吉祥寺アニメ祭受賞結果報告
土曜日に行われた吉祥寺アニメ祭の結果報告です。遅れてすいませんが昨日は吉祥寺に泊まったので更新できませんでした。
■第三回吉祥寺アニメーション映画祭2007 受賞結果報告
◆一般アニメ部門
●グランプリ
「THE CLOCKWORK CITY」 加藤隆
加藤隆さんは多摩美出身のアニメーション作家であちこちのコンテストで入賞している実力派です。この作品は24分と長いですが、長尺を持たせる画力と演出力が高く評価されました。お話は管理社会を風刺したもので、やや図式的ではあるんですが一般のお客さんにもわかりやすい作品になっていると思います。これはもともと卒業制作に作っていた作品らしいんですが、卒業してから完成させたものだそうで。これだけの作品をコツコツ作っていったのは大変なパワーだと思います。
※誤解を受けそうなので訂正。加藤氏は多摩美出身なのは間違いないですが、その後東京芸大の大学院に進み、多摩美時代に短篇として制作したこの作品を大学院の卒業制作として長時間版に作り直したものが今回受賞した24分版だそうです。
●優秀賞
「吉野の姫」 丸山薫
これも隣町の三鷹アニメ祭をはじめあちこちで受賞していてすでに有名な作品なんですけど、群を抜いた秀作なので入賞は文句なしでした。太平洋戦争末期の日本を舞台に、出征する兄と兄の無事を祈る幼い妹のために、お転婆でワガママな桜の精が桜に花を咲かせようとするお話。作画レベルも高い感動作なのですが、「早く新作を作って応募してほしい」という声もあがり、あえてグランプリではなく優秀賞になりました。打ち上げで丸山さんにお会いしましたが「新作はまだです」とのこと。二年前のこの作品ですでに九つも受賞しているんですから、いいかげん新作を作りましょう(公式サイトを見るといろいろ仕事してるみたいですが)。
http://maruproduction.com/index.html
↑丸山薫公式サイト
http://maruproduction.com/flash/yoshino.html
↑吉野の姫
●審査員特別賞(二本)
「The Dream in the dream」 杉殿育恵
審査員全員が好感を抱いた作品ですが、今一歩及ばず審査員特別賞になりました。とにかく絵がオシャレで可愛く、一週間の出来事を描いたストーリーもリズムよくまとまっています。好きな人はとても好きになる作品だと思います。
「PRESENT」 翠緯泰
人形アニメ。造形やアニメートだけではなく撮影とライティングの完成度がとても高く、審査員の氷川竜介さんから感嘆の声があがっていました。個人の人形アニメでこの完成度はなかなかないです。お話にもう少しヒネリがあればよかったかな。
●スタジオ4℃賞
「Birthday」 半崎信朗
吉祥寺にあるアニメスタジオ4℃では、CGスタッフを中心にこの作品が圧倒的支持を集めたようです。
●コアミックス賞
「かにねずみ」
グラフィックはいかにも学生作品風の3DCGで、ちょっと見弱い感じなんですが、じっくり見るとホロリとさせるいいお話なんですよ。
◆一発ギャグアニメ部門
「将棋アワー」 青木純
この春まで東京芸大の学生だった青木純さん、彼のサイトを見るとすでにかなりの作品数があり、どれもがギャグ作品、しかもレベルが高いので驚かされます。娯楽性もバッチリなのでもう売れ始めていて、ちょうど今、NHK『みんなのうた』のアニメを担当したりしてます(11月まで毎日放映)。この将棋アワーはすでに彼のサイトにアップされており、俺知ってたんですが、ギャグセンスが完成されてて安心して笑えます。NHKの将棋番組のパロディで、一見地味で長い作品なんですが「地味さ」「長さ」がこの場合ギャグの要素になってます。(※ニコニコにアップされてたのでそれを貼ります)
http://www.aokijun.net/
↑青木純公式
http://www.aokijun.net/movie.html
↑青木純ネットアニメ(将棋アワーも試聴できます)
…とまあ、以上が結果です。「一発ギャグアニメ部門」は一分程度の作品を想定してたんですが、最初の受賞がいきなし8分近い『将棋アワー』で、早くも時間制限はなし崩しになってしまいました。次回からは「一発ギャグ」ではなくただの「ギャグ部門」になると思います。
ギャグ部門は俺の強い希望で設立しました。昔から、こういう公募賞を見ていて思ったことは、たとえば「シリアスな力作」と「力作だがバカアニメ」があったとすると、どうしてもシリアスが受賞する傾向が強いんですね。これは審査員をして改めて痛感しました。
それで、ギャグはギャグできちんと評価しようということで部門を分けてみたわけです。「笑えること」は、それはそれで価値ですからね。ただ今回、本人にギャグのつもりはないと思うんですが『恋戦士ラブコメッサー』という作品があまりの完成度ゆえにギャグ部門にうっかりノミネートしてしまいました。
どういう作品かというとちょっと言葉では説明できないんですが、壮絶な作品です。どのくらい壮絶かは、写真を載せますので参考にしてください(図)。これがアニメで動く! それも30分以上あるんですよ! 主題歌も、ちゃんと作詞作曲してあって、たぶん監督本人が歌ってます。
俺が思うに、ジブリ、ピクサー、IG、4℃、マッドハウス、スタジオカラーでもこればかりは作ることができない作品だと思います。たとえ予算が何億円あっても無理でしょう。作者は応募名だと違う名前(伊勢田勝行)でしたが、作中のテロップには「監督・湯水邦彦」とあります。とにかく衝撃作で、俺はおととい半日ばかりこの作品のことで頭がいっぱいになってしまいました。しかし、すんでのところで賞をあげるのは思いとどまりました。
思うに、これはニコニコ動画向きだと思うので、作者の人はぜひ、一刻も早くニコニコにアップしてください。当日、湯水監督の友人が会場に来ていたんですが、湯水監督は神戸在住で、しかもパソコンを持ってないんだそうです。友人の方でいいですから、ぜひ監督を説得してニコニコにあげてください。アフィリエイトで「恋愛占い」とかつければお小遣い稼ぎになるかもしれません。
http://www.kichifes.jp/animation/news.html
↑吉祥寺アニメ祭公式サイトより
http://animeanime.jp/news/archives/2007/10/3_4.html
↑アニメアニメ に載った吉祥寺アニメ祭評。
それで昨日の14日は吉祥寺美術館で俺と湯浅政明監督のトークショーがありました。監督が参加したスタジオ4℃のオムニバスアニメ『ジーニアス・パーティ』の制作裏話や、監督のイメージボードやコンテなどを見せながら進めるトークは大変勉強になる話ばかりでした。
http://www.kichifes.jp/wonderland/home.html
↑吉祥寺アニメワンダーランド公式
http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/
↑「ジーニアス・パーティ展」案内
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