『議論のルールブック』が出た!
昨年「たけくまメモ」で紹介した、岩田宗之(iwatam)さんの傑作コンテンツ「議論のしかた」が、徹底改稿を経て『議論のルールブック』として新潮社から本になりました!
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/post_d18d.html←たけくまメモ「議論のしかた」
昨日新潮社から送られてきて、とりあえずざっと目を通しましたが、オリジナルサイトのエッセンスはそのままに、論争の具体例が豊富に参照されていて、読んで面白いばかりか会議や討論の現場で「使える」内容になってます。新書なので読みやすいし。
岩田さんのサイトを最初に読んだとき、何が正しい議論なのかを理路整然と示す著者の力量に、ビックリしたことを憶えています。読みながら「これは本になる!」と編集者的な興奮を抱いたことは滅多にない体験でした。
岩田さんは、ネットや会議での議論がすぐ脇道に逸れたり、感情論に陥ってケンカになったり、冷笑や皮肉の言い合いになったりして、なぜ不毛になってしまうのか? をものすごく根源的に考えて「議論のしかた」を書いたようです。
それで、知り合いだった新潮社のGさんに即刻、「これ新書向きの内容ですよ!」と興奮してメールを打ったら、Gさんから「早速著者の方に出版を打診しました」との返事が。実はそのまえからGさんとは俺の本の話をしていたんですけど、俺がまごまごしているうちに岩田さんのほうが先に出てしまいました……。
本来議論というものは相互に新しい認識を得て、建設的な結論を導くためにやるものなのですが、多くの人は「相手を言い負かすことが議論」だと勘違いしている。ではどういうものが正しい議論なのかは、本書を読めば全部書かれてあります。オリジナルの「議論のしかた」からして、ものすごく論理的な構成でしたけど、この『議論のルールブック』はさらに読みやすさがグレードアップしており、目次を見ただけでその構成の見事さがわかると思います。
●議論のルールブック 目次
まえがき
Ⅰ 議論の破壊者たち
1 感情論に振り回されない
感情論とは何か/言葉は伝わらなくて当たり前/感情論を避けるための原則
2 インチキ理論を振り回す人たち
インチキ理論にはパターンがある/インチキ理論のパターン/科学絶対主義の問題/インチキ理論への対処法
3 冷笑主義者にご用心
冷笑主義にもパターンがある/冷笑主義者のパターン/現代のソフィストに注意/冷笑主義者への対処法
4 匿名という問題
匿名の種類/不特定多数を相手にするということ/相手が特定できないということ/匿名だとなぜ言葉が汚くなるのか/「教えて君」の問題/相手との距離の取り方/ブログ炎上のメカニズム/匿名問題の背後にあるもの
Ⅱ そもそも議論とは何か
1 議論の定義
なぜ議論は炎上するのか/議論とは「話を聞くこと」である/議論で得られるものは「違う視点」である/議論の形態/議論に勝ち負けはない
2 客観性とは何か
「客観的」とはどういうことか/正しいことと納得できること/「やってみなければ分からない」わけではない/結果より過程/「仮説と検証」の意味/議論とは反証探しの繰り返し/オッカムの剃刀/検証の代償とは/「公理」とは何か/客観性の意味
3 正しさの相対性
「正しさ問題」を考える/「正しさ」に関する問い/答えのタイプ/メタ議論/正しい答えとは
意見とは何か
主観的な事実認識の意味/主観的な意見とは/主観的な正しさ/自分の意見には自信を持つべき/相手の立場に立つ/評価と価値観/主観的な議論の結論/意見を主張する意義
Ⅲ発言者の心得
1 発言の自由とは何か
議論の場では何でも言える/自由とは何か/「発言の責任」とは何か/議論の「ルール」とは何か/「無視」は悪いことか
2 謝罪とは何か
謝罪要求に意味はあるか/謝罪教唆は許されるか/発言の削除とは何か/自由と自己批判
あとがき
ネットワーカーのみならず、学校の討論や会社での会議で、いろいろ悩みを抱えている学生やサラリーマンにも必読の本だと思います。
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