コミックマヴォVol.5

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2008/11/04

専門家の未来予測について

今から25年ほど前の話です。俺が23歳かそのくらいだったはずだから、1983年だったと思う。俺は大学にも行かないでブラブラしていて、そろそろフリーライターの真似事みたいな仕事を始めておりました。

高校時代の友人でY君というのがいたんです。彼は当時、どこかの大学院に行っていて、バリバリの理系でした。その頃彼の大学では、通産省(今の経産省)の肝いりで「第五世代コンピュータ」の研究をしていて、彼はその方面で有名な先生の研究室で手伝いとかやっていたはずです。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E7%AC%AC%E4%BA%94%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF&oldid=22393814
↑第五世代コンピュータ

第五世代コンピュータとはなんなのか、今もってよくわからないんですけど。上のウィキペディア見ると、どうも人工知能みたいなものらしい。とにかくその頃一般庶民の世界では、NECのPC-98(通称キューハチ)が出るか出ないかの頃で、まだPC-88(ハチハチ)が全盛でした。俺が出入りしていた編集プロダクションの社長が、事務所にハチハチ入れて自慢していたことを思い出します。

でもハチハチで原稿書く人は、事務所には一人もいませんでした。それで何やっていたかというと、給料計算とチェスのゲームやってたくらい。まだ漢字も十分には扱えない、日本語で文章書くには非力なマシンだったんですよ。

だから俺、自分がコンピュータ使うようになるとは、当時は夢にも思いませんでした。第一バカ高かったし。漢字もまともに扱えないような8bitマシンのくせに何十万もしましたよ。確か当時出ていた文章打つだけの日本語ワード・プロセッサが百万超えていたはずです。どちらも貧乏人の俺には高嶺の花もいいところでした。

それでその頃、雑誌の記事で読んだのかな。NECがPC-98を発売したと。8bitマシンだったPC-88の上位機種で、このキューハチは16bitだから漢字も普通に扱えるようになります、という感じの記事で。そうか漢字も打てるのか、じゃ仕事にも使えるかもな、どうせ買えないけど。と思ったのを覚えています。

そういうことがあったものだから、そのY君と飲み会で隣の席になったときに、おそるおそる聞いてみたわけです。Y君はコンピュータの専門家だろうから聞くけど、なんでもPC-98は16bitだそうじゃないか。俺みたいな素人でも、仕事で使えるようになるのかなあと。

そしたらY君、

「素人がコンピュータ使って何するの? 使うにしても16bit機はオーバースペックだよ。8bitで十分!」

と、確かにそう言ったんですよ。俺としては、日本語で文章書くのにキューハチってどうなのと聞いただけなんですけどね。でも彼にとってのコンピュータは、研究室で扱っているような一台何億円もするメインフレーム機のことであって、当時はたぶん、パーソナルコンピュータのことなんて眼中になかったとしか思えないんですよね。

Y君は、決して専門家づらして偉そうにふるまったり、人を小馬鹿にするタイプではないんですよ。普通に話すぶんには、明るくほがらかなナイスガイなんです。その彼がPCに関して俺にそういう態度をとったということは、80年代初頭というのは、そのくらいパーソナル・コンピュータというものが専門家からしたらオモチャ・レベルというか、そもそもコンピュータはプログラミングもできない素人が使うようなものとは考えられてはいなかった、ということではないでしょうか。

結論から申しますと、プログラミングなんて何もわからないまま、俺はその後91年になってPC-98を購入し、仕事で使い始めました。OSがwindowの時代になって重くなり、その後PCは何代も変わって今使っているのは32bitマシンです。64bitのOSやソフトなんてのも出ている。25年前にY君が断言した「16bitなんて素人にはオーバースペック」という発言は大ハズレもいいところだったわけです。

1983年に任天堂から出たファミコンの性能が、1969年のアポロ月面着陸でNASAが使っていた巨大コンピュータの性能とほぼ同等だという記事を読んだことがあります。おそらく80年代初頭のパソコンと、今俺が使っているパソコンの性能にもそのくらい、いやおそらくそれ以上の性能差があるでしょう。

まあ彼には悪気はなく、あの時は心の底からそう思って、素人の俺に断言したのでしょう。俺もあのときは専門家の彼の話を納得して聞いていたんだけど、もしかすると俺は、F-1レーサーに向かってチャリンコの機種を尋ねるようなトンチンカンな真似をしていたのかもしれないですが。

結局、専門家にとっては、自分の専門領域が一般ピープル向けに汎用化されていったときの将来を予測することは、非常に難しいという話なんだと思います。人工知能を研究していたY君が、その後のパーソナル・コンピュータの発展を予想もできなかったというのがいい例だと思うんですけど(まあ彼にしてみれば、専門領域が違うから自分には関係なかったということなのかもしれませんが)。

たぶん専門家の判断というものは、過去の解説とか、現状どうなっているかの説明に対しては威力を発揮すると思うんですよ。でも未来予測に関する限り、意外と素人の勝手な夢想とか願望のほうが的中したりするんだと思うんですよね。以前ネットに転がっていたテレビのキャプチャ画像で「晴れ時々曇り 所によって雨かみぞれまたは雪になるでしょう」という天気予報を見て爆笑したことがありました。間違いない予想をしようと思えば、専門家であるほど、こうなってしまうのではないでしょうか。

『2001年宇宙の旅』は、キューブリック監督が世界中の専門家を顧問に招いて、厳密な科学考証のもとに製作されたことで有名ですが、宇宙ステーションの内部構造などは超精巧に作られていたあの映画も、2001年を待たずしてソビエトが崩壊したり、パンナムが倒産することは予想できなかったようなものです(映画に登場するスペースシャトルにはパンアメリカン航空のロゴが入っている)。

Y君には申し訳ないですが、あれ以来俺は、専門家の未来予測は「当たるも八卦」で聞くようにしているのです。

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