく苦労するんですよ。図版はどれでもいいわけでなく、その作品の本質を表しているものでなければならないですから。そして短い文章で説明を入れることも難しい。結局、すべて選者の見識が問われることになります。
定価が定価ですので、誰にでもお勧めできるというわけにもいきませんが、一般の人も読んで面白い内容になってます。そしてこれから漫画をテーマに卒論に取り組む学生などには、必携ではないかと思います。アルバイトなら1日分のギャラで買えます(その価値はあります)。
ちなみに、700作品の中に『サルまん』も取り上げられてました。感謝。
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コメント
>700作品の中に『サルまん』も
なるほど~
投稿: Aa | 2006/11/12 10:59
その作品の本質を表している図版ってむずかしいですね。江口寿史さんなら(取り上げられてるかどうかわかりませんが)図版を真っ白にしたほうが本質をついてるかも知れません。成田アキラさんなら「僕が後家殺しの指技で彼女の○○を」とかそういう図版を・・
投稿: うりゃうりゃ人 | 2006/11/12 11:37
こうした貴重な本が出ることはたいへん結構なことだと思います。
しかし、いろいろと考えてしまいますねえ。再販制度の害悪が言われていますけれど、中小企業ばかりの出版業界ですのである程度資本の裏づけが無いと「数は期待できない貴重な本」を作ることができなくなってしまう。
経済のグローバル化に習って数が売れる本しか出版できず、出版しようにも単価が高くなって買う人がいなくなることになり、出版文化が終わるわけで。
そうすっとネットか?
と言いたい所ですけど、イット屋のはしくれとしては、そうは簡単じゃなさそうです。
ネット上の情報は結構簡単に移ろいますのでね…
投稿: nomad | 2006/11/13 02:17
「サルまん」のサンプルカットは、
どのシーンになったのだろうか?
やはり、
「ちんぴょろすぽーん!」かな。
もしや
「俺を描けーい!」かッ?!
ちょっと楽しみだな。
投稿: エイジロー | 2006/11/13 03:04
↑いや、わりと意外なカットでしたよ。
投稿: たけくま | 2006/11/13 03:13
サルまんの使用されているページかあ。
気になるなあ。
でも二人でいろいろと議論している場面で、なおかつ、解説カットが入っているページが無難ですかね。
投稿: からす | 2006/11/13 10:57
昨日立ち読みしたのですが、
正直こういうことを紙ベースでやる
限界を思い知らされました。
値段が高い。
重い。
収録されてる漫画家の質はともあれ
数が少ない。
意義は感じましたけど。
投稿: そ | 2006/11/13 12:22
アマゾンから今日、たけくまさんのブログから注文した本書が届いたのですが、
正直、収録作品数が少なすぎますね……。
各作品の引用ページも、適当に選んだ感が強いですねぇ。
うーん、がっかり。
少なくとも、「博物館」と呼べるほどの代物ではありませんでした。
ただ、ほどよい厚みがありますので、
憎き相手の頭部を殴打して外傷を残さずに
脳にダメージを与える事に関しては有用かと思われます。
投稿: 中村る~しあ | 2006/11/15 22:12