健太郎、箸を使え箸を!
おひさです。「父と暮らせば」シリーズ最新作です。イヤ別に新作ってのもヘンなんですけど。このシリーズでお届けするのは、俺と父親の共同生活の中で俺が見聞きしたもので、すべて事実であります。
それで一緒に生活していると、必ずぶつかるというか気になるのが「食事どき」の問題ですよね。食べ物の好き嫌いとか、マナーとか。この「父と暮らせば」でも、考えてみればずいぶんと食事どきの問題をお伝えしたように思います。俺が焼き魚をパックで買ってくると、やたらと「これは温めるのか?」と聞いてくるとかですね。
それで「温めるのか?」と聞いてくるのは相変わらずなんですが、本日も親父の好物について書きたいと思います。過去にも、セロリとかサバの味噌煮とか、俺はそうでもないけど親父にとっては大好物の話を紹介してきました。
今回紹介したいのは「フライドチキン」です。それもケンタッキーみたいなしゃれたものではなくて、スーパーで売っているパック詰めのフライドチキンがあるでしょう。それもひな鳥みたいに小さい骨付きのが数羽ぶん入っているやつ。親父は、よくあれを買ってくるんですよ。俺、あれが食いづらくてねえ。ナイフとフォーク使うのも、箸つかうのもまどろっこしいので、もう手づかみでムシャムシャ食べるんですよ。
そしたら親父が
「うわっ」
と叫んで、「箸を使え箸を!」と怒鳴るわけです。でも骨付きチキンなんて、箸でも食べづらいですよ。それで俺が
「いつも父さんはこの大きさのチキン買ってくるけど、手づかみが一番いいよ。ケンタッキーみたいにペーパータオル使うにしても、これだけ小さいとかえってジャマだよ。手で食べてから、水道で洗えばいいじゃないか」
と俺は言うんですが、すると必ず「脂がついてから洗っても手遅れだ!」と答えてくるわけです。どうも要領を得ないというか、話が噛み合いません。
「手遅れって、何がだよ? 洗えば落ちるよ」
「お前は、手に脂がつくことが耐えられるのか? 気持ちが悪いやつだな」
と、ここまで聞いて、ああなるほど、父親は「手に肉の脂がつくことが嫌い」なのだと分かった次第です。指にあのヌメヌメとした脂がつくことが生理的に耐えられないみたい。それで腑に落ちました。以前俺がケンタッキーフライドチキンを買ってきたときも、「なんだこの脂は」と顔をしかめていましたし、俺が好きなシーチキンや、マルシンハンバーグなども、親父がいまいち好きでなかったのは「調理の過程で脂が指につく」可能性があったからでした。
マルシンハンバーグって、袋からナマのハンバーグ出してフライパンに移すときに手でつかんだりするじゃないですか。そのときハンバーグの脂が手につく、あれがイヤだったんだなあと。
それで、親父は「他人の手に脂がつくのを見る」ことも生理的に耐えられないみたいなんですよ。だから俺に「箸を使え」とやたらと強制してくるのだけれど、骨つきチキンのように、箸を使うとかえって食べにくいものもある。ああそうか、それで親父はケンタッキーが嫌いなんだ。あれは大きすぎてまったく箸が使えないから。しかし、まあ、
「お前は非常識だな。あとで手を洗えばいいなんて、野蛮人のすることだぞ。せめて、ティッシュを使え。2枚では足りん。3枚重ねで使うんだ! ああ、ほら脂がテーブルに落ちたぞ! なんてことするんだ馬鹿者!」
とか、もう骨付きのチキンがテーブルに並んでいると心臓に悪いですよ。しかしこんなに神経が細かい人とは思わなかったな。母親が生きていたときは、まったく気がつかなかったです。そのときは、母親が父を怒鳴っていたから。
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