祝・『北国の帝王』初DVD化!
今日、町田のヨドバシでDVD売り場に行ったら、『北国の帝王』(ロバート・アルドリッチ監督、1973年)のDVDが新盤コーナーに並べてあり、雷に打たれたごとくに衝動買いしました。この映画、俺が48年の人生で見た中で、一番面白かった映画です。もちろん感動したとか感心した映画ならたくさんあるんですが、問答無用で面白かった映画を一本選べと言われたら、迷わずこれにします。
高校時代にテレビの洋画劇場で出会って以来、ビデオやLDが出るたびに即買いしまして、何度見返したかわかりません。ところが、DVDがなかなか出なかったんですよ。洋盤も探したんですが、アメリカのアマゾンを検索してもありませんでした。
最近ではすっかり諦めてしまって、半年くらいDVDの新盤チェックを怠っていました。そしたらちゃっかり出てやがんの。ヨドバシで発見した瞬間に心の中で悲鳴をあげてしまいましたよ。油断も隙もあったもんじゃない。
30年代初頭、大恐慌時代のアメリカを舞台にしたドラマですよ。現代の日本も百年に一度の大不況と言われ、派遣切りにあった労働者が派遣村で炊きだしに列を作っていますけれども、大恐慌時代のアメリカでは、職にあぶれた労働者が着の身着のまま、列車に乗って職探しの旅に出ていました。こうした各地を渡り歩く失業者のことを「ホーボー」と言います。
もちろん職なんて見つかりませんし、お金もありませんから皆さん無賃乗車です。当然犯罪ですから、各列車に乗務する車掌にとっては、列車にタダ乗りするホーボーを発見しだい車外に放り出すことが重要な仕事でした。
この映画の主人公、中年男(リー・マーヴィン)は、浮浪者仲間からA(エース)ナンバーワンと呼ばれています。どこがエースで、何がナンバーワンなのかと申しますと、彼は無賃乗車の天才で、仲間からは「北国の帝王」という称号を冠されて尊敬されているからです。
Aナンバーワンはケンカの達人でもあり、周囲のあらゆるものを武器にして戦います。農家から盗んできたニワトリを横取りしようとするホーボー仲間には、生きたニワトリを振り回して反撃します(左写真)
Aナンバーワンの最大のライバルが、アーネスト・ボーグナイン扮する鬼車掌・シャック。シャックが鬼車掌と呼ばれるゆえんは、無賃乗車するホーボーを発見するや、必ず、ハンマーを使ってその場で殴り殺すからです。シャックが殺したホーボーはすでに16人とも言われ、恐れられています。
この鬼車掌が乗務する19号列車に、Aナンバーワンが「北国の帝王」の意地に賭けて挑戦状を叩きつける。当然ホーボーと鉄道乗務員らの間で賭けがはじまる。息詰まる緊張の中、ハゲや白髪が混じったむさ苦しいオッサン二人、無賃乗車を巡って血で血を洗うバトルを始める。それが『北国の帝王』のあらすじであります。
油ぎったオッサンの体臭がスクリーンから臭ってくるような映画であります。なによりも素晴らしいのは、鬼車掌を演じるアーネスト・ボーグナインの顔(左写真)。特殊メイクも使わずして、ここまでナチュラルに鬼瓦のような顔ができる役者がいたでしょうか? この顔を見るためだけにでも、このDVDを買う価値があると俺は思います。
猛スピードで走る機関車の屋根を、鬼の形相をしたボーグナインが鎖とカナヅチをぶんぶん振り回しながら襲ってくる映像が、この作品の最大の魅力です。それを迎えうつリー・マービンの、半年も風呂に入っていないような匂い立つ漢(おとこ)の魅力! この映画が封切られた1973年といえば、世界中でブルース・リーが人気を博していましたが、この映画のオッサン同士のリアル・ファイトの前では、普通のアクション映画が色あせて見えるくらいです。
この映画、主要キャストに女優が一人もいないところも魅力です。当然、愛だの恋だのといった軟弱要素はナッシング。寝台列車の中で脇毛を剃っているご婦人の露骨なサービス・カット以外、あとはひたすら男! 親父! オッサン! 漢! のオンパレード。ここまで清々しい映画もそうはありません。
ボーイズラブとも無縁な、100%ピュアモルツな「漢の世界」だけで出来たこのような映画は、なかなかなく、DVD化が遅れたのもなんとなくわかります。
大不況のさなか、スカッと爽やかな気分になりたい人にはお勧めです。
※使用写真はすべて20世紀フォックス映画『北国の帝王』より引用。
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