コミックマヴォVol.5

« 人生の「節目」について | トップページ | アジア式しゃがみ方の研究(小ネタ) »

2009/03/01

祝・手塚治虫『新宝島』完全復刻!

Shintakarajima01完全復刻版 新寶島 豪華限定版

かねてから噂だった、手塚治虫の出世作『新寶島(新宝島)』の完全復刻豪華限定版が出ましたよ。復刻といえばもちろんこの会社、小学館クリエイティブです。マンガとしては戦後最初のベストセラーで、戦後マンガはこの作品から始まったとまで言われる本作ですが、刊行当時のままの状態で復刻されたのは今回が初めてです。

もちろん本書はその歴史的価値から、復刻の話は何度もあったのですが、ことごとく手塚は退けていました。理由は手塚自身いくつかあげているんですが、公式見解とは別に、実は「原作者」であるマンガ家・酒井七馬との確執が大きかったのではないか、と考えられております。

手塚は終戦直後に、関西マンガ界の大御所であった酒井七馬の主催する同人誌「まんがマン」に参加しました。戦時中、手塚は長編マンガ『オヤヂの宝島』(未完)を発表のあてもなく執筆しており、これを見た酒井が、出版社を紹介するから新たに酒井の原案で描き下ろしマンガを描かないかと持ちかけたのです。

Shintakarajimaokutuke この話に手塚は飛びついたわけなんですが、出版された『新寶島』には表紙こそ酒井と手塚が連名で記されていたものの、あちこちに酒井の筆が加えられていたばかりか、奥付の著者名には酒井の名しかなく、これに手塚が激怒したと伝えられています。

しかし酒井と手塚は年齢が20いくつも離れており、方や大御所、方や学生の新人マンガ家ですから、版元的には、手塚のことを酒井の弟子だと考えていたようです。師匠の名前のみを奥付に載せることはそれほど理不尽なことではありませんでした。

酒井も手塚のことを自分の弟子だと思っていたようですが、問題は、手塚は酒井をお世話になった先輩程度にしか思っていなかった可能性が高いことです。普通に考えると、手塚はとても生意気な新人だったということになるのでしょうが、はじめから手塚の才能は、当時のマンガ界の常識を超えたところにありました。事実『新寶島』の刊行直後から、瞬く間に手塚はマンガ界のトップスターに登り詰めるのです。

Dscn0446 ←豪華限定版の箱(金ピカ)

さて今回の復刻ですが、豪華限定版(7980円・税込)と、通常版(2000円)の二種類が出されています。豪華限定版は、金ピカ全面箔押しの箱に入れられておりまして『新寶島』本体とは別に、『オヤヂの宝島』、『タカラジマ』『新寶島読本』『未使用原画の複製』と4種類の付録がついた文字通りの豪華版になっております。

Dscn0445 ←手塚マニアならこれで7980円は安いと思う。

現在『新寶島』のオリジナル初版は、美本の場合、古書価にして500万の値段が付くこともあるそうです。それを考えると7980円は安いと俺は思いますが、もちろん価値観は人それぞれですので皆さんの判断にお任せします。

ただし、講談社の手塚全集版『新宝島』が570円なのでこれで済ませようと思われる方がいらっしゃいましたら、ちょっと待ってください。見比べれば一目瞭然なのですが、全集版の『新宝島』は手塚が晩年になってリメイクしたものであって、旧『新寶島』とはまったくの別物といっていい作品です。

Shintakarajimazensyuu←新宝島 (手塚治虫漫画全集)

ストーリーこそ一緒ですが、手塚としては、どうしても酒井七馬の痕跡を消さなければ自分の作品とは認められない、とばかりに徹底的に修正が入っています(修正というより最初から描き直している)。ただし、全集版には当時の手塚の日記が再録されているのが価値です。初めての単行本が出る喜びの記述から奥付に自分の名前がないことに愕然としたことなどが赤裸々に書かれていて、これはこれで貴重です。ここは豪華限定版と全集版、併せて読むのが通といえるでしょう。

◎このエントリにコメント→★
◎掲示板トップへ→★

|

« 人生の「節目」について | トップページ | アジア式しゃがみ方の研究(小ネタ) »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70029/44206920

この記事へのトラックバック一覧です: 祝・手塚治虫『新宝島』完全復刻!:

« 人生の「節目」について | トップページ | アジア式しゃがみ方の研究(小ネタ) »