吉祥寺アニメ映画祭個人的“裏入選作”発表【グロ注意】
先日開催されました「第四回・吉祥寺アニメーション映画祭」ですが、俺は受賞作の発表の際、特別に「裏入選作」も発表するというようなことをチラリと書きました。それをこれから発表したいと思います。以下書く内容は、審査員の一人である竹熊の「独断」によって、あくまで「たけくまメモ」のみで発表するもので、吉祥寺アニメーション映画祭の事務局や他の審査員の意見とはまったく関係がないことを強くお断りしておきます。
●裏入選作『チェーンソー・メイド』(長尾武奈) ★グロ注意★
↑ニコニコ動画にもあります。
今回、長尾さんの作品は『クレイジー・クレイ・レスリング(CCW)』がギャグ部門にノミネートされましたが、それはこれが内容的に一番無難であったことが大きいです(もちろんこれもとても面白い作品でした)。これ以外にも長尾さんは旧作からいくつか応募されてきたんですが、そのすべてがグログロのスプラッタ・クレイ作品。チェコのアートアニメの巨匠であるヤン・シュヴァンクマイエルにも、かなりグロイ粘土アニメがありますけど、長尾さんのはシュヴァンクマイエルにロメロとリンチを足してショックを増幅したような作品ばかりでした。しかもどれも特殊に完成度が高くて驚かされます。
この人本当にこういうのが好きなんだろうな~という「想い」がビシバシに伝わってくる作品ばかりです。なんといいますか、こういうのは俺、決して嫌いではないし、アニメーションの技術レベルは相当に高いと思うんですが、あまりの内容に気分を害するお客さんも出ることが想像され、ノミネートを断念しました。他の作品と同じ土俵に乗せて評価することが困難だったという理由もあります。
今回のノミネート作品の中には、ギャグ部門であの伊勢田勝行監督の『ロザリオにおねげッCHU!』や飯田千里さんの『スイートミーツ』といった、ギャグというよりもカルトな作品がノミネートされてましたが、この二つを推したのは実は俺一人でした。しかも俺は控え室にいたので気がつきませんでしたが、『ロザリオ』は運営側の判断で短縮版にして上映されたみたいで、伊勢田監督ならびに関係者の皆さんには大変ご迷惑をおかけしてしまいました。深くお詫びいたします。
↑「スイートミーツ」(飯田千里)はこちら。
俺としても、この二本が受賞することはまず難しいだろうな、とは思っていたのですが、こういう作品も「あり」だと示すことは吉祥寺アニメ映画祭の独自性を示す意味があると思って、あえてノミネートしたものです。
そもそも「ギャグ部門」を設けることを提案したのは俺なんですが、ひとえに審査基準に広がりを持たせるためでした。たとえば技術的に未熟であったり、あまりに特異な内容の作品であっても「面白ければ受賞の可能性を作ろう」という意図があったわけです。
俺、過去にいろんなアニメ映画祭を見てきて、一発ギャグ的に場内大爆笑のナンセンス作品があったとしても、ラインナップにシリアスな力作があったら、結果としてシリアスがグランプリを獲る可能性が高いんですね。これはいざ審査する側に回ってみると、やむをえない部分があるとは思うのですが、「ギャグはギャグで価値はあるんだけどなあ」といつも残念に思っていたんです。
ところが、今回たとえば『スイートミーツ』にしても『ロザリオ』にしても、作者にギャグをやる意図はおそらくなかったと思われ、ただその特異な作風が観客には「笑える」ことから、当方の判断でギャグ部門に押し込んだものです。厳密にはこの二本をギャグで括ることは無理があったと思う。
しかし、どのような分類基準で部門分けしたとしても、そこからはみ出る作品が出ることは当然考えられます。基準からはみ出ていても、明らかに「面白い」と思える作品があったとして、それをどう扱えばいいのか。
ギャグ部門とは別に、ホラー部門とか、キッチュ部門、モンド部門などさまざまな批評軸による賞を併設することも考えられますけど、そうすると今度は映画祭のポイントが惚けてしまいます。
これはあらゆるコンテストにつきものの、難しい問題だと思います。俺としては、どうしても選外にするしかなかったが個人的に惜しいと思った作品を、こうして個人ブログで発表する以外、いい方法が浮かびませんでした。しかし長尾さんはすでに多くの作品があり、上映会では人気を呼んでいると聞いています。『チェーンソー・メイド』のyoutubeを見て驚いたんですが、昨年の12月にアップされて再生数がすでに100万回を越えているんですね。
コメントを見ても、世界中のホラー・ファンが言葉を寄せているようです。なんのことはない、この作品はもう国際的なヒット作なんですよ。ホラー映画祭短編部門とかがあったら、確実に入賞が狙えるのではないかと思います。
長尾さんの作品にしても、あるいは伊勢田監督の作品にしても、作者には作品をソフィスケイトさせたりオブラートにくるむつもりが毛頭なく、見せたいモノが明確かつ赤裸々すぎて、結果として一種の裏ビデオになっていると言っても過言ではないと思うわけです。俺は、表現の強度と純粋性をとことん追求していったら、どこかでそれは裏ビデオに近づくのではないかと思うのですが、裏ビデオは密室で楽しむからこそいいのであって、これを公衆の面前で上映していいものかという問題はあります。
吉祥寺アニメ祭の主催者は武蔵野市商工会議所で、あくまで一般市民に開かれた映画祭であるということが大前提になります。ご家族で、幼いお子さんと一緒に見に来る映画祭なのです。したがってある作品が選出されなくても、それは賞の性格に基づいてそうなったわけであって、それが駄作か傑作かという問題ではありません。
俺個人の評価基準と、イベント全体の基準にズレが生じたとしても、これはもう仕方がないことで、その場合どうするかということは以前から考えていました。今回ブログで「個人賞」を発表することにしたのはその一環です。吉祥寺アニメ祭自体は、年々作品レベルが上がってきているので、これはこれで大事にしていきたいことも本音であります。そこで、ブログで個人賞を示すという今回の措置になったわけです。これで良かったかはわかりませんが。
この問題、難しすぎて今はこの程度までしか書けません。ただ、こういう作品もあったということ、そしてこれは傑作に違いないのだが、ノミネートすらできない傑作であったということを個人的に表明しておきたいと思います。
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