コミックマヴォVol.5

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2009/06/28

「ヱヴァ」は品川駅を出発しました(ネタバレなし)

昨日見てきましたよ「ヱヴァ」。最初は南町田にある109グランベリーモールで12時20分の回を見て、それから渋谷で用事を済ませて、帰りに歌舞伎町の新宿ミラノでもう一回見ました。グランベリーモールは八分程度の入りで少し心配しましたが、新宿ミラノは夜の回も超満員で、どちらの映画館でも終了時に拍手が出ました。グランベリーモールでは終わって駅に向かう途中で多摩美の教え子に出くわしたんですが、「先生、ヱヴァどうでしたか」と訊かれたものですから、

「旧作とは全然違う。確かに大筋は一緒だし『エヴァ』には違いないが、もう別作品と言っていい。前回の『序』であえてテレビ版の序盤そのままをなぞって見せたのは、これをやるための前振りだということがよくわかった。確かにこういう“リメイク”は見たことがない。テレビ版や旧劇場版も傑作だったけれども、今度の『ヱヴァ』がもしこのテンションのまま完結するようなら、おそらく50年後も語り継がれるような大傑作になると思う」

と答えました。こないだラジオで宮台真司さんや氷川竜介さんと共演したわけですけれども、氷川さんはともかく宮台さんや俺はまったく内容を知らなかったので非常に話しづらかったわけですが、事前に関係者以外には試写も見せないという徹底した報道管制を敷いた「真意」は、この初めて見る驚きを大事にしたゆえだろうと理解しました。

『ヱヴァ』はまだ初日を迎えたばかりで、これから見る人もたくさんいるでしょうから、今回はネタバレに触れずに書きたいと思います。

さて、ラジオ出演時に氷川さんが

「同じ駅から出発して、平行して走る二本の路線がありますよね。出発から途中までは車窓の風景は同じなんだけども、途中の駅で方向が別れて全然違う景色が広がる。今度の『ヱヴァ』は、喩えるならそんな感じ」

とおっしゃってました(※)。それで俺が

「ははあ。東京駅から出発した山手線と京浜東北線が、途中の品川駅で渋谷・新宿方向と横浜方向に分かれるみたいなものですね」

と言ったんですが、概念としてはそのように理解していても、実際見るまではどういうことなのか、サッパリわかりませんでした。しかし今は、『旧エヴァ』は山手線で東京から渋谷方向に走っているが、今度の『ヱヴァ』は京浜東北線で、品川駅を通過して横浜方向に走っていることがはっきり理解できました。山手線に乗っても京浜東北線に乗っても、東京から品川までは同じ駅に停車するので、車窓から見える景色は同じわけです。

※氷川竜介さんからのご指摘があり、山手線と京浜東北線のたとえ話は鶴巻監督が企画段階で出した「破」のコンセプトだそうです。

そこで今回の「破」なんですが、『旧エヴァ』はおろか、DAICON FILM時代から庵野作品を見ていた俺としては、思わず目頭が熱くなるものがありましたよ。今回『新劇場版』を製作するために、庵野監督は自分の会社(カラー)をわざわざ作ったわけでしょう。それで製作だけではなく配給まで手がけている(クロックワークスと共同配給だが、主体はカラー。これはマンガ家が作品を執筆するだけでなく、自分で出版社を作って取次会社まで持つようなもの)。

今回庵野さんがやっていることは、史上最高レベルの自主映画だということで、DAICON FILMの頃と精神が変わっていないわけです。スケールは全然違いますが、俺が既成の出版界の仕事を休止して「マヴォ」を自主編集・自主販売しているようなものです。俺も庵野さんと同じく、自費出版のミニコミから業界に入った人間なんですよね。こういう人間は、

業界に入ってプロとして活動していても、好きなことができなければまた自主製作に戻ればいい

と、心のどこかで常に考えているんですよ。庵野監督の場合、億単位のお金をかけてこれをやったわけで、ちょっと言葉が見つからないくらいすごいことだと俺は思っているんですよ。『ヱヴァ』が終わったら、ぜひこのあたりの話を庵野監督に訊いてみたいものです。

やはり、今はプロとアマチュアの境界が崩壊している時代なのだと強く感じましたね。庵野さんや俺みたいに、もともとプロとアマの境がない種類の人間には面白い時代になったものだと思います。映画界も出版界も、既成のシステムが動脈硬化を起こしている。そういう時代にクリエイターが何かを作ろうと思ったら、自前のシステムを作って作品を自分で売るしかないんですよ。

それにしても、こうなってきますと、次回の『ヱヴァンゲリヲン・Q』がどういう展開になるのかまったく見当がつきません。俺も一介のファンとして、庵野劇場の行く末を楽しみに待っていたいと思っています。

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