カテゴリー「大学講義」の46件の記事

2011/01/18

【業務連絡】今週木曜、京都精華大学でうめさんとトーク(聴講自由)

さっきツイッターでも流しましたが、明後日木曜日、京都精華大学の俺の講義枠内で『大東京トイボックス』で著名なマンガユニット「うめ」の小沢高広さんと「電子出版とマンガの未来」を巡るトークをします。といっても90分の授業枠なので相当ポイントを絞って話すことになりますが、うめさんはともかく俺は話があっちゃこっちゃ飛ぶのが習性ですので、気をつけたいと思います。外部の聴講自由ですので関西で興味のある方は聞きに来てください。

それから27日には『ラブひな』の赤松健さんと都内で対談します。こちらは「コミックナタリー」に報道記事として載るほか、「ITmedia」に全文が掲載される予定。赤松さんが始めた「Jコミ」は、絶版漫画に広告を付けて無料配信するというサイトで、今の俺としては一番ユニークな試みをされていると評価しております。俺と赤松さんの出会いの一部始終でツイッターで確認できますが、まとめサイトもあるのでそちらをご確認ください。

http://catmania.blog13.fc2.com/blog-entry-3292.html
↑竹熊健太郎とJコミの赤松健がファーストコンタクト

昨年末から書いている書き下ろし原稿が遅々として進んでいないですが、「電子出版」をめぐる作家の動きが加速を始めており目が離せません。今月末になると授業が終わるのでそこでもろもろの作業を一気に片付けたい……ですが学生が休みになってもこちらは成績つけや卒業制作の監督、入試の仕事がごちゃりとあります。

死なない程度に頑張ります。

考えて見ると赤松さんとはツイッターで知り合って、そのまま対談することになったんですよね。

| | コメント (12) | トラックバック (2)

2010/06/22

学生にお金を払う大学

先日Twitterで、現代美術家の村上隆氏が、大学准教授でマンガ評論家の伊藤剛氏と、「最近の大学生」をめぐって議論していました。ちょっとタイムラインの彼方に消えてしまっていて引用するのが大変なのでしませんが、俺の記憶で書かせてもらうと、村上氏が「最近の大学生は自主性がなく、社会常識が乏しくて、仕事を頼もうとしても使い物にならない」みたいなことを言ってて、伊藤くんが「自分の学生時代を振り返ってもこんなものだった。」と反論(?)をされていたところに、俺が横から割り込んで、しばらく俺と村上さんとで議論になったことがありました。その部分の俺のツィートを、少しだけ引用してみます。

                   ◆

@takashipom @goito 村上隆氏のツィートに伊藤剛君が返信する形で教育論議が続いている。村上さんは「今の大学生は社会常識がなっていない」と嘆き、伊藤君は「自分の若い頃を思い返せばこんなものだ」と返すのだが、どちらも同感。問題の立て方が両者ほんの少しずれている感じ。

続きを読む "学生にお金を払う大学"

| | コメント (25) | トラックバック (3)

2010/05/14

スポンサー付きのマンガについて

もう昨日なんですけど、精華大での俺の講義「マンガプロデュース概論」に元小学館編集者の武藤伸之さんをゲストでお呼びしました。武藤さんと俺はかなり昔からの知り合いで、たぶん23年くらいになります。実は一緒に仕事をしたことはないんですが、スピリッツとかヤングサンデーとか、同じ雑誌で仕事をしていましたから、編集部ではしょっちゅう顔を合わせていてよく知っているんですけどね。

それで、授業では武藤さんが80年代はじめに小学館に入社してから、「殺し屋イチ』の山本英夫さんなどとの仕事の話をメインに「マンガ編集者の仕事」についていろいろ伺ったんですが、後半は例によって現在の「マンガ不況」の話になりまして、武藤さんがこの春小学館を辞めて別の会社で新マンガ雑誌を創刊することになったいきさつ(現在準備中)などを伺いました。学生にはちょっとディープな話になったかも。

http://www.shogakukan-cr.co.jp/news/n901.html
↑小学館クリエイティブとフィールズが出版事業で提携

武藤さんは小学館を辞めたとは言っても、小学館の子会社と別会社が共同で設立した新会社でマンガ誌の編集をされるわけです。今、この時期に紙の雑誌を出すというのは、普通に考えると無謀なんですけど、そこはそれなりのウラがありまして、このフィールズという会社は大手のパチンコ機器メーカーなんですね。

http://www.fields.biz/
↑株式会社フィールズ

続きを読む "スポンサー付きのマンガについて"

| | コメント (57) | トラックバック (0)

2010/05/12

精華大生へ・竹熊・三河ゼミ・マニフェスト公開

この月曜に京都精華大学で竹熊健太郎・三河かおりによる「竹熊三河ゼミ(TMゼミ)」の説明会が行われました。以下、その時に配布した「マニフェスト」を転載します。原文は竹熊が執筆し、三河先生と大学教務課の承認を経て決定されたものです。

http://seika-sekai.jp/?p=6435
↑精華大ブログ「竹熊・三河ゼミ、始動!」

これは大学公認の「ゼミ」なのですが、全学部共通で(精華大にはマンガ学部の他に芸術学部・デザイン学部・人文学部がある)、運営事務は大学の教務課が担当するにもかかわらず、単位が出ません。従って、学生は自由参加の「自主ゼミ」になります。

自主ゼミなんですが、一次選考と二次選考(面接)を経て参加者を決定するという、あまり前例のないものになるだろうと思います。ガイダンスは来週17日にももう一度行われます。時間は18時から、場所は対峰館の109教室です。卒業生の参加も受け付けますので、興味のある精華大生は集合してください。

竹熊・三河ゼミ(TMゼミ) マニフェスト

  1.ゼミの目的 

京都精華大学は、2011年度内目標で「デジタルマガジン(タイトル未定)」を大学が運営するサーバー上に創刊する。これはインターネットで一般公開する予定のメディアである。コンテンツはマンガを中心にして、プロ作家の作品および学生の優秀作品を掲載し、さらにはアニメーション作品や各種記事を含めてウェブサイト上で公開していくものである。これに竹熊・三河ともに編集部に参画する。「デジタルマガジン」には、優秀で意欲のある学生(及び卒業生)にはぜひ参加していただきたい。「TMゼミ」は、そのための作家とスタッフを養成する目的で運営される。

続きを読む "精華大生へ・竹熊・三河ゼミ・マニフェスト公開"

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2010/04/27

【精華大学生の皆さんへ】竹熊・三河ゼミ開設のお知らせ

Photo

えー、精華大学在校生、および(チラシには書いてありませんが)卒業生の皆さんに向けたお知らせです。すでに本日、学内ではここに掲げたチラシを掲示・配布していますが、これからゴールデンウィークに入ることもあり、念のため「たけくまメモ」でも告知しておきます。

続きを読む "【精華大学生の皆さんへ】竹熊・三河ゼミ開設のお知らせ"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/01

本日は入学式

今日は大学の入学式でした。本日と明日は学生向けのオリエンテーションがあり、それから各種手続きと身体検査などがあって、授業開始は8日からです。多摩美の俺の講義は16日が初回。なんだかんだでとうとう新学期が始まってしまいました。

修学院の俺の自室も、家具等を運び終わって、ようやく人心地がついてきました。後は授業開始までには大学の俺の研究室をなんとかしなければなりません。腐海になりかけているので。そのへんがあるので、とりあえず15日までは京都にいるつもり。16日に多摩美の講義を始めて、そこからは京都と神奈川の往復生活が始まります。

京都の桜はまだ五分咲きくらいですが、この土日には満開になるでしょう。そしたら円山公園に夜桜見物に行きます。誰と行くというわけでもなく、たぶん一人でぶらりと行くだけなので、もし俺を見かけたらお声をかけてください。素敵な出会いを待っています。

大学の話に戻りますが、今年はマンガプロデュースの学科長になっただけではなく、なにやら大学のナントカ委員会でも何かやるみたいで、今から戦々恐々であります。それから、五月から『のだめカンタービレ』担当編集者の三河かおりさんと竹熊とでゼミを始めます。

このゼミ、おそらく精華大マンガ学部では初めての試みなんですが、学部生であればストーリー・アニメーション・カートゥーン・マンガプロデュースのいずれの学生でも参加資格がある「自主ゼミ」になります。自主ゼミですから単位は出ないんですが、その代わり学科や通常授業の枠にとらわれず、自由かつ本格的なゼミにしたいと思っております。ただし人数制限があるので、課題と面接で定員まで絞り込みます。

三河さんのような、現役バリバリの多忙な編集者が大学に毎週来て教えるということは、なかなかないことだと思います。先日池袋でご本人と打ち合わせしたんですが、三河さんからは「本気」モードを感じました。

どんな内容のゼミにするのか、定員をどうするかは現在三河さんと鋭意相談中です。たぶん商業誌に掲載可能レベルの作品作り・メディア作りを目標とした、かなりレベルの高い内容になるだろうと思います。詳しいことが決まり次第、学内に案内を掲示しますので、学生諸君は楽しみにしていてください。

| | コメント (14) | トラックバック (0)

2010/02/19

昨日の横浜での講演会

昨日、横浜のみなとみらい線馬車道にある北仲スクールでの講演「マンガとアニメーションの間」は、告知が遅れたにもかかわらず、おかげさまで会場が満席になりまして、いらしていただいた方、誠にありがとうございました。

内容は2月13日に筑波大学でおこなった講演とほぼ同じだったのですが、筑波の時は1時間半の持ち時間を30分押して2時間になってしまい、それでもだいぶはしょった感じになって不完全燃焼感があり、申し訳ありませんでした。昨日は4時間も持ち時間があって、それを1時間押して5時間もぶっ通しで話し続けて俺としてもかなり疲れましたが、お客さんはもっとお疲れになったかもしれません。最後まで一人も席を立つことなくご静聴くださったので感謝しております。

俺的には3年前に脳梗塞で倒れて以来、だいぶ回復してきたものの、まだ2時間以上話すと呂律が怪しくなってきます。昨日も4時間目からかなり怪しかったのですが、気力を振り絞ってなんとか乗り切りました。このテーマは多摩美や精華大で通年で行っている講義のダイジェストなんですが、やるたびに少しずつ内容を修正しているのでこちらとしても毎回緊張感があります。

まあさすがに5時間やるのは(休憩を二回入れましたが)やる方も聞く方もしんどいので、次の機会があったら日を変えて2~3回にわけてやりたいです。

続きを読む "昨日の横浜での講演会"

| | コメント (10) | トラックバック (1)

2010/02/16

2月18日に横浜で特別講義やります(無料)。

えーと、実は結構前から決まっていたのですが、限定された参加者相手だと勝手に思っていたので特に告知していませんでした。そうしたら事務局の人から「春休みに入って受講生の集まりが心配なので、ブログで告知してほしい」と頼まれまして、あわててエントリを立てております。

横浜みなとみらい線の馬車道駅の近所にある「北仲スクール」という場所で開講される「現代美術論・マンガという領域」という連続講義なのですが、俺は18日の15時から19時までの講義を担当します。

このスクールは横浜国立大学、横浜市立大学、東京藝術大学、神奈川大学、関東学院大学、東海大学、京都精華大学の7つの大学が共同で参加している実験的な学校なんですけど、このイベントは所属の制限なく一般参加が可能なようです。俺は「マンガとアニメーションの間に」という過去に何度かやったテーマでやります。

実は先日の筑波大学でも同じテーマでやったんですが、今回は3時間あるので、さらにつっこんでいろいろな映像なども見せられます。平日ですが、学生さんは春休みですので、ふるってご参加ください。参加費無料・申し込み不要・人数制限もありません。

続きを読む "2月18日に横浜で特別講義やります(無料)。"

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2010/01/04

本日深夜のマイ・ツィートより

多摩美の課題採点、ほぼ完了。今年はひどく低調だった。たぶん俺が「マンガを描いてください。画材に制約はありません。鉛筆描きでもOKです。」と言ったのが、「鉛筆のラフ描きでもよい = 手抜きOK」と解釈されたとしか思えない。確かに鉛筆でもよいが、手抜きでよいと言った覚えはない。

_hinohideffimini_4
約9時間前
 kentaro666

http://twitter.com/kentaro666/status/7335964283

スケッチブックを引きちぎった紙の「オモテウラ」に、鉛筆で殴り描いた「作品」が今年はかなり目立った。俺の課題の出し方に問題があったとすれば、来年は考え直さなければならない。

_hinohideffimini_2
約9時間前 webで
 kentaro666

http://twitter.com/kentaro666/status/7336004516

続きを読む "本日深夜のマイ・ツィートより"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009/12/14

今月23日、明治大学でマンガ研究をめぐるシンポジウム

091223meiji1

続きを読む "今月23日、明治大学でマンガ研究をめぐるシンポジウム"

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2009/11/16

マンガと大学教育(3)「マンガ編集者」は育てうるか?

※今回は「ちくま」にリレー連載した「オタク文化の現在」の、竹熊が担当した最終回を掲載する。当初「マンガ工学部構想」を書く予定が、完全に違う内容の原稿になってしまった。本文中でもそのことに触れているが、執筆当時の私を取り巻く状況の変化が激しく、こうなってしまったところがある。このエントリの最後に、書き下ろしで現在の見解を書くつもりだが、そこで改めて連載時と現在の私を取り巻く状況を総括する予定である。「マンガと大学教育(4)については後日アップするつもりだ。

●「マンガ編集者」は育てうるか?

 森川・伊藤・竹熊によるリレー連載も、今回が最終回となる。この連載は「オタク文化の現在」と題されているように、三人それぞれの立場からとらえた「オタク・カルチャー」の動きをレポートすることが開始時の意図であった。ところがテーマが「大学でのマンガ教育」に絞られた途端、連載は思わぬ展開となり、活気を帯びることとなった。

 私について言えば、この1年というもの、自分を取り巻く環境が目まぐるしく変化している。「激動」といってもいい。そのため当初私が書こうとしていたテーマからは、かなりの軌道修正を余儀なくされている。

 具体的には、私は当初、この連載で「マンガの実作教育」についてのプランを書くつもりであった。そこで私は、最初は当然のように「マンガ家としての実作教育」に焦点を当てていた。

 書くつもりだったプランは、何度か予告した通り「マンガ工学部」の構想である。マンガ出版の現場で、商品性のあるマンガを「生産」するうえでのノウハウを集積し、メソッドとして理論化・体系化することがまずひとつ。そして、これからの時代に適応した新しいマンガ(たとえば電子デバイスで読むことを想定したデジタルマンガ)を模索し、その研究を行いつつ、開発したノウハウをマンガ制作の現場にフィードバックする。

 その際私の脳裡にあったのは、1930年代のディズニー・プロダクションであった。ウォルト・ディズニーは、大作『白雪姫』(1937)を実現するにあたり、34年頃から社内にアニメーション研究のための「学校」を作った。ここでアニメーターを養成するとともに、マルチプレーン・カメラのような画期的な撮影装置まで開発した。

続きを読む "マンガと大学教育(3)「マンガ編集者」は育てうるか?"

| | コメント (13) | トラックバック (1)

2009/11/13

マンガと大学教育(2)「メディアという育成機関」

※今回紹介する原稿は「ちくま」2009年1月号に掲載された「メディアという育成機関」である。前回の原稿では、次回マンガ工学部の実際について書くと予告してあったのだが、早くも話が横道に逸れてしまっている。これは3ヶ月に一回というリレー連載で、間が空いているうちに自分やマンガ界をとりまく状況が急激に変わっていることもある。まとまった論考としては失格かもしれないが、なぜこういう原稿になったのかの言い訳を、最後に書き下ろしで触れるつもりだ。

●メディアという育成機関

 私は前回、「次回は“マンガ工学部”とはどういうものかについて書きたい」と予告してしまったが、その前に、大学でマンガを教えることについてもう少し書くべきことがあると気がついた。それは出版産業全体の中で、大学のマンガ教育はどう位置づけられるかについての議論である。

 マンガ教育を「実作者養成」の見地からとらえたとき、学生が卒業後に身を置くことになる出版界の存在を前提にせざるをえない。ところが盤石だと思われていたマンガ出版の産業構造に、近年、大変動が起こっている。

 一言で書くなら、マンガ(雑誌・単行本)が売れなくなってきたということである。いやブックオフに代表される新古書店や、マンガ喫茶は相変わらず隆盛であり、マンガ全体のニーズが落ちているとは私には思えない。おそらくマンガは以前と変わらずに読まれているのだが、「マンガを新刊で購入する」という消費者行動に、大きな変化が生まれているのである。

続きを読む "マンガと大学教育(2)「メディアという育成機関」"

| | コメント (16) | トラックバック (0)

2009/11/11

マンガと大学教育(1)「マンガ工学部」の可能性

※以下収録する原稿は、雑誌「ちくま」2008年7月号「オタク文化の現在(17)マンガ工学部の可能性 竹熊健太郎)より転載したものである。採録に当たって、一部表記を改めた。文中に森川嘉一郎氏や伊藤剛氏の名が出てくるが、これはこの三者による持ち回り形式の連載だったからである。

●マンガ工学部の可能性

 このリレー連載も「大学教育とマンガ」という現在のテーマに入って、俄然佳境に入った感がある。森川嘉一郎氏はアカデミシャンであり、伊藤氏と私はそれぞれフリーのマンガ系言論人という立場から大学教育に関係することになった人間であるので、これはそれぞれの考察を深めるいい機会だと思う。

 まず私と大学との関係をざっと書いておこう。81年にフリーの編集者兼ライターとなった私は、主としてマンガ誌関係の仕事を約21年続けた後、編集・ライター業と平行して2003年から多摩美術大学で「漫画文化論」非常勤講師となった。04年から桑沢デザイン研究所で非常勤でマンガ史を教え、06年と07年には桑沢で森川・伊藤両氏とともに「キャラクターメディア研究ゼミ」講師を務めた。ゼミはまだ存続しているが、私だけ今年は抜けさせていただき、代わりに京都精華大学マンガ学部の客員教授として教壇に立つことになった。(註:2009年からは教授)

 多摩美の講義は今年で六年目になるが、漫画文化論と銘打っているものの、実際はマンガ史とアニメ史を教える内容である。両方をひとつの講義でやる理由は、特に日本においてはマンガとアニメーションが強い相互影響のもとで発展してきた事実があるからだ。

 一方、昨年と一昨年に桑沢で行ったゼミは、森川・伊藤氏と私がいわば「編集者」の立場となって、ゼミ生にマンガやアニメ・ゲームを創ってもらってCD付き雑誌を作り、コミケで販売までやるというものだった。これは三人ともに理論だけではなく実作教育に踏み込みたいという願望があり、ゼミ形式でそれを実現したものである(森川・伊藤氏のもとで現在も継続中)。

続きを読む "マンガと大学教育(1)「マンガ工学部」の可能性"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009/10/18

就職相談に不向きな先生

大学の先生などをやっていると、よく学生から就職相談を受けるのですが、たぶん俺くらい就職相談に向かない先生というのも多くはないでしょう。それというのも、俺は48歳で大学に「就職」するまで、正社員というものをやったことがなく、一度も「就職しよう」と考えたことがなかったからです。今回の大学への「就職」にしたところで、先方から舞い込んだお話に乗っただけですので、やはり就職したという意識が希薄です。

そもそも俺は20歳のときに学校を辞めて家出した人間ですので、最終学歴は高卒ですし、なんの資格もないし、これほど就職に向かない人間もいないというものです。よく、生きてこられたものだと思いますが、人間、死にさえしなければ生きていられるものです。

こういう話を、先日、特任教授の六田登先生としていましたところ、六田先生も「俺も大学行ってないし、就職もしてない」というので、仲間がいたと思わず嬉しくなってしまいました。嬉しがってどうするという感じですが。

六田先生は、高校卒業後に家を出られて、しばらくは日本各地をあてどもなく放浪したり、路上でアクセサリーを売って生活されていたそうです。いわゆるヒッピーだったんですね。時代も70年代初頭だそうですし、その時代では若者として当然とは言わないまでも、そんなに珍しくもないパターンだったといえるでしょう。

六田 「池袋の路上でアクセサリー売ったことがあるんだけど。そしたらすぐ近くで絵を売る連中が現れて、こちらの売り上げが落ちたことがあるんだよ」

続きを読む "就職相談に不向きな先生"

| | トラックバック (2)

2009/06/26

6月30日の精華大で山本順也氏トーク

先日、俺が毎週火曜日に精華大でやっている「マンガプロデュース概論」のゲストに元講談社編集者の丸山昭さんがこられましたが、30日は元小学館「少女コミック」の山本順也さんが俺とトークをします。

山本さんは、70年代に「少女コミック」編集者として、萩尾望都(『ポーの一族』)・竹宮惠子(『風と樹の詩』)・大島弓子(『ジョカへ…』)・吉田秋生(『カリフォルニア物語』)といった大物作家の代表作を手がけた名編集者。当日は竹宮惠子先生を始めとした「24年組」作家との仕事についてお話を伺います。

例によって、他学部・他学年の聴講を歓迎しますので、都合がつく人は3限(1:00~2:30)に本館302教室に来てください。

◎このエントリにコメント→★
◎掲示板トップへ→★

| | トラックバック (2)

2009/06/24

絵のないマンガ(2)

こちらも多摩美卒業生である増田拓海さんの作品『解答用紙は別紙』。これを「マンガ」と呼ぶべきかは議論が分かれるかもしれませんが、見開きを1コマと見るなら、コマを追うごとに時間の流れがあり、展開があって、俺は「マンガ」と見なしていいだろうと考えます。マンガ学会でこれを発表したところ、場内大爆笑に包まれました。世の中には、見る以前には想像もつかない種類の傑作があるということを思い知らされます。いずれ「マヴォ」にも掲載したい作品です。

05kaitouyuusihabessi01_2

続きを読む "絵のないマンガ(2)"

| | トラックバック (1)

2009/06/23

絵のないマンガ(1)

多摩美の卒業生である坪井慧さんの「放課後、雀荘で」。俺が言う「絵のないマンガ」の代表的作品であります。この作品のポイントは、雀卓を囲むキャラクターがすべてセリフ(文字)で表されており、しかも4人ともにフォントを違えていることです。手前の人物のセリフが裏返しになっていて、店の人に勘定を頼む「すみませーん」という文字のみ、文字が正しく表示されて“振り向いた”ことがわかるなど、非常に芸が細かい。この作品は以前「たけくまメモ」で紹介したことがありますが、再度大きい画像でアップします。

Tuboikei1

続きを読む "絵のないマンガ(1)"

| | トラックバック (0)

2009/06/22

学会で発表した俺のレジュメ

※昨日の第9回日本マンガ学会における私の基調講演は、以下に掲げるレジュメをもとにおこなった。厳密にこの通りの内容を話したわけではないが、大意は伝わるのではないかと思う。

■マンガ学会レジュメ「研究と実作をつなぐ」

●学生作品に見る「絵のないマンガ」

現在、大学におけるマンガ教育は大きく「実作指導」と「理論研究」に分かれている。両者は今のところ目的がまったく異なるので、ふたつを融合させることは容易ではない。だが、たとえば以下のような作品が大学からは生まれつつある。

多摩美で私は6年前から漫画史を教えているが、毎年課題でマンガを描かせて提出させている。課題は「時間の流れを扱った視覚表現」というおおざっぱなもので、通常のマンガでもよいが、時間の流れさえ扱っていればアニメや油絵、彫刻でもよいという自由度の高い課題に設定している。

Ozawa03_2 ←小沢郁恵「♪」(全14p)

最初の講義の年(2003年度)に提出してきた学生作品が小沢郁恵の「♪」である(図版左)。これはコマと音符、そして男女の台詞のフキダシのみという実験的な作品だったが、「最低限コマと文字があるなら、絵のないマンガが成立しうる」という事実は個人的に衝撃であった。

※小沢郁恵「♪」は「マヴォ」第二号に掲載予定

続きを読む "学会で発表した俺のレジュメ"

| | トラックバック (1)

2009/06/18

今度のマンガ学会

次の日曜(6月21日)に東京で日本マンガ学会が開かれます。実は俺、これまで学会に所属しておらず、会合には何度かお誘いを受けましたが、一度も行ったことがありませんでした。それが今年は京都精華大の教授になったということで、行くことになったばかりか壇上でしゃべることになり、慌てております。あと4日しかないではありませんか!

今年のマンガ学会のテーマは「大学教育とマンガ」とのことで、日頃考えていることを話そうと思います。俺の他に東京工芸大学の伊藤剛准教授、同じく東京工芸大学の秋田孝宏非常勤講師、司会を京都精華大学の吉村和真准教授が担当して基調講演とパネル・ディスカッションを行うのですが、たぶん俺の話だけ浮き上がりそうで、今から恐々としております。

それというのも、現在マンガ学科やマンガコース、アニメ学科を置いている大学は全部で40数校あるそうなんですけれども、「実作系」と「理論系」ではかなりの隔たりがあります。俺のいる精華大は実作系の牙城みたいになってますけれども、明治大学国際日本学部などは「日本文化」としてのマンガ・アニメの研究拠点を目指していて、「理論系」の牙城になる感じ。少なくとも、マンガ家やアニメーターを輩出する目的ではないでしょう。

続きを読む "今度のマンガ学会"

| | トラックバック (1)

2009/06/10

【業務連絡】丸山昭氏トーク報告&コミケ当選しました

Dsc_00202 昨日、京都精華大学の「マンガプロデュース概論」の講義にて、丸山昭氏をお呼びしてのトークが無事終了しました。(写真左)。

手塚治虫先生の思い出、トキワ荘のこと、石森(石ノ森)章太郎先生の「龍神沼」を担当したときの話、水野英子先生を見いだした時の話など、盛りだくさんの内容でした。正直90分ではとても時間が足りず、終わってからも取材に来た共同通信の記者さん相手に3時間、それから京都市内に移動して烏丸御池そばの中華料理屋の座敷で3時間と、マルさんしゃべり続けでした。

今年で79歳になるはずですが、ものすごくお元気で、ちょっとこちらが心配になるくらいでしたが、丸山さんとしては、「自分の残った人生は“語り部”に徹する」と決めておられるらしく、人前で話す機会があれば、体力の続く限り断らない方針でいるとのこと。

こちらとしても、1950年代のマンガ界の話や、トキワ荘関係者が高齢に達しておられるため、丸山さんのこの姿勢はまことにありがたい限りです。

続きを読む "【業務連絡】丸山昭氏トーク報告&コミケ当選しました"

| | トラックバック (0)

2009/06/08

精華大生の皆さんへ。丸山昭氏とのトーク講義のお知らせ

京都精華大学の在校生で、「たけくまメモ」をお読みの人に業務連絡です。

今週の火曜日、9日の3限目に、本館302教室で竹熊の「マンガプロデュース概論」の講義があります。今週のこの日は、元講談社編集者の丸山昭氏をゲストにお呼びして、90分間、竹熊の質問をもとにお話を伺うことになりました。

丸山昭さんは、1930年生まれの79歳。1958年(昭和28年)に講談社に入社、翌29年に「少女クラブ」に配属されて手塚治虫『リボンの騎士』の担当編集者となり、そこからトキワ荘に出入りして寺田ヒロオ、藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫、長谷邦夫、水野英子らトキワ荘作家たちの多くのマンガ作品に関わりました。

トキワ荘について書かれた回想録には必ず「マルさん」の愛称で登場する伝説の編集者です。すでに80歳近いご高齢ですが、大変お元気で、今回のオファーにも快く応じてくださいました。

当日は以下の質問項目で進行する予定です。

続きを読む "精華大生の皆さんへ。丸山昭氏とのトーク講義のお知らせ"

| | トラックバック (0)

2009/06/06

「担当がつきました」とはどういうことか

多摩美や精華大で日々、マンガ家志望の学生と接していますと、中には新人賞に応募して、佳作や奨励賞に入賞した人がいるわけです。おめでとうございます。出版社主催の新人賞に入選すると、多くは担当編集者がつくわけですね。これは佳作や奨励賞のような次点の賞であっても、同様ではないかと思います。

それで、奨励賞を受賞して、俺に「先生、僕に○○社の担当がついたんですよ」と嬉しそうに報告してくる人もいます。その顔は、嬉しそうなだけでなく、誇らしげだったりもするんですが、そういう学生に会うたびに「ちょっと待て」と俺は思うわけです。

「ちょっと待って。その担当さんと、作品を掲載する話をしているの?」

と俺が尋ねると、

「いえ、ネームを持って行くと、見てくれます。雑誌に載る話は、まだありません」

と、だいたい同じ返事が返ってきます。

先日、精華大で学部長の竹宮惠子先生と話したときも、そういう学生の話題になりました。竹宮先生の教え子にも、担当がついた学生が何人もいるそうです。しかし先生は、ため息まじりにこう言いました。

続きを読む "「担当がつきました」とはどういうことか"

| | トラックバック (5)

2009/05/15

教授をはじめて一ヶ月ちょい

昨日予告した「京都ならではのアレ(仮題)」ですが、現在準備中ですのでもうしばらくお待ちください。

今は神奈川県の実家にいます。昨日夜遅く帰宅したんですが、本日は午後から八王子の多摩美で講義をして、それから都心で仕事の打ち合わせがあります。GWはメビウスで潰れてしまいましたし、忙しいと頭がクラクラして、脳梗塞の後遺症がぶり返すのではないかという勢いです(まだ大丈夫です)。

「大学の正規教員になったら忙しいよ」とは聞いておりましたが、こういうものは実際になってみないとわからないものでして、それを今、実感している最中です。

神奈川の自宅と京都の往復生活も大変ではあるのですが、やはり多摩美の講義に加えて新たに準備が必要な講義がふたつも増えてしまい、週刊連載が二本同時に増えたようなもので、これが一番大変ですね。

週刊連載というのは、少し大げさですけれども。実際には、そのうち一本は実作系の講座なので、最初に課題を与えて「前期の最後までに提出して」とやっておけば、あとは学生の進行具合のチェックと、制作上の相談に乗るだけですから、まだいいんですが。

続きを読む "教授をはじめて一ヶ月ちょい"

| | トラックバック (2)

2009/05/11

メビウス in 明治大学

1162414639_87 ←9日、明治大学シンポジウムにて(撮影・森川嘉一郎)

例によって詳細は6月末発売の「ユリイカ」に譲りますが、メビウスイベントのグランドフィナーレを飾る明治大学主催のシンポジウムに行ってきました。

この日の俺は一観客としての立場で客席からの聴講。この日は病院で定期検査の日でしたので、午前中に神奈川県綾瀬市の病院で検査を受けて、お茶の水に駆けつけた時にはシンポジウムは始まっていました。

それでも全体の三分の二くらいは見られたと思います。明大のホールがやけに立派で、これには負けたと思いました。俺が聞き始めたのは夏目房之介さんの話の途中からでしたが、さすがは夏目さんで、場慣れしております。得意の描線論でメビウスについて語っていて、論旨がまとまっており、お客さんにとっても「得した感」が高いでしょう。

6日の村田蓮爾さんの時もそうでしたが、参加者の手元にスケッチブックが用意されていました。メビウス、夏目さん、そして浦沢直樹さんもそれぞれ絵を描きながらトークを進めていて、マンガ家同士ならではの楽しいイベントになりました。

続きを読む "メビウス in 明治大学"

| | トラックバック (5)

2009/05/09

メビウス in 精華大学

Img_00761 ということで、メビウス氏の精華大学でのシンポジウムをレポートしようと思ったんですが、考えてみれば当日の内容はすべて6月末発売の「ユリイカ」に掲載される予定ですので、中身についてはそちらに譲ればよいと思いました。そこでここでは、当日のシンポの内容以外の「こぼれ話」を書くことにします。最初の写真は5月6日京都国際マンガミュージアムで行われたメビウス×村田蓮爾トークイベントの様子。中央の白髪の男性がメビウス氏、隣にいる帽子をかぶった男性が村田蓮爾氏。

Img_00791_2 ←いきなり日本マンガ風美少女を描いたメビウスさん。出血大サービス。

二人でスケッチブックを手にめいめい絵を描きながらトークをするという、絵描き同士ならではの会となりましたが、途中いきなりメビウスさんが村田蓮爾風(?)美少女を即興で描き出すひとコマもありました。

Img_00881

←6日夜、京都国際マンガミュージアムでの打ち上げパーティにて。

打ち上げには京都市長も出席する豪華なパーティに。メビウス氏のお隣の女性は奥様のジェシカ イザベルさん(※)。一番左が通訳をしたフランスのマンガ出版社・トンカム社員の鵜野氏。メビウス氏によると、現在フランスは大変な日本マンガのブームで、出版されているマンガの4割が日本マンガだとか。

※奥様の名前はイザベルさんでした。ジェシカさんというのは通訳してくれた人の名前です。大変失礼しました。

続きを読む "メビウス in 精華大学"

| | トラックバック (3)

2009/04/16

メビウスが描いたアトムが…

Mebius2 ←(C)Moebius Production

精華大学の公式サイトに「メビウス展」の告知がアップされましたのでお知らせします(これ書いている現在、京都国際マンガミュージアムのサイトでの告知はまだみたいです)。

http://www.kyoto-seika.ac.jp/index.php
↑京都精華大学top

http://info.kyoto-seika.ac.jp/event/2009/04/post-3.html
↑メビウス展告知ページ

精華大学の告知ページには、メビウス本人が描きおろしてくれた「メビウス展」の公式ポスターがアップされていますが、なんと! 京都国際マンガミュージアムの上空にメビウスのキャラクターの翼竜と鉄腕アトムが飛んでいます(ジェッターマルスではありません)。ちなみに地上に描かれている黄色いのはマンガミュージアムが誇る公式ゆるキャラクターの「マミュー」くんです。

http://www.kyotomm.jp/HP/mamyu.php
↑マミュー

続きを読む "メビウスが描いたアトムが…"

| | トラックバック (1)

2009/04/01

本日、教授就任式

本日は京都精華大学の入学式でしたが、その前に教職員の就任式があり、マンガ学部教授の辞令が交付されましたので、ご報告いたします。正教授に就任することは以前から決まっていたのですが、辞令交付まではそれ以前に一度内定していた特任教授なのか、正教授なのかはわざとぼかして書いていました。正式には教授ということですので、よろしくお願いします。

この歳になって、俺みたいなのが教授職で正規雇用されるというのも驚きですが、なったからには精一杯頑張る所存です。と書こうと思ったら、なんと昔から仲間だった伊藤剛氏も東京工芸大准教授になったことを自分のブログで書いていました。だいたいどこの大学も入学式とセットで4月1日にやることになってるんだな。エイプリル・フールと間違われないかしら。

http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20090401/1238547642
↑伊藤剛「東京工芸大学芸術学部マンガ学科准教授に就任いたしました。」

俺が所属するのはプロデュース学科ですが、これは今のところ精華大にしかない学科になります。一応「編集者養成」の学科なんですけども、実際には編集者にとどまらない、もう少し広い範囲までカバーする学科みたいです。

続きを読む "本日、教授就任式"

| | トラックバック (1)

2009/02/21

リアル「バクマン」な話

そういえば確定申告の受付ってもう始まっているんですよね。

しまった。何にもやってない。昔、一瞬青色申告やろうと思ったことがあったんですが、結局面倒くさいからずっと白色申告です。それも文筆家は5割までは必要経費が認められるってんで、アバウトに5割経費で。一応領収証も保存しているんですけどね。面倒臭いから整理もしないで段ボールにぶち込んでます。

それでも、今のところ税務署から何も言って来たことがないので、まあ、これでいいのかなあと。

今年は4月から大学の給料が入りますし、厚生年金とかにも入るので、この俺が生まれて初めてのサラリー生活ですよ。なんとまあ。しかしこの不景気ですから、将来どうなるかはわかりませんけどね。

精華大学では多摩美とは別の講義も持ちますんで、今、それのシラバスをヒーヒー言いながら作っております。通年の講義なので、なんとか30コマ分作らなければなりません。このあたりの話は、まだ詳しく書けませんが、4月になったらいろいろ書きたいと思っています。

続きを読む "リアル「バクマン」な話"

| | トラックバック (1)

2009/01/12

【業務連絡】「ロボットマンガ」を提出した1年の女子学生へ

本年度の多摩美「漫画文化論」の課題で、フルカラーでメカメカしいロボットマンガを提出してきた油画科1年の女子学生の人、9日にお会いしたときに、うっかり名前と連絡先を聞き損ないました。よろしかったら竹熊までメールで教えてください。アドレスは以下の通りです。

takekuma@mbj.nifty.com

俺の感想は先日話した通りで、人間が一人も登場せず、破壊されたパトレイバーっぽいロボット同士が哲学的な会話をしているという内容自体はいいんですが、絵がかなりラフだったのでいささか読みにくく、またロボットでもいいですから「主役」を立ててそれ中心の展開にしたほうが、よりマンガとしてわかりやすい作品になると思いました。

ただ、9日にあなたが言った「ロボットしか描きたくない。ロボットにしか興味がない」という発言が気になっています。こういう言葉を女性の口から聞いたのは個人的に初めてですので、あなたの今後の創作活動には興味があります。

コメント欄にはレスしなくて結構です。大学から調べようにも、今年度の講義は終わってしまいましたので、春まで俺は行かれません。連絡お待ちしております。

◎このエントリにコメント→★
◎掲示板トップへ→★

| | トラックバック (1)

2008/12/27

【告知】桑沢ゼミ同人誌紹介

Iconopop3_cov 『マヴォ』の姉妹雑誌である、桑沢デザイン研究所キャラクターメディア研究ゼミ(キャラメ研)の同人誌『ICONOPOP(イコノポップ)』が完成したようです。こちらも、冬コミに参加します。154ページで頒価は500円だそうです。以下のサイトで、作品の一部を見ることができます。こちらも、なかなかレベルが高そうですよ。

▼「ICONOPOP vol.3」告知ページ
http://homepage2.nifty.com/akihabara/cmr/books.htm
↑2008年度告知ページ

http://www3.to/kuwasawa/
↑サイトTOP

●桑沢キャラクターメディア研究・冬コミ75 ブースアドレス

30日 西ホール と-14d

以前も書きましたが、俺も昨年度まではこのゼミに講師として参加していました。現在は、森川嘉一郎・伊藤剛の二頭体制で学生指導に当たっています。

続きを読む "【告知】桑沢ゼミ同人誌紹介"

| | トラックバック (3)

2008/12/19

マンガとアニメーションの間に(6)

■京都精華大学連続講義レジュメ

第六回「マンガとアニメが融合する日」

講師 竹熊健太郎

●「いつの日にか、カンザスの少女が、父親のビデオで「風と共に去りぬ」を撮る日が来るだろう」

 この言葉は70年代後半、大作戦争映画「地獄の黙示録」制作中だったフランシス・コッポラがインタビュー中に述べた発言である。ふつう映画制作には莫大な制作費がかかるが、コッポラのような作家性が強い映画監督にとって、「自分の作品」を作るために数億から数十億におよぶ制作資金をどうやって調達するかが悩みの種であった。

「地獄の黙示録」はコッポラ畢生の大作であり、50億円に達したといわれる制作費を全額「自己調達」した「史上最高額のインディペンデント映画」としても話題を呼んだ。その制作中に受けたインタビューで映画制作の未来について訊かれ、つい「いずれ田舎町の少女であっても、自宅ガレージで大作映画が作れる時代がくる」という自分の「願望」を漏らしたものだ。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(6)"

| | トラックバック (2)

2008/12/18

マンガとアニメーションの間に(5-2)

第五回「反“物語”作家としての大友克洋」(2)

●『NOTHING WILL BE AS IT WAS』に見る「反物語」

 70年代大友の特徴がもっともよく現れている作品として、'77年の『NOTHING WILL BE AS IT WAS』をあげたい。この作品は、自室で口論になった友人を思わず殺してしまった主人公が、死体の処理に困って、ひたすら死体をバラバラにして「処理する」過程を描いた作品である。

 この作品では、殺人事件を扱った犯罪ドラマがまず描くであろう「殺人の動機」や「殺人に至る過程」が一切描かれない。冒頭のコマからして自室の畳の上にゴロリと転がった死体のアップであり、その後の処分過程を綿密に、しかし淡々と描くのみである。さらには、犯罪の結果もここには描かれない。作品の中で、アパートの住民が主人公の挙動に不審なものを感じることが描かれるのみで、その後の犯罪の発覚や、逮捕の場面などもまったく触れられないのである。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(5-2)"

| | トラックバック (2)

マンガとアニメーションの間に(5-1)

■京都精華大学連続講義レジュメ

第五回「反“物語”作家としての大友克洋」(1)

講師 竹熊健太郎

●70年代から80年代にかけてのマンガ状況

 大友克洋は70年代前半にデビューした作家である。最初に、彼がデビューした70年代から80年代初頭にかけてのマンガ状況を整理してみる。この時期はマンガ界にとっては、空前絶後の大変動期であった。簡単にまとめてみると、

 ▲青年誌(ビッグコミック、漫画アクション、ヤングコミック等)の台頭により劇画状況が爛熟する。

 ▲オイルショックによる経済不況に加えて、青年誌に年長読者をとられ、「少年チャンピオン」「少年ジャンプ」などの新興少年誌に年少読者を奪われて、「少年サンデー」「少年マガジン」が大幅に部数を落とす。
  →マンガ雑誌の世代交代が始まる。

 ▲男性読者も巻き込んだ一大少女マンガブームが起こる。
  →その中心にいたのが竹宮恵子先生ら「24年組」と呼ばれた女性作家たち。

 ▲'75年に第一回コミックマーケット開催。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(5-1)"

| | トラックバック (5)

2008/12/16

18日と19日に精華大で講義します

今週の18日(木)と19日(金)に、京都精華大学の連続講義「マンガとアニメーションの間に」の第五回目と六回目を行います。

今年の俺の特別講義は全六回の予定ですので、これが最後の授業になります。例によって、マンガ学科以外の学生、学外の一般の方にも公開されてますので、興味のある人はぜひ聴講に来てください。詳しくは精華大のサイトをご覧ください。

◎12月18日(木)第5回 「“反・物語作家”としての大友克洋」 18:00~19:30

手塚治虫と同じく、マンガ家としての成功を背景にアニメーションに進出した大友克洋。だが90年代半ば以降の大友は、マンガ家としての仕事を休止してしまった感がある。手塚の本質が物語作家であるとするなら、大友の本質は「情景の描写」にある。時間芸術であり、しかしアニメと異なり直接的に「時間」が扱えないマンガは、必然的に「物語」を志向する。だが大友克洋は、出来事の一部を「シークエンス」として描写することに徹し、起承転結という物語の構成要素を使わない「反・物語作家」である。また大友は、マンガ・アニメにとって一番重要な要素とされている「キャラクター」に興味を示さない。彼がマンガ・アニメにもたらしたものは、「風景(背景)を主役にする」という、驚くべき世界であった。

続きを読む "18日と19日に精華大で講義します"

| | トラックバック (1)

2008/11/01

マンガとアニメーションの間に(4-2)

第四回「マンガ版『ナウシカ』はなぜ読みづらいのか?」(2)

【F】マンガ版『風の谷のナウシカ』の“読みづらさ”

●現在マンガ版『風の谷のナウシカ』は、ストーリーマンガ史上の傑作として評価が定着している。テーマと設定は、アメリカの作家フランク・ハーバートによるエコロジカルSFの傑作『デューン』に強く影響されている。『デューン』は遠い異星の文化・歴史から地理・生態系に至るまで、架空の世界構造が緻密に設定されていて読者を驚かせたが、宮崎の『ナウシカ』もまた、ハーバートに負けない高度な世界構築を「マンガ」として徹底したビジュアルで展開してみせた。

  →物語が進むにつれて宮崎の思想や政治意識、さらには人類への絶望と人間性への肯定=希望という相反する思弁的テーマに正面から取り組み、宮崎の作家としての「核」が描かれた力作となっていった。当初のエコロジー思想に基づく原始共産主義的・理想主義的テーマは、12年の連載の中で、人類文明に対して絶望しつつこれを肯定するという、思想のアクロバットというべき結末に至った。ストーリーマンガとしては手塚の『火の鳥』に劣らぬ雄大な構想を持った作品である。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(4-2)"

| | トラックバック (1)

2008/10/31

マンガとアニメーションの間に(4-1)

■京都精華大学連続講義レジュメ

第四回「マンガ版『ナウシカ』はなぜ読みづらいのか?」(1)

講師 竹熊健太郎

【A】手塚治虫と宮崎駿の複雑な関係

●手塚の死去(1989年)に際して、様々な雑誌で追悼特集が組まれ、多くの識者が追悼文を寄せていたが、ひとり宮崎駿は、手塚のマンガ家としての功績を十分に認めながらもアニメ分野における手塚の活動を痛烈に批判して世間を唖然とさせた。

  →「だけどアニメーションに関しては───これだけはぼくが言う権利と幾ばくかの義務があると思うのでいいますが───これまで手塚さんが喋ってきたこととか主張してきたことというのは、みんな間違いです」(手塚治虫に「神の手」をみた時、ぼくは彼と訣別した」宮崎駿 comicbox 1989.5月号)

  →宮崎は、手塚がアニメ作家としては「素人芸」であり「下手の横好き」であって、にもかかわらずマンガ家としての名声をバックにアニメ会社を作ってテレビアニメを始めたこと、それによって日本のアニメ制作環境が大きくねじ曲げられたことを辛辣に批判したのだ。

  →しかし一方で宮崎は、自分もかつては手塚に憧れてマンガ家を目指したことを告白している。宮崎の手塚に対する「愛憎」には根深いものがある。

  →一方の手塚は、あれほど他作家にライバル心をむき出しにする性格であったにもかかわらず、宮崎について公には不思議と何も語っていない。 

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(4-1)"

| | トラックバック (0)

2008/10/28

マンガとアニメーションの間に(3-2)

■第三回「手塚治虫の引き裂かれた夢(2)」

【C】手塚マンガと「ディズニー以前」

●手塚のアニメーションからの影響となると、ディズニーについての話が(本人のコメントも含めて)ほとんどを占める。しかしディズニー以前(1910年代)からアニメで活躍していたフライシャー兄弟の影響も見逃すことはできない。

→たとえば手塚マンガに特徴的に見られる表現に、間白(コマとコマの間)にキャラクターがしがみついたり、間白をキャラが突き破るような「メタ表現」が」しばしば出てくる。こうした「作品構造を逆手にとったメタ表現」は、フライシャー作品に非常に多く見られる表現だ。

Mahaku02_3←夏目房之介が手塚の「冒険狂時代』を例に挙げ、コマのメタ形式ギャグを解説した「間白という主張する無」より(「マンガの読み方」所収)。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(3-2)"

| | トラックバック (2)

マンガとアニメーションの間に(3-1)

※10月29日と30日に京都精華大学で「マンガとアニメーションの間に」と題した講義レジュメである。29日に手塚治虫を、30日に宮崎駿を講義するが、まずは手塚治虫のレジュメをアップする。

■京都精華大学連続講義レジュメ

第三回「手塚治虫の引き裂かれた夢」(1)

講師 竹熊健太郎

【A】手塚の「映画的手法」について

●初期手塚マンガを「映画のようなマンガだ」とする発言は、藤子不二雄Aをはじめ、『新宝島』(1947)などの初期作品をリアルタイムで読んだ世代によってしばしば語られている。

  →初期手塚作品がどのように「映画的」なのかについては、諸説があり、多くの論者によってさまざまな角度から語られている。

  →手塚作品が戦後の読者から「映画のようなマンガ」として受け止められたこと自体はおそらく間違いないが、フィルムによって構成される映画と紙の上に描かれるマンガとの間には、時間の扱い方において決定的な違いがあり、単純に映画と対比して語ってよいかは注意深い検討が必要。

  →直接的に時間を扱う映画と、紙のうえで擬似的に時間を扱うマンガの表現としての違いについて。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(3-1)"

| | トラックバック (2)

2008/08/20

27年ぶりコミケにサークル参加(希望)

本日(19日)、コミケの参加申し込み用紙を郵送しました。コミケはちょくちょく行っていたんですが、自分のサークルで参加を申し込むのは1981年以来ですから、恐ろしいことに27年ぶりということになります!

昨年・一昨年と桑沢ゼミで作った同人誌で参加していますが、桑沢は俺のサークルというわけでもないし、申し込みしたのは学生で、手続きのことは俺は何もやってませんでした。今年俺は桑沢のゼミを降ろさせてもらったので、今回の同人誌は単独でサークル作って参加ということになります。描いていただく人選も多摩美の女子大生を中心に一応決まっているんですが、もう少し内容が固まるまで内緒にしてください。

ひとつだけ書いておくと、以前「たけくまメモ」で紹介した文乃綺(ふみの・あや)さんの「城」も載ります。ただし彼女としてはいくつか描き直したい箇所があるそうなので、今度のは最新完全版になります。それからもちろん新作も描いてもらってます。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_b62c.html
↑【多摩美】文乃綺『城』完全版

文乃さんをはじめ、過去に俺の講座の受講生の中から個人的に引っかかった作者を選んだら、なぜか女性ばかりになってしまいました。純粋に作品本位で選んだらそうなってしまっただけなので、他意はありません。多摩美生ばかりでなく、武蔵美の女学生さんや、プロ・セミプロの女性作家さんも三人ほど参加します。詳しいことは後日、また。

続きを読む "27年ぶりコミケにサークル参加(希望)"

| | トラックバック (5)

2008/06/20

京都から帰ってきました

18日と19日、二日間に及んだ京都精華大学での連続講義を終え、さっき帰宅しました。精華大では、昨日は特任講師の大西祥平さん、今日は特任教授の高取英さんと終わってからメシを食いました。昨日は神戸芸術工科大学でフラッシュアニメを教えているルンパロさんも聴講に来てくださって、マンガ界とアニメ界の現状について話に花が咲きました。

それにしても、精華大マンガ学部の教員は自分の知り合いばかりで唖然とします。他大学の類似講座にも知人率が高いので驚きます。ほんの数年前まで、オタクサブカル界隈で蠢いていた人々が、こぞって大学の先生になるなんて事態は想像もできませんでしたよ。まあ、どの大学もオタクやサブカルに縋りたくなるほど、世の少子化が進んでいるということなのかもしれませんが…。俺みたいな人間にとっては都合がいいわけですけれども。

なんというか、商売としてのマンガ界もアニメ界も閉塞しておるわけですけど、閉塞しているのは業界だけで、目を同人誌即売会やネット界に向けるなら、新しい才能も作品も生まれて来ているわけです。才能はそこに存在するのに、それに目配せをして、うまく才能を掬い上げるシステムができていない、あるいは、システムはあってもガタが来ているだけなのだと俺は考えるわけです。

続きを読む "京都から帰ってきました"

| | トラックバック (3)

2008/06/18

マンガとアニメーションの間に(2-3)

■京都精華大学特別講義テキスト

●マンガとアニメーションの間に(2-3)
 第二回「ウォルト・ディズニーをどうとらえるべきか」(3)

●講師・竹熊健太郎

●実写的演出

 リアリズムは演出にも及んでいる。もっとも顕著な例は作品の序盤、女王の命令で猟師が白雪姫を殺そうとする場面である。美しい風景の中で、姫が小鳥と会話している。その背後から迫る猟師。恐ろしい形相がアップになる。ついでナイフを握る手のアップ。その手がぶるぶると震えて、ナイフが落ちる。猟師の心の葛藤が観客に伝わる見事なモンタージュである。あまりにも純真無垢なヒロインを前にして、彼は殺意を失い、その足下にひざまずく。この演出は極めて実写的で、アニメでは冒険であったが、成功している。

 つづく「森の中の逃走」は作品全体でもっとも見事なシーンだ。ただひとり暗い森を逃げる白雪姫。彼女は恐怖でわれを失い、周囲のあらゆるものが怪物に見える。実際、それはただの木や草なのであり、よく見れば背景はそのように描かれている。しかし完全な孤独に陥った白雪姫にとっては、すべてが恐怖の対象なのである。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(2-3)"

| | トラックバック (0)

マンガとアニメーションの間に(2-2)

■京都精華大学特別講義テキスト

●マンガとアニメーションの間に(2-2)
 第二回「ウォルト・ディズニーをどうとらえるべきか」(2)

●講師・竹熊健太郎

●キャラクターとは何か

 キャラクターとは字義通りに解釈するなら「人物の性格」の意であるが、アニメーションやマンガの世界でこの言葉が使われる場合、背景から独立して行動する「主体」そのものを指す。この場合の「主体」は人間とは限らない。動物や植物、場合によっては機械や岩石など無機物であっても、意志を持ち活動するのがマンガ・アニメのキャラクターであって、それが描線で表現された被創造物である以上、作品内においては人間と等価の存在である。

 もちろん外見が動物や無機物であっても、それが「キャラクター」として認識されるからには、結局それは人間の内面や行動がカリカチュア(戯画)として象徴的に描写された姿にほかならない。その意味ではどのような姿をとろうともそれは人間そのものだといえる。ただカリカチュアであるから、写実とはおのずと表現の目的が異なる。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(2-2)"

| | トラックバック (2)

マンガとアニメーションの間に(2-1)

■京都精華大学特別講義テキスト

●マンガとアニメーションの間に(2-1)
 第二回「ウォルト・ディズニーをどうとらえるべきか」(1)

●講師・竹熊健太郎

●ウォルト・ディズニーの登場

 ウォルター・イライアス・ディズニー(Walter Elias Disney,1901-1966)は、20世紀初頭のシカゴに生まれた。少年時代の彼は、コミック好きで内向的な性格だった。'17年、彼は高校に入学するが、同時に夜学で美術学校にも通い絵画と写真の基礎を学んだ。ときは第一次大戦のさなかであり、温厚だった彼も愛国心をかきたてられて、'18年に赤十字部隊に志願する。もっともフランスに派遣されたときには戦争は終わっていた。

 帰国後、ウォルトはカンザス・シティのグレイ広告社につとめ、ここでグラフィックデザイナー(のちアニメーター)のアブ・アイワークスと出会う。同い年の二人は意気投合し、ともにカンザスシティ・フィルム広告社に移籍。二人はここでアニメーションを学び、'22年に独立してラフ・オー・グラム社を設立した。

 初めて作った会社で、ウォルトは教育目的のアニメーションや、『ラフ・オー・グラム・シリーズ』というおとぎ話のアニメを手がけた。『長靴をはいた猫』(Puss in Boots,1922)はラフ・オー・グラム・シリーズの一編である。ウォルトは演出家兼アニメーターとして、アイワークスとともにこれを制作した。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(2-1)"

| | トラックバック (1)

2008/06/17

マンガとアニメーションの間に(1-2)

■京都精華大学特別講義テキスト

●マンガとアニメーションの間に(1-2)
 第一回「ウィンザー・マッケイの人と業績」(2)

●講師・竹熊健太郎

●アニメーション作家としてのマッケイ

 マッケイは舞台芸人でもあり、舞台の出し物としてアニメを始めたことは有名である。彼のアニメ第一作『リトル・ニモ』(1911)は、自作マンガのキャラクターをただ動かしただけの実験作だが、シンプルな線がうごめきながら形となり、それがメタモルフォーゼを繰り返しつつ優雅に動き回るさまには、アニメの魅力の全てが実現されているといっても過言ではない。彼はこの2分強の作品のために、四千枚の原画を描いたという。

 この試みは簡単なストーリーを持つ『蚊はいかにして行動するか』(1912)でさらに追求され、1914年の話題作『恐竜ガーティ』でひとつの頂点に達した。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(1-2)"

| | トラックバック (0)

マンガとアニメーションの間に(1-1)

■京都精華大学特別講義テキスト

●マンガとアニメーションの間に(1-1)
 第一回「ウィンザー・マッケイの人と業績」(1)

●講師・竹熊健太郎

●視覚による音楽……時間芸術とは何か

 芸術は「空間芸術」「時間芸術」のふたつに大別される。
 空間芸術とは、絵画・彫刻等、静止した空間における形態や色彩を扱う表現である。時間芸術とは、これに加えて直接的・間接的に「時間の流れ」を扱うものをいう。

「空間芸術」の代表が絵画だとすれば、「時間芸術」の代表は音楽である。時間は、音楽にとって表現そのものを規定する根本要素であるが、これは聴覚そのものがもつ特質に依っている。「静止した音」は原理的に存在しえない。どのような音楽でも、それが「音」として認識されるからには、そこには必ず「時間の流れ」が存在しているのである。

 これに対して絵画や彫刻などは、基本的には静止物を扱うもので、時間とは本来無縁の表現である。あえて視覚的手法で時間を扱おうとする場合、そこには必ず「形態ないしは位置の変化(動き)」がともなうことになる。その場合、一枚の絵・ひとつの立体物でそうした変化を表すことは困難なのであって、最低でも「変化する以前・以後」のふたつのビジュアルが要求されることになる。立体物の場合、機械的な動力装置を仕込むことでこれが可能になる場合がある。

続きを読む "マンガとアニメーションの間に(1-1)"

| | トラックバック (0)

18・19日の京都精華大学講義

「マンガ界崩壊を止めるには」の連載途中ですが、最終回に手間取っています。実は今週水曜(18日)と木曜(19日)に京都精華大学の特別講義が近づいてきました。これの準備がありますので、「マンガ界崩壊…」の続きは週末にアップすることにします。

代わりに、本日中に18日19日の連続講義の使用テキストをアップします。これは多摩美術大学で毎回学生に配っているテキストとほぼ同じものですが(マッケイについては、たけくまメモにかつて発表したエントリが元になっています)、今回の集中講義用に全体から抜粋して再構成したものです。当日は、このテキストをもとに映像をまじえて講義を進めていきたいと思っています。

講義は精華大生のために行うものですが、それをここにアップする理由は、もちろん「たけくまメモ」の読者サービスの一環であるとともに、読者の批評を受けることで、より完成度の高い内容にヴァージョンアップしていくためです。疑問点・ツッコミ等ありましたら、なにとぞメールかコメント掲示板にてお願いしたいと思います。

なおこれのオリジナル・テキストは、現在400字詰め換算で430枚ほどになっています。しかし、まだ圧倒的に未完成なので、全体を出版することは当面はありません。当方の構想では、最終的に1500枚くらいのものになると思います。あと10年くらいかかるんじゃないでしょうか。

◎このエントリへコメント→★
◎掲示板トップへ→★

| | トラックバック (0)