「僕もお金を燃やしてみました」(2)
T・Mさんは焼いた1万円札を俺に送ってきて、さらには焼却する一部始終の映像を自由に使ってくれと送ってきました。俺はそれをyoutubeに載せることを予告までしたんですが、これはある意味でとても「キツイ映像」であり、ネットでの反応がどうなるか予測できない部分があると判断しまして、掲載中止することにしました。
メールの文面から考えて、おそらくT・Mさんにはそこまで世間を騒がせる意図はなかったと思われます。それは俺が彼の行為の感想として「連鎖自殺で中央線に身を投げる人」「タイガースの優勝で道頓堀に飛び込む阪神ファン」と返事を書いたことに対して、「ショックを感じる部分があった、ような」と答えたことからもなんとなくわかります。
確かに俺はダダカン師の「お札焼却儀式」に感銘を受け、究極のコンセプチュアル・アートとして賞賛した記事をブログで書きました。それに対してT・Mさんは「別にそれほど大したことではない。燃やそうと思えば簡単に燃やせた」と映像を送って来られたように思いました。
結果的に俺のエントリには、「できるものなら、やってみろ」と「煽動」していた部分があるのかもしれず、しかしそれは物がお金ですから、結局誰も真似できないだろう、とたかをくくっていたところがあったと思うのです。しかしその結果、本当にお金を燃やされてしまうと降参するしかないのですから、ザマァありません。
つまり俺の文章にはそうして「誰もできないような行為を煽動」することで、翻ってダダカン師の行為を「すごいこと」として特別視させる意図があったと思うのですが、T・Mさんの動画は、俺のそうした意図を軽々と「批判」しているようにも思え、お札を燃やした行為そのものより、そちらのほうが俺にはショックがありました。
ともあれ、お札にライターで火を付けるT・Mさんの映像は、淡々としているだけに「凄み」がありました。同時に「手首を剃刀で切っているような痛々しさ」と、しかしそれは行為としては「普通に紙を燃やしているだけ」ということで、なんともいえない奇妙な感じを抱かせる映像でした。これをあえて表現するなら「ハードコアな寂寞感」とでもなるのでしょうか。
ところでお札焼却に関する資料を探していて、次のようなものを見つけました。
これは「元祖不良中年」セルジュ・ゲンスブールがインタビュー中にいきなりお札を燃やしたときの映像です。フランスの紙幣なので、日本人にはさほどのものではありませんが、フランス人には結構ショッキングな映像なのではないかと思います。我々にも、その「何ともいえない感じ」が伝わってきます。
T・Mさんが送ってきた動画は福沢諭吉の一万円札でしたので、フランス人にはそうではなくとも日本人にはショッキングでしょう。そのショックの質は、たとえば「国旗を燃やす」ことにも似ています。しかし国旗焼却は、多くの場合、外国人が他国を非難するためになされる政治的な行動です。
お札焼却もまた、お札の価値を保証している国家を「批判」するという点で政治的行為なのですけれども、同時に「自傷行為」を見るような痛々しさがあります。国旗はその国の象徴であり、象徴である限りにおいてはそれを焼いてもナショナリズムを刺激するだけという、どこまでも観念的な ものであるに過ぎません。しかしお金を焼くと貧乏になるというリアリズムが待っています。
上の「ゲンスブールの動画は、ミクシイ巡回中にNさんの日記のコメント欄で見つけました。Nさんの日記には、今回の鬼放展にからめて「お金を燃やす人たち」について紹介されており、その中にイギリスのKLFというバンドのメンバーが、自分たちで稼いだ100万ポンドの札束(約2億円相当)に火を点けて焼却するyoutube映像が貼られていました。
金額が多ければ偉いというわけでは全然ありませんが、自分たちで稼いだ2億円を燃やすというのはさすがに凄いです。ダダカン師が70年代初頭に焼いた5万円も、ダダカン師の生活水準に換算すれば当時の年収に相当する額だったそうです。それを聞くと、どちらもなんとも言えない感じになります。
ちなみにKLFのこの行為は、「Watch the K Foundation Burn a Million Quid」という映画になっていて、英国でビデオも発売されているようです。
http://us.imdb.com/title/tt0114897/
↑KLFの映画紹介データ
俺はこのyoutube映像を見ただけなので、この限りではそれほどピンと来ませんでしたが、映画の中では100万ポンドを焼却した後、バンドのメンバーが「もうこんなこと二度とゴメンだ」と半ベソをかいていた、というシーンがあるそうです(→★ 左サイトの5月30日最後のあたりに記述あり)。それを知って、初めて俺は「これはいい話だ」と思いました。
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