コミックマヴォVol.5

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2008/09/21

続・オタクはいつから差別されていたのか?

昨日、ミクシイのメッセージでDさんという方から、「アニメマニアについて扱った、古いテレビ番組をネットで見つけました。これについて伺いたいことがあります」と、ニコニコ動画のURLを送ってきました。そのURLが以下のものです。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1541995
↑ニコニコ動画「元祖腐女子・高画質版」

これは1983年3月12日(おそらく)の「ズームイン朝」からのもので、前半が劇場アニメ『クラッシャージョウ』初日に前日から徹夜した若者たちにマイクを向けたもの、後半が前年開店したばかりの大阪のSFマニア・ショップ「ゼネラルプロダクツ」に訪問取材しているものです。

店内には1981年制作の「DAICONⅢ」のキャラクターグッズが映っています。これを制作した団体が今のGAINAXの前身であるDAICON FILM。これとゼネプロの代表はどちらも岡田斗司夫氏で、ご本人がインタビューを受けています。もう25年くらい前なので、当然若いですが、今とは体型もまったく違うので完全に別人みたいです。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%BC%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%80%E3%82%AF%E3%83%84&oldid=20324887
↑wikipedia ゼネラルプロダクツ

岡田氏のインタビュー部分だけ抜粋したものが、youtubeにもアップされています。ニコニコが重くて見られない人は、こちらをどうぞ。(なおテレビ録画からアップロードされたものなので、削除される可能性もあります。その際はご容赦を)

http://jp.youtube.com/watch?v=mTwZIvEHcU8
↑youtube ゼネラルプロダクツ

大変、懐かしく見ましたけれども、この動画をなぜわざわざ紹介するかといいますと、Dさんが俺に質問して来たからです。メールをそのまま載せるわけにはいきませんが、こういう質問でした。

《 私は、オタクはずっと差別されてきた、メディアでオタク的なものを取り上げるときは必ず、嘲笑的なニュアンスが含まれていると思っていたのだが、この動画を見た限りでは、オタクをバカにするニュアンスがほとんど感じられない。アニメの公開日に劇場前で徹夜していた若者に対しても、学校をサボるなどの反社会行為を諫めてはいるものの、アニメを見る行為じたいを批判したり、嘲笑しているわけではない。これは自分には驚きだった。いったいいつから、アニメを見るオタクや腐女子に対して「気持ち悪い」等の侮蔑的・嘲笑的ニュアンスが含まれるようになったのか。竹熊氏の意見が聞きたい。(大意)》

というものでした。おそらくDさんは、俺よりずっと若い世代なのでしょう。なので、「オタクは最初から差別されていた」という思いこみが強かったのだと思いますが、俺がこのブログで再三書いてきたように、80年代までは、90年代以降のような「オタク差別」は、少なくともマスコミレベルでは見られなかったのです。以下が、Dさんに書いた、俺の返事です(若干書き加えています)。

《>Dさま
いい質問です。

私が知る限り、オタク差別は1989~90年の宮崎勤の連続幼女誘拐殺人事件以降に顕在化したものです。そこから「はじまった」といっていいかもしれない。

しかしはじめて「おたく」という言葉を今の意味で使った中森明夫氏の「おたくの研究」(1983年)というエッセイは、たしかに「コミケに行くと、こんなにキモイ奴がいる」という内容で、表現も非常にきつく、明らかに「おたく差別」を狙ったものでした。

でも当時は、たとえば渡辺和博の『金魂巻』(84年)で金持ちをマルキン、貧乏人をマルビといって「サベツ」したように、「あえて差別的な表現を使う」ことは、若者雑誌では一種のトレンドでした。これはもちろん、日本が豊かになって本物の貧乏が表面上ほとんどなくなっていたからこそ成立した冗談です。中森氏もこういう風潮の中であのエッセイを書いたわけで、「キツイ冗談」であることは明白でした(俺もこのエッセイを大笑いして読んでいた)

しかもあのエッセイは「漫画ブリッコ」という「オタク向け」美少女マンガ
雑誌に連載されたもので、当の中森氏はアニメおたくではなかったですがアイドルオタクであり、いうなれば「オタクがオタクに向けて書いた自嘲エッセイ」として理解すべきものだと私は思っています。

あのエッセイの影響で「オタク」という言葉はオタクの間でものすごい勢いで広まったと記憶しています。しかし、この言葉を使っていたのは「オタク」だけであり、世間は、宮崎事件が起きるまでこの言葉を知らなかったのです。

宮崎事件が起きたとき、数千本のビデオテープに埋もれて生活する犯人の異様さを、どう呼べばいいのか苦慮していたマスコミは、そこで初めて「オタク」という語をオタクの外部から使い始めて、ようやくこれが「差別語」として定着したものだと私は考えます。

それまでにも「キモイ人」はいたわけですが、それは「ネクラ」と呼ばれていて、アニメやマンガ趣味とは特に関係はない言葉でした(文学青年もネクラだった)。だからDさんが示された映像で、アニメ・マンガマニアがネガティブな意味でとらえられていないのは、80年代には普通のことだったと思います。

それまでにも、オタク第一世代の被害者意識があったとすれば、それは「俺はキモイと世間から思われているのではないか」という「自意識過剰の被害妄想」に近い物だったと思います。80年代に「オタク」をやっていた私自身の経験から、そういう結論に達しています。私の知る限り、80年代までには具体的・意識的な形での「おたく差別」は存在していませんでした。》

以上が俺の返答ですが、これは今までにも折りに触れて書いていた俺のオタク差別についての見解をまとめた物です。詳しくは、以下のURLを参考を参照してくさい。

http://www.burikko.net/people/otaku.html
↑中森明夫「おたくの研究」原文紹介ページ

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_10.html
↑中森明夫「おたくの研究」をめぐって(1)

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_38c2.html
↑オタクはいつから差別されていたのか?

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_7bb2.html
↑オタク第一世代の証言から

上の「オタク第一世代の証言から」は、俺より少し年上の氷川竜介さん(アニメ評論家)やボタQさん(マンガ編集者)の証言が載っていて貴重だと思います。この方たちの意見は俺の「オタクという言葉は自嘲語」というのとは少し違っていて、「アニメファンやマンガファンの中でも、やはり常識を欠いた困った連中がいる。そういう困ったちゃんをどう呼ぼうかと思っていたところに“おたく”という言葉が出てきた」とおっしゃっていることです。

なるほど、そう言われると俺にも思い当たる節がありますので、これを自嘲で使っていた俺みたいなのは、例外的かもしれません。「マニアの中の困ったちゃん」を「オタク」と呼ぶというのは、中森氏の『おたくの研究』もそう読めなくもないので、やはりこれが「差別語」であったことは間違いないようです。

ただそれは氷川さんが言うように「ゲットー内ゲットーの差別語」というわけで、ゲットー(マニアの世界)を離れた一般社会では、宮崎事件の前まではオタクという人種がいるなどというのはほとんど知られておらず、宮崎事件によってはじめてこれが「外部からの差別用語」として使われ、広まり始めた、ということは間違いがありません。

90年代以降に思春期を迎えた若い世代んには、「オタク」即、「世間から嘲笑される対象」と考える人が多いようですが、この言葉が生まれた80年代まではだいぶニュアンスが違っていて、テレビなどではオタクという言葉もおそらく知らず、従って「オタクはキモイ」という概念もほとんどなかったわけです。

そのことを、Dさんの疑問と、「ズームイン朝」の動画がはからずも教えてくれました。Dさん、メールいただいてありがとうございました。

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