あの「イボグリくん」が復刻!
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山上たつひこの70年代最高傑作『イボグリくん』が小学館クリエイティブから復刻されました。本当はもっと早く書評すべきでしたが、今からでも遅くないので欲しい人はぜひどうぞ。
ただし書名は『イボグリくん』ではなく『能登の白クマうらみのはり手』という別短編のタイトルになってます。(もともと「イボグリくん」自体が正式タイトルではなく、シリーズ一本ごとに全部別のタイトルになっているんですが)
もちろんこちらも傑作ですが、俺が大ファンの「イボグリくんシリーズ」は、全部が収録されています。山上たつひこという「伝説のギャグマンガ家」がいったいどれほど凄かったのかは、代表作の『がきデカ』を読むより、この短編集を読むのが一番わかりやすいでしょう。まず現在では商業誌に掲載不可能ではないかと思えるような過激ギャグのオンパレードです。
『イボグリくん』は、『イガグリくん』という、山上さんが子供時代にヒットしていた柔道少年マンガのパロディなんですが、元ネタを知らないと笑えないような、よくあるパロディ物ではありません。実際俺がこれを読んだのは高校時代で、生まれる前の作品である「イガグリくん」を読んでませんでしたが、そんなことは関係なく大爆笑しました。
どんな内容かは、とにかく狂っているとしか言いようがありません。イボグリくんは一見明朗快活な柔道少年なんですけど、ニコニコと微笑みながら通りすがりの人を殺し、女性を強姦し、ライバルを拳銃で射殺します。
ものすごい極悪非道なんですが、本人は次の瞬間には自分のやったことを忘れてしまい、良心の呵責もなくただニコニコしているのです。『がきデカ』のこまわりくんも相当なものでしたが、それでも次の瞬間には周囲のクラスメートがドツキを入れて突っ込むことで「笑い」として着地させていました。
『イボグリくん』の恐ろしいところは、ツッコミが存在しないことで、主人公の狂気が最初から最後まで全開だということです。俺はこれまでの人生で、ここまで恐ろしいギャグマンガを読んだことがありません。
『イボグリくん』は、おそらく山上ギャグの頂点だと思うんですが、あまりにも異常すぎて、これをギャグだと認識できない読者がいるのではないかと心配してしまうくらいです。でもマンガですので、読んでも死ぬことはないですからご安心ください。
なお小学館クリエイティブでは、江口寿史氏監修のもと、山上ギャグの傑作選をシリーズで刊行していく予定みたいです。楽しみですね。
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