コミックマヴォVol.5

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2009/02/18

なんか、今ってすごい時代だよなあ

今朝の8時なんですが、テレビをつけたら中川財務大臣辞任のニュースをやっていて、それ見ながらこのエントリを書いております。俺も昨日の明らかに酔っぱらった記者会見を見て、「やっちまった」と思いましたので、結局辞任したことには納得なんですが。

それはともかく、中川さんって、こないだお亡くなりになった役者の峰岸徹にちょっと似ていませんか。なんか、いつもカメラをにらみつけるような目で表情を決めている感じが似ていると俺は思うんですけどね。まあ役者顔といいますか。

それが、昨日の会見では明らかにタダのヨッパライで、その状態で世界に中継される記者会見に出たからみんな唖然としたわけですね。もともとアル中疑惑があった人のようで、テレビで政治評論家が「いつかやると思ってひやひやしていたが、とうとうやったか」みたいなことを言っていました。

当然、あの状態で記者会見やるなんて自殺行為だから、側近の誰かがなぜ止めなかったのか、という声が出るわけですが。本人が「大丈夫、やる!」と言って聞かなかったのでしょうか。

まあ何があったかわかりませんが、この大不況下で財務相をやっていたわけだから、飲まずにはいられなかったんですかね。どことなく、安倍さんや福田さんがそれぞれ1年で首相の座を放り投げてしまったことと、俺の中ではダブって見えるんですよ。

麻生さんが「郵政民営化に私は反対だった」といきなり言い出した時にも思いましたが、これまでは政治の水面下で決まっていたようなことが、水面下では何も決まらず「影の総理」とか「ラスボス」があたふたしている混乱が、そのまま表に現れてしまっている気がどうしてもするんですね。

アニメや特撮の「悪の組織」で考えてみますと、まずはショッカーの首領とか、ギャラクターの総裁Xみたいな「真のボス」がいますよね。その下に地獄大使とかベルク・カッツェのような中間管理職がいて、この中ボスが部下の戦闘員に指令を下す構造になっておるわけでしょう。

ところがなんかの事情で真のボスが急死してしまったとか、発狂して幼児退行してしまったとします。現場担当の中間管理職としては困るわけでしょう。とりあえず上の異変は隠して、なんとか現場の士気を保とうとするんだけど、その場しのぎの指示を出すだけで、だんだん現場も動揺してくる。今の日本やアメリカは、こういう状態に置かれている感じが俺にはするんですよ。首相や大統領というのが、一国の最高指導者というよりも、俺には中間管理職に見えてしかたがない。

まあしかし、俺みたいな一般人には政治の裏側なんてとてもわかりません。でも自分が仕事をしている業界のことは、なんとなくわかりますよね。それで出版界やマンガ界の動向を見た限りでも、なんか世の中ヘンだよなあ、ということはわかります。

http://www.kanshin.jp/comic-beam/
↑空間コミックビーム終了のお知らせ

これは別に「コミックビーム」が終了するお知らせではなく、あくまで読者サービスで開いていた公式サイトを3月一杯で閉鎖するというお知らせです。たぶん3月末で上のサイトは読めなくなると思います。(コミックビーム本誌の公式サイトは別にあって、これは従来通り続いていくと思いますが)。

その告知の下に、奥村編集長のコメントが掲載されております。これがもう、いかにも奥村さんらしくぶっちゃけてます。曰く「銭がない」「人手がない」と。

《昔からビームは明日なき雑誌であったが、ここ一年は本当に「俺たちに明日はない」かもしれないと、思えるようになってきた。でも、実際はウチだけじゃなくて他の雑誌も全部ヤバイってことなんだけどね。今、漫画雑誌の編集長が集まると確実にお互いのヤバイ自慢が始まる。正直、あんま健康的な状態じゃねえな。そんなワケで銭が無い。ちょっとの金も節約しないとマズイ状態なのです。》(空間コミックビーム TOPページより)

まあ、コミック・ビームという雑誌は往年の「ガロ」と同じく、昔から「売れてない」ということを定番の自虐ネタにしていたわけです。なのにどうして雑誌は出ていたのかというと、単行本との連結決算ではずっと黒字を維持していたからで、その意味ではどこか余裕があったのですね(ビームが創刊されて以降も、多くの雑誌が人知れず消えて行きましたが、これらは間違いなく単行本も赤字だったからでしょう)。

奥村さんのこの発言は、ビームばかりでなく「マンガ雑誌全体がヤバイ」ということを、さりげなく強調していると思います。「今、漫画雑誌の編集長が集まると確実にお互いのヤバイ自慢が始まる」という発言にはリアリティがありますね。

マンガ界、いや出版界がヤバイというのは、もう十何年ずっと言われ続けているんですけれども、「いよいよこれは…」と俺が思ったのは去年の春先くらいからです。

特に何があったということではないんですけども、日頃接する編集者の顔つきが変わったとか、言葉の端々のニュアンスが変わったというか、うまく言えないんですが、業界を取り巻く空気が昨年の春くらいから違ってきたと感じるんですよ。俺みたいにフリー生活を長くしていると、そういう「空気」には敏感になるんです。

そしたら案の定、昨年の夏から一般誌を含めた休刊ラッシュが始まって、秋にはサブプライム・ローンがはじけて事実上の大恐慌に突入しました。俺は最初、業界内の空気の変化だと感じていたんですが、フタを開けたらなんのことはない、世の中そのものの空気の変化だったわけです。昨年の春くらいまでは、学生の就職率が上向いたとか、日本経済はバブル崩壊の不景気を完全に脱したとかマスコミでは言われていましたけどね。個人的にはそういう実感はなかったので、やっぱり、と思っただけでしたね。

ちょっと怖いのは、今度の不景気はバブル崩壊の比ではない感じがすることです。前のバブル崩壊(91年)の時は、数年間は実感がなかったんですよね。株とかやってた人は直撃受けたと思うんですが。出版業界は、94年くらいまで体感としては景気がよかったですよ。マスコミはバブルがはじけたと騒いでいたけれども、俺は株やってないし、とりあえず関係ないやと思っていました。

それが、95年の阪神大震災、地下鉄サリン事件のあたりから「空気」が変わって来ましたよね。それまでは80年代の延長気分だったと思うんですよ。

バブル崩壊は日本の局地的な現象だったと思うんですが、今度の不景気は間違いなく世界的な問題ですからね。それで、景気の実感には2~3年のタイムラグがあるのだとすれば、来年あたりが恐慌本番になるのかなあと。いや、これといった根拠はありませんが。

俺みたいな庶民には知るよしもないわけなんですが、中川さんみたいな国の中枢にいる人間は、たぶんいろんな情報が入っているんでしょう。酒でも飲まないと、とてもやってられない気分なのかもしれませんよ。

俺たちは今、100年後の教科書に載るような時代に生きているのかもしれません。

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